テーマを設けて作品を発表する芸術祭。年々盛り上がりを増し、日本各地で開催されている。その仕掛け人として知られる北川フラムに魅力を伺うと同時に、今年の上半期に実施される、訪れるべきイベントを紹介する。
現代アートのシーンで、次世代の作家たちが面白い。新時代のアーティスト38名の紹介に加え、足を運ぶべき展覧会やアートフェア、さらに現代アートを楽しむための基礎知識まで話題を広げた、ガイドとなるような一冊。2025年は、現代アートに注目せよ!
『2025年に見るべき現代アート』
Pen 2025年3月号 ¥880(税込)
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「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」「瀬戸内国際芸術祭」などで総合ディレクターを務める。
アートを通して土地の魅力を堪能、日本各地に広がる芸術祭の楽しみ方
地域芸術祭の先駆けとして2000年にスタートした「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。新潟県の広域地域活性化政策として過疎化対策も誕生の理由だったという。総合ディレクターを務める北川フラムはこう語る。
「地域に誇りを持つことが重要だと思い、均質化した都市空間とは異なる場所でのアートの展開を考えました。前例のないアートによる地域づくりは、当初は反対意見も多くありました。作家たちが真摯に地域と向き合い作品を生み出すと、少しずつ関わる人が増えた。徐々に、地域みんなの祭りへと変わっていったのです。それが、次は瀬戸内でも芸術祭を、次は奥能登でも、というように広がりました」
土地が持つ可能性に、あるいはエネルギーに触れることができる。アートを通してその地域が持つ魅力に触れてほしい、と北川は強調する。では都市型芸術祭の魅力はどうだろう。
「私がアーティストに求めるのは、新しい体験をさせてくれること。都市の芸術祭においてもそういう作家と出会えたらうれしいですね」
都市部の芸術祭においても、アートを鑑賞した後に、普段の見慣れた景色が変わり、日常がリセットされることがあるだろう。規模の大小やタイプを問わず芸術祭では、美術館とは異なるアート体験が待っているのだ。
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大阪・関西万博と同時開催。関西各所で多様性を体現『Study: 大阪関西国際芸術祭 2025』
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ハリウッドでメイクアップアーティストとして活躍した作家の現代彫刻作品。展示会場は大阪文化館・天保山。 © Kazu Hiro Courtesy of the artist and Institute for Cultural Exchange, Tübingen
“ソーシャルインパクト”をテーマに掲げ、文化芸術による経済活性化や社会課題の可視化を目指す「Study:大阪関西国際芸術祭2025」。大阪・関西万博を見据え、2022年より過去3回にわたり大阪で検証を重ねてきた芸術祭が、ついに本番を迎える。
メインの大阪・関西万博会場(夢洲)ほか、安藤忠雄の設計による大阪文化館・天保山(旧サントリーミュージアム)などがあるベイエリアに加え、美術館などが集まる中之島、物流の拠点として知られる船場、かつての日雇い労働者の集まる簡易宿泊施設が立ち並び、数々の社会事象と向き合ってきた西成など各地にアートが繰り広げられる。“アート×ヒト×社会の関係をStudyする芸術祭”という命題に呼応するプログラムとして、大阪各地の地域的な特性と結びついた内容に期待が高まる。会期中に関西各地の美術館やギャラリーの企画で行われるアソシエイトプログラムもあわせて楽しみたい。
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昨年、バナナを作品化した『コメディアン』が600万ドル以上で落札され話題となった作家の作品は、大阪文化館・天保山で展示。 © Maurizio Cattelan Photo: Attilio Maranzano Courtesy of Maurizio Cattelan’s Archive and Institute for Cultural Exchange, Tübingen.
