多彩なクリエイターとアーティストが集結! Penが主催した、一夜限りのイベントをレポート

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:久保寺潤子
Share:

2025年1月25日(土)、虎ノ門ヒルズステーションタワー・TOKYO NODEにて、Penが主催するイベント「Welcome to Pen 2025 CREATORS FES.」が開催された。各界のクリエイターを表彰する「Pen クリエイター・アワード 2024」の表彰式を皮切りに、スペシャルなゲストを迎えたトークセッションや音楽ライブが繰り広げられ、一夜限りの贅沢なひとときとなった。

_22A1981.jpg
週末の午後、TOKYO NODEにてなごやかな雰囲気のなかイベントがスタート。
生成AI映画『ジェネレイドスコープ』(C)2025 generAIdoscope: HIROTAKA ADACHI, TAKESHI SONE, HIROKI YAMAGUCHI / REALCOFFEE ENTERTAINMENT
動画制作:GRATCRAFT

---fadeinPager---

輝いた才能に捧げる、「Pen クリエイター・アワード 2024」授賞式

地上46階、東京の中心地を一望するTOKYO NODE HALLで始まった同イベント。今回で8回目を迎える「Pen クリエイター・アワード」授賞式では、Pen1月号に掲載された5組のクリエイターが、取材時の映像とともに紹介された。この日登壇したのはアニメーション監督の押山清高と、アーティストのネルホル(飯田竜太、田中義久)。Pen編集長・石川康太より、トロフィーの授与と、オニツカタイガーのシューズを贈呈した。スケジュールの都合で参加できなかったアーティストの毛利悠子、ピアニストの角野隼斗、脚本家の吉田恵里香は、ビデオメッセージで受賞の喜びを語った。

_22A2160.jpg
東京の絶景をバックに、大勢の参加者を迎えてイベントがスタート。
_22A2055.jpg
1組目の受賞者は、『ルックバック』を手掛けたアニメーション監督の押山清高。「ものづくりをする苦悩、喜びが表現された本作は、クリエイターをはじめ多くの人に勇気を与えました。その情熱に敬意を表します」とPen編集長・石川康太よりコメント。
_22A2099.jpg
紙の彫刻を行う飯田竜太(左)とグラフィックデザイナー・田中義久(右)の2人組ユニット、ネルホル。24年秋に開催された初の大規模個展では、17年間の活動の集大成を披露した。

ものづくりをする人の心を揺さぶった、映画『ルックバック』

授賞式の後はトークショーがスタート。1組目はアニメーション映画『ルックバック』をめぐるトークセッションだ。ステージには押山監督に加え、原作漫画『ルックバック』を担当した漫画編集者の林士平、ナビゲーターにダウ90000主宰・蓮見翔が登場し、制作現場の背景やつくり手の想い、漫画やアニメの可能性について語り合った。押山は監督のかたわら、アニメーターとしても膨大な数の作画を担当。「ものづくりというのはプロセスそのものが大事であって、売れるか売れないかは別の次元の話です。究極的には机に向かって描くことに没頭できる時間がいちばん幸せ」と語った。映画の制作会議にも参画した林は「漫画がアニメーションになったとき、全世界への広がり方は桁違い」とコメントした。

_22A2166.jpg
過酷なアニメーション制作の裏話や、ものづくりの楽しさについて、三者三様の立場からトークが盛り上がった。
_22A2192.jpg
「最近、漫画を描きたいと思ってるんです」と言う押山(左)に対し、「今はタブレットでも描けるのでハードルは低くなっています。定年退職した方が趣味で漫画を描き始める時代がきてますよ」と林(右)。
_22A2201.jpg
「セリフや音楽のない、沈黙の場面にものづくりをする人の孤独が伝わってきました」と蓮見。

