大阪・関西万博で注目したいパビリオンのひとつが、万博会場中央にある「静けさの森」の一角に構えた、データサイエンティスト・宮田裕章による体験型パビリオン「Better Co-Being(ベター・コー・ビーイング)」だ。本パビリオンのキュレーターを務める金沢21世紀美術館館長の長谷川祐子が、その魅力を語った。
Pen最新号『大阪 再発見』の第2特集は、4月13日に開幕する「大阪・関西万博」。万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。会場には158の国・地域と7つの国際機関、8つのシグネチャーパビリオン、13の民間パビリオンと4つの国内パビリオンが並び、世界中からトップクリエイターと最先端テクノロジーが集結する。パビリオンを手掛けているクリエイターや研究者たちに、知られざる万博の魅力や見どころを案内してもらった。
『大阪 再発見』
Pen 2025年4月号 ¥880(税込)
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宮田裕章/シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」
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データサイエンスを駆使して現実をよりよくする研究活動を行う宮田裕章。彼が思い描くのは、いのちを響き合わせ、多様な社会をつくるというビジョンだ。「Better Co-Being」をテーマに掲げたパビリオンの舞台は、万博会場中央にある「静けさの森」の一角。壁のないパビリオンには、空中に浮かぶように設置されたグリッド状の屋根があるのみ。来場者はここを拠点に森を回遊しながらアートに触れ、石ころ状のデバイス「エコーブ」で体験を共有する。
そこで感じたデータは万博の期間中アーカイブされ、他者の視点や価値観への気づきを促すという仕組みだ。キュレーターは、金沢21世紀美術館館長の長谷川祐子。国内外で数々の屋外インスタレーションを手掛けてきた彼女は、こう話す。
「このパビリオンでは人や自然、テクノロジーのつながりを、アートの力を使っていかに見せるかがポイントです。完成した作品を置くといった単純なものではなく、プロセス自体が実験的。SANAAの建築や、偶発的に虹を出現させる宮田さんの作品が、『静けさの森』で展開されるレアンドロ・エルリッヒの作品などともつながり、さまざまな角度から自然と人間が響き合うフォレストアートが楽しめるでしょう」
アートを通じ、地球の生態系と共鳴しながら人類の未来を考えたい。
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長谷川祐子
金沢21世紀美術館館長、美術評論家
キュレーターとして国内外で話題の展示を多数企画。水戸芸術館学芸員、ホイットニー美術館客員キュレーター、世田谷美術館学芸員、金沢21世紀美術館学芸課長・芸術監督、東京都現代美術館学芸課長・参事を経て2021年より現職。編著に『新しいエコロジーとアート』(以文社)。宮田館ではキュレーターを務める。