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左:2012年より大阪市西成区釜ヶ崎にて開講。釜ヶ崎の街を大学に見立て、天文学や合唱など年間約100講座を開講。「であいと表現の場」を創出する。
Study: 大阪関西国際芸術祭 2025
開催期間:4月13日~10月13日
開催場所:大阪・関西万博会場ほか各所
※プログラムや会場により会期、営業時間など異なる
料金:展覧会パスポート前売一般¥3,000
https://osaka-kansai.art
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“HUMANIT Y” をテーマに、町家や寺院などが会場に。『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025』
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右:プシュパマラ・N『Motherland: The Festive Tableau』2009年
現代インド美術界の異端者とも評される作家は、京都文化博物館 別館(旧日本銀行京都支店)で3シリーズの展示を行う。© Pushpamala N
左:石川真生『赤花』
1970年代後半に沖縄で黒人兵が集まるバーで働きながら撮影を開始した石川真生は、最初期の作品『赤花』などを出品。© Mao Ishikawa
13回目を迎える「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、京都の春の風物詩となって久しい。社会の情勢などを感じながら、毎回のテーマを設定している。今年のテーマ“HUMANITY”には、「私たちは個人として、世界の一員として、どう生きるのか」という問いかけが込められている。
そのテーマと作品がどのように結びついているかはもちろんのこと、京都ならではの特徴的な空間が、どのようなセノグラフィで写真展会場になるのかに興味が引かれる。沖縄で撮影を続けてきた石川真生の作品は帯匠の誉田屋源兵衛 竹院の間に並ぶ。ストリートを写すJRの作品は京都新聞地下の旧印刷工場と、京都駅ビル北側通路壁面に。写真で古典絵画を再考するエリック・ポワトヴァンの作品は祇園の両足院に、といった具合で、作品を体験する場としての演出が見どころになっている。写真を通して京都の魅力も感じられる写真祭だ。
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各地で出会う人々を撮影して制作するJRの作品シリーズ。今回、実際に京都で撮影し、制作した新作を発表する。 © JR
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毎年会場となっている、祇園に位置する両足院。写真は、昨年行われた柏田テツオ『空(くう)をたぐる』展示風景。
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025
開催期間:4月12日~5月11日
開催場所:京都文化博物館 別館ほか京都市内各所
※プログラムや会場により営業時間など異なる
料金:展覧会パスポート前売一般¥5,500(単館チケットあり、一部無料会場あり)
https://kyotographie.jp
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瀬戸内の島々を舞台に、春・夏・秋とアートを展開。『瀬戸内国際芸術祭 2025』
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小豆島寒霞渓の見晴し台として機能する、青木野枝『空の玉/寒霞渓』(2022年)。 photo: Keizo Kioku
2010年に初めて開催された「瀬戸内国際芸術祭」は、約100日の会期で季節ごとの瀬戸内の魅力を体感できる芸術祭だ。当初から掲げてきた目的は“海の復権”。直島をはじめ、いまや世界的に有名なアートスポットとなった瀬戸内の島々だが、人口減少や少子高齢化のあおりを受けて地域の活力が低下していたことが、開催の背景にある。それがこれだけ人を集める地域となったというわけだ。瀬戸内の島々に足を運べば、アートの力だけでなく、地域の魅力を存分に感じられることがこの芸術祭の最大の魅力でもある。今年は新たに約80組の作家、プロジェクトが参加。香川沿岸部が新たな開催スポットに加わり、全17エリアに展開する。また、春頃には直島の本村地区に直島新美術館のオープンも予定している。芸術祭で発表された、常時鑑賞可能な作品も増え、さらに充実度を増す瀬戸内に足を運び、季節ごとの日の光と潮風を味わってみてはいかがだろう。
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ヘザー・B・スワン+ノンダ・カサリディス『海を夢見る人々の場所』(2022年)。人々の視線と海の景色を結ぶ。 photo: Keizo Kioku
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男木島のフェリー発着場に設置されたジャウメ・プレンサ『男木島の魂』(2010年)。photo: Osamu Nakamura
瀬戸内国際芸術祭 2025
開催期間:(春会期)4月18日~5月25日、(夏会期)8月1~31日、(秋会期)10月3日~11月9日
開催場所:瀬戸内の島々と沿岸部 全17エリア
※プログラムや会場により会期、営業時間など異なる
料金:オールシーズンパスポート前売一般¥4,300
https://setouchi-artfest.jp
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