生成AI映画『ジェネレイドスコープ』監督3人が明かした制作秘話

2組目は、2025年公開予定の生成AIで制作したオムニバス映画についてのトークセッション。作品を手掛けた監督、安達寛高、曽根剛、山口ヒロキの3人が登場し、最新のAI技術について映像とともに紹介した。23年3月、ChatGPTのGPT-4モデルが話題になったのをきっかけに、AIを使って脚本、画像生成、動画生成に取り組んだという曽根監督。同年夏には初アニメを制作し、海外の映画祭に出展。24年に安達・山口両監督と意気投合して本プロジェクトを立ち上げた。会場では「人類とAIの邂逅」をテーマにした安達監督の『モンキーズ・オデッセイ』、ファンタジー&パラレルな世界を表現した曽根監督の『AZUSA』、超能力者の老婆が活躍する山口監督の『グランマレビト』の3作が公開に先駆けて一部披露。トークセッションでは「Runway Gen3」、「Runway Act-One」といった具体的なツールの話も飛び交い、日進月歩の生成AIの制作現場の話は尽きることがなかった。

_22A2228.jpg
「生成AIはいかにしてクリエイティブワークの可能性を広げるか?」について語り合った。
_22A2253.jpg
小説家としても長年活動してきた安達監督。『モンキーズ・オデッセイ』は10年前に書いた小説が元になっている。
_22A2249.jpg
『カメラを止めるな!』の撮影監督でも知られる曽根監督。「自分の想像を超えてAIがファンタジーの世界を広げてくれました」
_22A2247.jpg
海外のAI映画祭で多数の入選実績を誇る山口監督。「AIの技術はものすごい速さで進化しています」

愛好家たちが語り合う、ウイスキーの奥深さと魅力

ガラス越しの景色が夕暮れに染まり、高層ビルの灯がきらめきはじめた頃にスタートした「ウイスキートーク」。テレビ番組『ウイスキペディア』(BSフジ)の5周年を記念して実現した本プログラムは、ウイスキーをめぐるトークセッションだ。番組内でマスターとして出演中の俳優・倉田英二、同番組の特番でナレーターを務める俳優・青木崇高、Penでお馴染みのウイスキージャーナリスト・西田嘉孝の3人が登壇し、実際にウイスキーを飲みながらその魅力を語り合った。3人が試飲したのはスコットランド・ハリス島にあるアイル・オブ・ハリス蒸留所でつくられた「ザ・ヒーラック」と、ウイスキペディア×Penのコラボボトル。ウイスキーの歴史や楽しみ方を伝えてきた3者の価値観が共鳴したひとときとなった。

_22A2290.jpg
「スランジバー!」と乾杯の合図で始まったウイスキートーク。
_22A2347.jpg
「ザ・ヒーラックは昆布出汁の香りのようで日本人に馴染みやすい味」と倉田。青木は「コラボボトルはスモーキーで芳醇な香りに満ちています」とコメント。

フェイクか現実か? 交錯する現代社会を考察する

続くトークショーは、直木賞受賞作家の小川哲とテレビ東京のプロデューサー・大森時生が登場。「現実と虚構」をテーマに、巷で密かな人気を集めるフェイクドキュメンタリーについて語り合った。トークの前には、実際に大森が手掛け、SNSでも話題となった新作フェイクドキュメンタリー『飯沼一家に謝罪します』がダイジェスト上映され、メディアにおける“現実と虚構”について興味深い意見が交わされた。

_22A2460.jpg
「景気が悪くて閉塞感のある時代に、明るいものを見ても共感しないですよね」とフェイクドキュメンタリーの盛り上がりを分析する小川(左)。
_22A2448.jpg
「自分の立ち位置が分からなくなるのがフェイク動画の面白さ。フィクションを存分に堪能してきた人が惹かれるのでは」と大森(右)。

トークの後は、夜景を眺めながらウイスキーで乾杯

前述の「ウイスキートーク」で紹介された2種類のウイスキーは、洋酒販売サイト「saketry」の提供によるもの。ステージ上で3人が味わった「ザ・ヒーラック」はプログラム終了後、8階のカフェで参加者に振舞われた。24年11月に発売されたザ・ヒーラックは熟成年数14年の香り豊かな逸品で、ウイスキー初心者からマニアまで楽しめる。『ウイスキペディア』5周年を記念してつくられたウイスキペディアとPenのコラボボトル「A」もお披露目された。こちらは熟成年数6年と14年の2種類で、4月以降に発売予定だ。詳細はPenの公式サイトで順次公開予定。

