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サントリー美術館にて開催中の『没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ』。展示ではガラスや陶器、家具、また自筆文書などの資料計110件を通して、パリでの活動に焦点を当てながら、エミール・ガレ(1846〜1904年)の豊かな芸術を紹介している。
パリ万博に3度の出品。フランスを代表する装飾芸術家としての地位を固める
フランス北東部ロレーヌ地方の古都ナンシーにて、高級ガラス・陶磁器の製造卸販売業を営む家に生まれたガレ。18歳の頃から陶器のデザインを担うと、1877年に父シャルルより家業を引き継ぎ、翌年のパリ万博にて経営と制作の両面で指揮をとってデビュー。ガラス部門にて銅賞を受賞するなど、世界の大舞台で順調なスタートを切る。その後、ガレは89年のパリ万博にガラス作品300点、陶器200点をはじめとする膨大な作品を出品。今度はガラス部門でグランプリ、陶器部門でも金賞、また着手したばかりの家具部門でも銀賞を獲得するなど大成功を収める。そしてフランス史上最も華やかな国際舞台となった1900年のパリ万博にも挑もうと、生命の循環を表現したガラス作品などを手がけ、観る者の琴線を震わせるような独自の世界を展開していった。
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パリ装飾美術館が所蔵する伝来の確かな優品にも注目!
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国内でもファンが多く、過去にもたびたび開かれてきたガレ展のうち、改めて知っておきたい今回の見どころとは……。まずガレが参加した3回のパリ万博へ実際に出品された作品をはじめ、パリ装飾美術館が所蔵する伝来の確かな11点の優品が展示されていることだ。脚付杯「四季」とは、1878年のパリ万博に出され、翌年にパリ装飾美術館がガレ本人から購入したもの。無色透明ガラスにエングレーヴィングとエナメル彩、金彩を施すという、この時期の中心的な表現技法がぐっと凝縮していて、小さな杯ながらもうっとりするほどに美しい。またヨーロッパの装飾品のモチーフとしてよく使われ、ガレも自作に採用したマグノリア(木蓮)をあしらった花器「マグノリア」も、ガレから直接入手された作品だと分かっている。---fadeinPager---
ガレとパリでの受託代理人との関係を表す史料が初公開
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2023年にサントリー美術館に収蔵された、パリでガレの代理店を営んだデグペルス家の伝来史料が一部初公開されていることにも注目したい。ナンシーに拠点を置きながらも、ガレは父シャルルに倣って、パリの代理人に販売を委託するスタイルを引き継ぐと、1879年にマルスラン・デグペルスが公式にガレ商会の受託代理人となる。ガレがデグペルスに宛てた自筆のメッセージカードには、パリ万博へ向けて不安がありながらも、遅れずに準備を進めていることや、デグペルスを頼りにしていることなどが記され、二人の間の親密な関係を伺うことができる。またガレはパリにショールームを構える一方、美術工芸品店エスカリエ・ド・クリスタルに販売権を許したが、花器『人物・ふくろう(夜)』など、同店が扱ったモデルの展示も見どころと言える。
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故郷ナンシーとパリの間で苦しんだ晩年のガレの心情
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パリの社交界につながる作品を通して、ガレが関わっていた人物について明らかにいる点も見逃せない。1889年のパリ万博での名声を契機に社交界に交流を広げたガレは、サロンの中心人物ロベール・ド・モンテスキウ=フザンサック伯爵と出会い、芸術や社会に影響力のある人々との関係を築いていく。栓付瓶「蝙蝠・芥子」とは、モンテスキウの詩集『蝙蝠』の出版を記念して制作されたもの。首の部分に詩の一節が記され、全体で退廃的な夜の闇を表現している。このほか、パリでの成功の反面、「ドレフュス事件」などにおいて故郷ナンシーから反感を買い、精神的に苦しんでいたという晩年のエピソードにも哀れみを感じる。サントリー美術館では2016年以来、9年ぶりとなるガレ展にて、作品を見る機会こそ多けれども、意外と知られていないガレのパリでの足跡をたどりたい。
『没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ』
開催期間:開催中~4月13日(日)
開催場所:サントリー美術館
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
開館時間:10時~18時
休館日:火
料金:一般 ¥1,700
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