食通が教える、大阪の本当にウマい店[ローカルフード8選]

  • 写真:東谷幸一、内藤貞保、エレファント・タカ、齋藤誠一
  • 文:植田沙羅、藤井亮一、脇本暁子
Share:

出汁文化が根底にある粉もん、商人たちが西洋の食文化を柔軟に取り入れた洋食、コリアンタウンから浸透していった焼き肉など、大阪の地域に根ざした食はバラエティ豊か。この地の食を味わい尽くすべく、大阪にゆかりがある6人の食通にお薦めの店を教えてもらった。

大阪がいま、大きく動き出している。そんな大阪の街をより深く知るために、最新の旬なエリアから、名建築やローカルフードまで、地元をよく知る編集者やクリエイターに案内をしてもらった。第2特集では開催直前となった「大阪・関西万博」の見どころを紹介。ダイナミックに変化を続ける“いま”だからこそ出会える大阪の魅力を発見しよう。

『大阪 再発見』
Pen 2025年4月号 ¥880(税込)
▼購入はこちら
Amazon 楽天 セブンネット タワーレコード HMV

鉄板の上で変化を楽しむ、甘く濃厚なお好み焼き

FB-8.jpg
FB-7.jpg
左:「お好み焼き(豚)」¥869。濃厚で味わい深いマヨネーズは自家製。 右:自家製厚揚げや季節のフルーツの白和えなど、10品程度の一品料理も用意。店主イチオシのドリンクメニューは、フルーティな味わいが人気の福岡の日本酒「若波」。

道頓堀の老舗お好み焼き屋で修業をした店主が切り盛りする、席数6の繁盛店。ビールや日本酒のほか、赤・白・スパークリングの30種類ほどのワインも取り揃えている。上から押さえつけずにかたちを整えたお好み焼きは、中央が膨らんで厚みがあるため、熱の通り方が場所によって異なっている。食べる時には周囲からコテで少しずつ切りわければ、中央部分のキャベツが蒸気でさらに加熱されることで甘みが増していくという。時間経過とともに鉄板の上で変化していく味や食感を楽しんでほしい。

(案内人:醸造家・大下香緒里)

お好み焼きしみづ[ 肥後橋 ]
住所:大阪府大阪市西区土佐堀1-5-20 医交社ビル1F
TEL:06-7220-6478
営業時間:16時〜22時(月、火、木) 12時〜13時30分、17時〜22時(金) 12時〜14時、15時〜22時(土、日、祝)
定休日:水
Instagram:@okonomiyaki_shimizu

鯨と猪の専門店で、海の幸と山の幸を堪能 

FB-9.jpg
FB-10.jpg
上:「鯨鹿の子と本皮のハリしゃぶ鍋」1人前¥3,500 下:手前「猪焼肉5種盛り合わせ 2人盛り」¥4,890、奥「鯨赤身刺し」¥1,210。鯨の刺し身はやわらかく、あっさりしていて食べやすい。

給食で鯨の竜田揚げを好んで食べていたという和歌山出身の店主が、猪焼き肉と鯨料理をメインにつくった店。猪肉は罠猟でつかまえ、処理を適切に行い熟成したもの。誰でも簡単に焼けるように薄めにスライスした肉は、赤身の旨味と脂の濃厚な甘みを感じられる。鯨はイワシクジラとニタリクジラの2種類を厳選。大阪発祥のはりはり鍋を彷彿させる、水菜で巻く「ハリしゃぶ鍋」では、希少部位の鹿の子(あご肉)を楽しめる。鹿の子状に入った脂がバランスよく、弾力のある食感が特徴だ。

(案内人:バーテンダー・池上祐子)

猪焼肉と鯨専門店 猪の居[ 福島 ]
住所:大阪府大阪市福島区鷺洲2-9-15
TEL:06-6743-4492
営業時間:18時〜深夜3時(月〜土) 18時〜24時(日、祝)
不定休
https://shishi-noi.com

大人のための街の洋食店は、自家製にこだわる本格派

FB-12.jpg
FB-11.jpg
左:「前菜盛り合わせ」は旬のメニューをおまかせで7品味わえる。1人前¥1,600。写真は2人前。 右:「フィレカツサンド」は黒毛和牛の雌牛のみを使い、レアに仕上げた。ジューシーな肉が甘辛いソースと合う。¥4,000 

「お腹の空いた方も、お酒を飲みたい方も、たくさんのオードブルと洋食でおもてなし」をコンセプトに、1999年に創業した「洋食Katsui」。2号店としてオープンした御堂筋ロッヂはモダンでありながら落ち着く佇まいだ。アラカルトでオーダーできる料理の数々は、マヨネーズやドレッシングにいたるまですべてが手づくり。現在は本店が奈良に移転した縁で、奈良の契約農家直送の採れたて野菜をふんだんに使ったメニューも味わえる。

