「ホラ話の名人」でもあったボブ・ディランが、心の内側を見透かされないために手放さなかったサングラス

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
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モデル名は「オリジナルウェイファーラークラシック」。レイバン初のプラスチックフレームとして1952年に登場。ブラックのスクエアシェイプのフレームに合わせたのは、クリスタルグリーン(G-15)のレンズ。フレームやレンズのバリエーションも多彩で好みのモデルが選ぶことができるが、ディランを気取るならば、この配色だろう。¥29,040/レイバン

「大人の名品図鑑」ボブ・ディラン編 #2

ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、エルヴィス・プレスリーらと並び称される比類なきアーティスト、ボブ・ディラン。2016年に歌手として初のノーベル文学賞を受賞し、今年2月には彼を主人公にした映画が公開される。そんな音楽界の“生ける伝説“にまつわる名品を掘り下げる。
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ボブ・ディランがアメリカ合衆国ミネソタ州ダルースで生まれたのは1941年5月24日。41年といえば日本軍が真珠湾攻撃をした年だ。幼少の時に同じミネソタ州ヒビングに引っ越し、そこで少年時代を過ごす。マーティン・スコセッシが監督したディランのドキュメンタリー映画『ノーディレクション・ホーム』(05年)では「引っ越した家に前の持ち主が置き忘れていったギターと一枚のレコードがあり、そこで音楽と運命の出会いをする。曲を聴いて別の人間になった気がした。自分は間違った親の下に生まれてきてしまった」と音楽との出会いを話す。やがて自己流のピアノを弾き、ラジオから流れる曲をギターで真似るようになる。ハイスクール時代にはロックンロールに傾倒し、エレクトリック・ギターを持ち、バンドを結成し、テレビのアマチュアショー番組にも出演するまでとなった。

ディランがフォークソングに関心を持ったのは、59年、ミネソタ大学に進学した頃だ。当時、アメリカは反戦や公民権運動が叫ばれていた時代。そもそもフォークソングはアメリカ各地で伝承された歌から始まったが、60年代には反ポップスの受け皿、ひいては政治的なメッセージを込めた「プロテストソング」的な性格を帯びるようになった。『ボブ・ディラン ロックの精霊』(湯浅学著 岩波新書)には「まだロックンロール・ファッションだったボブは、自分がディンキータウンのトレンドからはかなり遅れていると感じた」と書かれている。ディンキータウンとはミネソタ大学があるミネアポリスの先鋭的な地区で、ディランは大学に通わず、多くの時間をその街で過ごしていた。そしてその頃から彼は「ボブ・ディラン」と名乗るようになる。実はディランの本名はロバート・アレン・ジマーマン。英国ウェールズ出身の詩人、ディラン・トマスの詩を読み、彼の名前が気に入り「名前を聞かれたとき、わたしは考える前に本能的、自動的に『ボブ・ディラン』と言っていた」と同書にある。

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いつも傍らにあった、ディランの代名詞

さらに同書にはディランは「ホラ話の名人」で、マスコミからの質問にもつくり話、ときには攻撃的な嘘を喋ることもあったらしい。彼がマスコミに語った嘘の生い立ちや経歴がそのままアルバムなどの正式なプロフィールとして掲載されることもあったという。天邪鬼でまわりを煙に巻くことも多かったディランとしては、それも「してやったり」というところなのだろう。

そんな実話を持つディランの傍らにいつもあったアクセサリーが真っ黒なサングラスだ。心の内側を見透かされないようにかけていたのだろう。ポートレイト写真を集めてみると、彼はさまざまなモデルを愛用しているが、いちばん有名なのが、レイバンの「ウェイファーラー」だ。マドンナ、デヴィッド・ボウイ、最近ではリアーナなどのミュージシャンにも愛用され、『ティファニーで朝食を』(61年)のオードリー・ヘプバーンや『ブルース・ブラザーズ』(80年)ではジョン・ベルーシやダン・エイクロイドなどがかけたサングラスの代名詞的存在だ。

そもそもレイバンは30年代にアメリカ空軍からの依頼で、パイロットの空での眩しさと目を保護するためにサングラスを開発したのがブランドの始まりとなる。レイバンは50年代まで主に機能面にフォーカスした商品を展開していたが、ファッション性を重視して52年に発表されたのが「ウェイファーラー」。当時のロックンロールブームの波に乗り、多くのミュージシャンに愛用されるだけでなく、若者たちを虜にし、自由を象徴するファッションアイテムとしての地位を築いた。とあるサイトでは「もじゃもじゃ頭にウェイファーラーをかければ誰でもディランになれる」と書かれているが、ダークなレンズ越しに外界を見れば、ディランの気持ちが少しわかるかもしれない。

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フレームの内側に刻まれた「WAYFARER」の文字。フレームはイタリアで生産されている。

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フレームのテンプルの外側にはブランド名の「Ray-Ban」が刻印される。数あるサングラスの歴史の中でも最も高い認知度を持つモデルと言われている。

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モデル名は「MEGA WAYFARER」。オリジナルモデルを発展させ、大胆にボリュームアップさせたモデル。テンプルも極太タイプになり、ホールド感も向上している。¥30,800/レイバン

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モデル名は「WAYFARER REVERSE」。従来のレンズを「完全に反転」したリバースレンズを採用した「ウェイファーラー」。このリバースレンズは頬骨が持つ自然なカーブに添い、あらゆる形のフェイスにフィットする。しかもこのレンズはバイオベースのカーボンを41%含む、バイオナイロン製で、サスティナビリティが叫ばれる現代にもマッチしている。¥32,780/レイバン

ルックスオティカジャパン カスタマーサービス

TEL: 0120-990-307
www.ray-ban.com

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