
ルーツは、英国紳士の身支度を支えた理髪店
イギリスを代表する老舗フレグランスブランドであるペンハリガンが、今年で創業から155周年を迎える。一つひとつがストーリーテリングな側面を持つ格調高い香りの数々は、性別を問わずモダンに個性を演出して色褪せることがない。その起源が、英国紳士のグルーミングを担った理髪店にあることをご存じだろうか。
めざましい技術の発展を伴った産業革命の時代を経て、近代イギリスがきらびやかな繁栄を謳歌していた1870年。イギリス南西部のコーンウォール地方で生まれ育ったウィリアム・ペンハリガンは“英国の未来を変えるような画期的な発明をしたい”という希望を胸に、新天地を求めロンドンへと拠点を移した。当時の上流階級の紳士たちのあいだでは、身だしなみと社交の場としてトルコ式のハマムが流行に。そこで専属理髪師として働き、やがて自身の店をオープンしたのが、ペンハリガンの始まりだ。

当時の理髪師の多くは、お手製のアイテムを顧客に販売することがめずらしくなかった。ウィリアムも例に漏れず、手ずからエッセンスを調合したフレグランスを提供。ターキッシュバスに着想を得たエキゾチックな新感覚の香りは、またたく間に英国紳士たちを魅了した。理髪店の常連には当時の政治家たちをはじめ、オスカー・ワイルドやウィンストン・チャーチル、ペルシャ王などの錚々たる顔ぶれが名を連ねたという。やがて王侯貴族たちからも人気を博し、英国王室御用達を意味する「ロイヤルワラント」の称号を三度も授与されるメゾンへと成長した。
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個を引き立てる、独創的な香りの数々


長い歴史の中で生み出されてきた名香の数々は、纏う人の持つパーソナリティを多彩に際立ててくれるものばかりだ。さらに、それぞれの香りへ英国らしいウィットに富んだ物語が付随するのも興味深い。その最たる例が、動物たちの剥製をかたどったような彫刻のついたボトルが印象的な「ポートレート」シリーズだ。キツネの頭部を模したキャップの「ザ コヴェテッド デュシェス ローズ オードパルファム」は、バラの香りを中心に据えながらマンダリンやムスキーウッドの落ち着きのある爽やかさが引き立ち、まるでロゼワインのような芳醇さを思わせる。

「ポートレート」シリーズのアイテムにはすべて架空の人物像が割り当てられており、悲喜こもごもの人間らしい相関図を形成する。雄牛のモチーフとブルーのジュースが特徴的な「ザ ブレイジング ミスター サム オードパルファム」には、異国の地にやってきた自由な社交家のアメリカ人という設定があるという。カルダモン、クミン、ブラックペッパーなどのスパイスがグルマンに香るほどふんだんに用いられ、続くタバコとパチョリでフレッシュに抜けていく、男性的な官能を呼び起こすノートだ。
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最も典型的な英国紳士のイメージを映し出すのが、「ザ トラジェディ オブ ロード ジョージ オードパルファム」。ブランデーとシェービングソープが混ざり合ったような、清潔感と威厳に満ちたフレグランスだ。ハーバルな奥行きを帯びたウッドの香りにアンバーが重厚感を与えつつも、あくまでスマートに上質なスーツやトレンチコートの装いとマッチしそうなエレガンスをにじませる。
このほかにも、ペンハリガンには気高く独創的でユーモアに富んだ香りが勢揃い。伝統あるイギリスらしい品格に裏打ちされた多彩なラインナップのなかから、個性ある魅力を引き出す自分だけの“ニュートラッド”な香りを探してみてはいかがだろう。
ペンハリガン(ブルーベル・ジャパン㈱香水・化粧品事業本部)