(案内人:人形浄瑠璃文楽座 文楽人形遣い・吉田玉男)

洋食勝井 御堂筋ロッヂ[ 心斎橋 ]
住所:大阪府大阪市中央区南船場4-3-11 大阪豊田ビルB1 
TEL:06-6251-5064 
営業時間:11時30分〜15時、17時〜22時(日、祝は〜21時) 
定休日:月、火(祝日の場合は営業)

立ち飲みで味わう、絶品の和牛焼き肉

FB-14.jpg
FB-13.jpg
左:紀州備長炭を使った炭火で、じっくりと肉を焼き上げる。カウンター越しに弾む会話も楽しい。 右:牛タンの炭火焼¥780、生センマイ¥650。焼酎は鹿児島まで買い付けに足を運び、希少な銘柄も取り揃える。 

大阪の心の味である焼き肉と、大阪らしい立ち飲みスタイルが融合した“立ち飲み焼き肉店”。ひとりで来た客にもいろいろな種類を楽しんでもらえるよう、ひと皿は食べやすい量でリーズナブルな価格設定に。和牛を中心に天満市場や豊南市場から仕入れ、日によって変わる希少部位も楽しめる。魚料理などのメニューも豊富で、冬場には比内地鶏の出汁を使った自家製おでんも登場する。箕面ビールのタップのほか、日本酒は約20種類、焼酎は約200本をストックする。

(案内人:醸造家・大下香緒里)

すたんどノート[ 十三 ]
住所:大阪府大阪市淀川区十三東3-25-4 
TEL:090-5118-6643
営業時間:18時〜24時(月〜金) 17時〜24時(土、日、祝) 
不定休
Instagram:@stand_note

豪快に楽しむ、ジューシーなお好み焼き

FB-17.jpg
FB-15.jpgFB-16.jpg
左:路地裏を進んでいくと渋い店構えが現れる。 右上:名物の「千草焼き」¥1,100 右下:千草焼きは大判の豚の特上ロースを挟んで蒸し焼く。肉はやわらかくジューシーになり、肉の脂分が生地にもしみ込み旨味が増す。 

天神橋筋商店街から一本入った細い路地。1949年からこの地で店を構えるのが、お好み焼きの名店「千草」だ。こだわりの生地には魚介だけでなく豚骨からとった出汁を使うため、お好み焼きに使う豚肉とも相性がいい。焼きそばも人気メニューで、太めでもっちりとした特注の麺は小麦の味がしっかり香り、ソースによくからむ。ソースはお好み焼きも焼きそばもすべて同じという潔さ。複数を混ぜ合わせ、甘さにこだわった濃厚なソースは、後を引く味わいだ。

(案内人:料理研究家・土井 光)

お好み焼 千草[ 天満 ]
住所:大阪府大阪市北区天神橋4-11-18 
TEL:06-6351-4072
営業時間:11時〜21時30分 
定休日:火 
Instagram:@okonomiyaki_chigusa

黒毛和牛を余すことなく使う、精肉店の上質な洋食

FB-19.jpg
「黒毛和牛 ビーフフィレカツレツ」¥3,520。和牛のスジや野菜を使ったデミグラスソースは濃厚。

新世界ですき焼き店と精肉販売店として人気を博した「はり重」が、1948年に道頓堀へ移転した際に生まれたのが、洋食店「道頓堀本店 はり重グリル」。一頭買いして独自に熟成を重ねた、国産黒毛和牛の雌牛のみ使用。雌牛は脂の融点が低く、やわらかな肉質と甘みが広がる一級品だ。名物の「黒毛和牛 ビーフフィレカツレツ」は、黒毛和牛の牛脂とラードで揚げるため、上質な肉の豊かな風味が生まれる。70年以上にわたり変わらない味だ。

(案内人:写真家・エレファント・タカ)

道頓堀本店 はり重グリル[ なんば ]
住所:大阪府大阪市中央区道頓堀1-9-17 
TEL:06-6211-5357
営業時間:11時30分〜20時30分 
定休日:火(祝日の場合と12月は営業)

看板なし、会員制ラーメン店の絶品スープ

FB-21.jpg
FB-20.jpg
左:扉を開くと隠れ家のような空間が出現。 右:胡椒とチーズのパスタにインスパイアされた「カチョエペペ」¥2,500。ミネラルが多い四国の塩など数種類をブレンドし魚介の塩だれを加えた。 

チャーシューもメンマもない、淡い黄金色の澄んだスープに艶やかな麺、トッピングは黒胡椒のみ。スープをひと口飲んでさらに驚愕。「こだわりぬいたスープが絶品」と高田シェフが絶賛するように、スープありきのラーメンで、大阪の出汁文化の洗練の極みを感じさせる。長野の「千代幻豚」の肉とパルミジャーノ・レッジャーノなどでひいたスープは、旨味が押し寄せ重層的で奥行きのある味わい。普段は会員制だが一般開放の日もあるのでインスタグラムをチェック!

