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ノルウェーで、2万7000匹もの養殖サーモンが養殖場から逃げ出す騒動が発生した。世界最大のサーモン生産国であるノルウェーにとって、この事態は単なるハプニングでは済まされない。養殖を手がけるMowi社は、逃げたサーモンを捕獲した漁師に1匹あたり約7,700円の懸賞金を支払うと発表し、大規模な回収作戦を開始した。
今回の“脱走”は、ノルウェー北部トロムス州ディロイ市にあるMowi社の養殖施設「Storvika V」で発生。荒天によって養殖網が損傷し、施設内の約10万5,000匹のサーモンのうち、4分の1が海へと流出した。逃げ出したサーモンは平均5.5kgのビッグサイズ。ノルウェー漁業総局はMowi社に対し、通常500メートル以内とされる捕獲エリアを拡大するよう指示。Mowi社は漁師に報奨金を支払い、指定の「レセプション・センター」へ持ち込んでもらうよう呼びかけた。
漁業総局のスポークスマン、ヴェガード・オエン・ハッテン氏は次のように述べている。
「通常、養殖場の周囲500メートル以内でのみ捕獲作業を行います。しかし、今回の規模を考慮し、Mowi社にはより広範囲での回収作業を指示しました」
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「エコロジー的に悪夢です」と専門家
なぜ、これほど大がかりな捕獲作戦が必要なのか?環境保護団体によると、今回の大量脱走は野生のサケに深刻な影響を及ぼす可能性があるからだという。養殖サーモンと野生サーモンが交配すると、自然環境で生き抜く能力の低い個体が増え、野生種の遺伝的多様性が失われてしまう。
また、養殖サーモンは寄生虫である海シラミの温床となり、これが野生サーモンに広がると生存率が大幅に低下する。そして、体が大きく繁殖力も強い養殖サーモンが、野生サーモンを押しのけて産卵場を独占してしまう恐れもあるという。
ノルウェーでは昨年、野生サーモンの個体数が過去最低を記録。その影響で33の河川が漁獲禁止となり、今年はさらに42の河川と3つのフィヨルドで漁の禁止が提案されている。ノルウェー・サーモン・リバー協会のポール・ムガース氏は、「この養殖サーモンの大脱走は、野生のサケにとって壊滅的な事態です」と警告を発している。
Mowi社の対応と責任問題
世界最大の養殖サーモン企業であるMowi社は、「このような事態はあってはならない」とコメント。すでに報奨金制度を発表し、回収作業を進めているが、それだけで環境団体の不満は解消されていない。今後、ノルウェーの水産業はどのように養殖サーモンの管理を強化するのか? そして、“脱走サーモン”はどこまで捕獲できるのか?ノルウェーの海で繰り広げられるこの騒動、果たしてどんな結末を迎えるのか注目が集まっている。
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