ファッション、ファンタジー、フューチャー! 堀内誠一の創作人生を一気見できる、3つの展覧会が同時開催中

  • 文:高橋美礼
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『堀内誠一展FASHION・FANTASY・FUTURE』メインビジュアル©Seiichi Horiuchi

全国を巡回した『堀内誠一 絵の世界展』の記憶も薄れないが、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開催中の『堀内誠一展』で観る多彩な仕事と作品群には、誰もが圧倒されるはずだ。会場を大きく3つのセクションに分け、ファッション、ファンタジー、フューチャー、という3つのキーワードで堀内の創作人生を紐解く展示は、それぞれ独立した構成が際立つ。キュレーションは、これまでも堀内展を企画してきた林綾野が担っている。

まず圧巻なのは、最初に展示されている雑誌『anan』の世界観だ。1970年の創刊に合わせてアートディレクターに抜擢された堀内が手がけた表紙49号までを総覧すると、当時の最先端を拓いてきたことが容易に想像できる。画期的な特集や、写真とタイポグラフィの効果を最大限に発揮している紙面は刺激的で、思わず見入ってしまう。『anan』以外にも『BRUTUS』『POPEYE』のロゴマークをデザインした堀内は、新しいファッションの概念を、新しい雑誌に凝縮して表現した。紙面を拡大したり、全ページを俯瞰するような展示が、その当時の社会的背景まで浮かび上がらせている。

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『anan』表紙(47号、1972年)平凡出版©マガジンハウス(左)、『anan』表紙(11号、1970年)平凡出版©マガジンハウス(右)
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展示デザインは、『anan』の増刊として発行された雑誌『ku:nel』のデザインを創刊から75号まで手がけたアートディレクター有山達也が担当。1冊まるごと全ページを解体して並べた壁面も壮観だ。会場写真(撮影:植本一子)©Seiichi Horiuchi

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中央の展示セクションは、ファンタジー。足を踏み入れると、絵本の中に入り込んでしまったような感覚に、大人でも気持ちが高揚するのではないだろうか。『ぐるんぱのようちえん』『くろうまブランキー』『雪わたり』『オズの魔法使い』など代表的な9つの絵本作品が、大きな壁面や映像を纏ったカーテンとなって、幻想的な空間をつくり上げている。堀内が絵本づくりで大切にしていたという「心に漂う世界」を再構築した場が、空想に遊ぶ時間の豊かさを思い出させてくれる。

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『ぐるんぱのようちえん』(1965年)福音館書店
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『雪わたり』(1969年)福音館書店

 

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誰もがわくわくし、心ときめく空間は、設計事務所ima小林恭+マナがデザインした。楕円の展示室の中央には、巨大な立体「ぐるんぱ」も! PLAY! MUSEUMの企画展は、こうした仕掛けが楽しいのだ。会場写真(撮影:植本一子)©Seiichi Horiuchi

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堀内の仕事に触発され、堀内を敬愛した110人の言葉に満たされているのが、フューチャーと題された3つめの展示セクション。それぞれが好きな作品を推挙しているので当然ながら重複もあるが、異なる視点や感性から綴られた言葉は、すべてが名作だ。とりわけ、絵本作家である安野光雅が堀内の逝去に際して捧げた弔辞が心を打つ。同志として、友として、同時代を生きた安野と堀内の絆から語られる優しさと深い愛情のこもった別れのあいさつは、本展を締めくくるにふさわしいものだった。3つの展覧会が同時に開催されるボリュームに気おされず、見逃せない輝きがあちこちに散りばめられた企画を、存分に堪能してほしい。

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《セーヌ左岸》1981年
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『あかずきん』(1970年)福音館書店
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『どうぶつしんぶん』はるのごう(1983年)福音館書店
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絵本に限らず、堀内が手描きしたパリの絵地図や友人宛の手紙まで、110人が選んだ作品とコメントがずらりと並ぶ。創造へのインスピレーションに満ちた空間は、デザイナーの三宅瑠人と岡崎由佳が手がけた。会場写真(撮影:植本一子)©Seiichi Horiuchi

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『堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE』

開催日時:開催中~4月6日(日)
開催場所:PLAY! MUSEUM
東京都立川市緑町 3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2F
開館時間:10時~17時 ※土日祝は18時まで、入場は閉館の30分前まで
料金:一般 ¥1,800
https://play2020.jp/article/seiichi_horiuchi