1.AUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ)
リマスター02 オートマティック
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「サンドゴールド」はオーデマ ピゲが昨年発表した新素材で、金・銅・パラジウムで割金。砂丘からインスパイアされた、ホワイトゴールドとピンクゴールドの中間色で、光の当たり具合や角度によって微妙に変化する、暖かみを感じさせる淡い色みが特徴だ。1960年に7本のみ製造された左右非対称ケースのモデルを現代的に再解釈した。
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2.OMEGA(オメガ)
コンステレーション メテオライト
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「セドナゴールド」は、オメガが2012年から使用するオリジナルの素材。鮮やかな色合いが美しい独自のローズゴールド合金で、名称は太陽系の中で最も赤い星と言われる小惑星「セドナ」に由来する。割金に銅とパラジウムが加えられ、18金が持つ標準的な特徴をすべて備えながら、耐食性に優れる特徴を持つ。メテオライト(隕石)を採用したダイヤルの模様は同じものがふたつとない。
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3.PANERAI(パネライ)
ルミノール ドゥエ トゥットオロ
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「ゴールドテック」は、パネライの研究・開発部門であるLaboratorio di Idee(アイデアの工房)で開発されたオリジナルのゴールド素材。金75%・銅24%の割合で赤みを帯びたレッドゴールドの色調に、約0.4%のプラチナを配合。変色しにくく深みのある上品な色であることに加え、一般的なピンクゴールドやイエローゴールドよりも硬く、耐久性・耐酸化性にも優れている。
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近年のブルーやグリーンの流行が示すように、腕時計のカラーリングが重要性を増す中で、ゴールドの色みにもブランドごとの特色が見て取れる。2005年にロレックスが「エバーローズゴールド」を発表して以来、オメガが「セドナゴールド」「ムーンシャインゴールド」を、シャネルが「ベージュゴールド」をリリースするなど、各社が独自の「新しいゴールド」の開発に力を入れてきた。そしてオーデマ ピゲが満を持して発表したのが「サンドゴールド」だ。
そもそも腕時計に使われるゴールドはほぼ例外なく18金だ。ヴィンテージでは14金や9金も見かけるが、新品ではまれ。純金=24金だから、24分率の18金は純金の含有量が75 %となる。そのままでは軟らかすぎる純金に別の金属を混ぜて割金した素材が、腕時計のデファクト・スタンダードである。
イエローゴールドは、長く王道の地位を保ってきた。割金は銀と銅を等量にが基本で、ほぼ純金のカラーを再現できる。黄金色の輝きを損なわずに硬度を上げた、合金の傑作である。その割金の構成を変えることで、ピンクゴールドやレッドゴールド、ホワイトゴールドが誕生した。銅を増やせば赤みが強くなり、パラジウムのような白色金属を加えることで、プラチナのような白さも実現できる。
各社が競って開発した新世代のゴールド群は、これまでにないニュアンスカラーや耐酸化性などの特質を備え、磨きの仕上げ方で驚くほど個性も際立つ。ゴールドウォッチはいままさに、群雄割拠の新時代を迎えている。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。近著に『ロレックスが買えない。』。※この記事はPen 2025年3月号より再編集した記事です。