(案内人:料理人・高田裕介)

210K[ 北浜 ]
住所:大阪府大阪市中央区東高麗橋4-9
営業時間:11時〜14時(Instagramを要確認) 
定休日:土、日、祝 
Instagram:@_210k_osaka

大阪の地ソースを味わう、唯一無二の店

FB-23.jpg
FB-22.jpg
左:生地にほとんど触れない焼き方がこだわり。 右:たこ焼きに合うように香辛料の量を調整した「タカワお好みたこ焼きソース」とイチジクを使った「ツヅミいちじくソース」をかけた「たこ焼き」6個¥400、大阪でつくられる國乃長ビール「貴醸ブラウン」¥880

大阪の食文化を愛する店主が2019年に始めた、ご当地ソースを味わえるたこ焼き店。小規模な工場でつくられ、スーパーにも出回らない大阪の「地ソース」16種類を食べ比べできるのが特徴だ。たこ焼きの生地は昆布出汁がメイン。あえて紅ショウガは入れず、具材はタコと天かす、青ネギのみでふんわりと焼き上げる。あくまでソースが主役のため鰹節はかけず、マヨネーズも国産のマイルドな味わいを選んだ。店頭でソースも販売し、日々、大阪のソース文化を育んでいる。

(案内人:写真家・エレファント・タカ)

たこ焼 ソース[ 昭和町 ]
住所:大阪府大阪市阿倍野区阪南町1-52-7 
TEL:06-7508-1121 
営業時間:10時30分〜21時 
定休日:水 
https://takoyaki-sosu.com

案内人は、大阪にゆかりのある6人の食通

高田裕介 料理人
1977年、鹿児島県生まれ。辻調理師専門学校を卒業後、大阪市内のレストランで修業。2007年に渡仏し、星付きの名店で研鑽を積む。10年、大阪にレストラン「ラ シーム」を開業。12年にミシュラン1つ星、16年以降は2つ星を獲得し、「アジアのベストレストラン50」にランクインするなど、高い評価を受けている。
www.la-cime.com

大下香緒里 醸造家
1976年、大阪府生まれ。大阪府箕面市のクラフトビール醸造所「箕面ビール」代表。97年、父・大下正司がビール醸造を開始した際、ビールづくりをスタート。2013年に社長に就任。品質と多様性にこだわったビールづくりに情熱を注ぎ、世界的コンクールで受賞するなど国内外で高く評価されるブランドへと成長させた。
www.minoh-beer.jp

エレファント・タカ 写真家
1962年、大阪府生まれ。上田義彦写真事務所を経て料理や伝統的な食文化など、幅広いジャンルで活動する。雑誌『dancyu』『ミーツ・リージョナル』『あまから手帖』などの料理写真の撮影を手掛け、その美しい仕上がりと、写し出す人間模様によって多くの読者を魅了し続ける。撮影では高級料亭から老舗の酒場までを訪れ、日本の食の奥深さを体感している。

池上祐子 バーテンダー

1992年、和歌山県生まれ。2014年にリーガロイヤルホテルに入社し、「セラーバー」に配属。以来、数々のカクテルコンペティションで優秀な成績を収める。17年「ラ・メゾン・コアントロー ジャパン2017」では総合優勝、アジア大会でも総合準優勝に輝く。「ディアジオ ワールドクラス ジャパンTOP50」選出経験も持つ。
www.rihga.co.jp/osaka

吉田玉男 人形浄瑠璃文楽座 文楽人形遣い
1953年、大阪府生まれ。中学生の時に人形遣いの吉田玉昇の勧めで文楽に興味を持ち、68年に初代・吉田玉男に弟子入りし、「吉田玉女」の名を授かる。2015年4月に師匠の名跡を継ぎ、二代目・吉田玉男を襲名。23年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。4/5〜30に国立文楽劇場にて行われる、4月文楽公演「通し狂言 義経千本桜」に出演する。
www.ntj.jac.go.jp/bunraku

土井 光 料理研究家
1991年、大阪府生まれ。フランスのポール・ボキューズ料理学校でフランス料理とレストラン・マネジメントを学び、 卒業後は3つ星レストランなどで経験を積む。2018年、父である料理研究家・土井善晴の「おいしいもの研究所」に所属し、料理研究家として活動をスタート。著書に土井善晴との共著『お味噌知る。』があるほか、単著『はじめの自炊帳』が3月31日発売予定。
Instagram:@hikaru___doi

Pen0228_RGB.jpg

『大阪 再発見』
Pen 2025年4月号 ¥880(税込)
▼購入はこちら
Amazon 楽天 セブンネット タワーレコード HMV