_22A2512.jpg
ウイスキートーク終了後、参加者たちは8階のカフェで夜景とともにウイスキーを楽しんだ。
_22A2486.jpg
芳醇なウイスキーを共有しながら、トークの余韻に浸った。

注目のアーティスト、YOSHIROTTENのオリジナルTシャツ

同じく8階のカフェでは、アーティストのYOSHIROTTENによるグラフィックをあしらったTシャツを販売。高級ブランドから大物ミュージシャンのアートワークまでを手掛ける注目のアーティストが、このイベントのために制作したグラフィックは、「DNA」がモチーフ。時代が変わっても受け継がれる、人に宿るものづくりへの想いを表現したものだ。

_22A1968.jpg
この日のためにデザインされたTシャツは黒と白の2色で展開。

会場に漂う、ネスプレッソの多彩なフレーバー

メイン会場となったホール手前のホワイエにはネスプレッソの展示スペースが設けられ、来場者は休憩時間にコーヒーメーカーを操作しながら、その多彩な味わいを堪能した。設置された「ヴァーチュオ ポップ プラス」は、カプセルからバーコードを読み取り、最適な条件を自動判別しながら遠心力で抽出する。用意されたカプセルは、麦芽のような香りが特徴の「コスタリカ」、キャラメリゼしたヘーゼルナッツの風味をまとった「ローステッド ヘーゼルナッツ」、浅煎り焙煎によるバランスの取れた「メロツィオ デカフェ」の3種類だ。カプセル式コーヒーのパイオニアとして長年研究を重ねてきたネスプレッソ。参加者はそのなめらかで上質な口当たりを堪能した。

_22A1945.jpg
手軽な操作で上質なコーヒーが楽しめると好評だったネスプレッソのブース。

Penの特集が反響を呼んだ、“細野晴臣と仲間たち”が登場

この日の東京は澄み渡った空気に包まれていた。窓の外はドラマチックな夜景が広がり、ホールはしっとりとした大人のライブ会場へと様相を変えていく。最後のプログラムとなる音楽ライブの前には、Pen1月号で特集したミュージシャン・細野晴臣が登場。親交の深い水原希子・水原佑果姉妹を迎え、楽しいトークが繰り広げられた。大の細野ファンという水原姉妹は細野の海外ライブにも足繁く出掛け、レアな細野アイテムもコレクションしているという。細野は「音楽をつくるのは恋愛に似ている」と言い、Penの特集に対し「みんなの愛を感じた」とコメントした。

_22A2632.jpg
細野の大ファンを自称する水原姉妹は、細野の番組にもたびたび出演している。

トークに続き、蓮沼執太を中心に小山田圭吾(コーネリアス)、ゴンドウトモヒコの3人によるスペシャルライブがスタート。細野の音楽世界を再訪し、新たに世界を切り拓くことをテーマに演奏された。蓮沼のソロを皮切りに、蓮沼と小山田による即興のインスト、最後にはゴンドウも加わり、浮遊感漂う心地よいサウンドを提供。3人が即興で奏でた音は観客を釘付けにし、東京の夜空へといざなった。

_22A2768.jpg
蓮沼のソロ、蓮沼×小山田による即興インスト、そしてゴンドウを加えた3人による演奏が披露された。
_22A2774.jpg
Penの細野特集にも登場した蓮沼は「ぼくらは細野さんがつくってきた大きな河の上に乗せてもらっているようなもの」と語る。
_22A2721.jpg
スケッチ・ショウからYMOまで、多くの場面で細野とセッションしている小山田。
_22A2752.jpg
ゴンドウは、細野と高橋幸宏が組んでいたユニット、スケッチ・ショウのサポートメンバーとして活動していた。

これからもパワーアップする、Penの取り組みにご注目を

雑誌をはじめ、WEBサイトやSNS、YouTubeなどさまざまなチャネルを活用してコンテンツを届けてきたPen。これまでの活動で培ってきた関係性や視点を活かした今回のイベントでは、初の試みながらも、多くの人と贅沢な時間を共有できる一夜となった。これからもさまざまなクリエイションに注目したイベントを継続していく予定だ。次回の開催にもぜひご注目いただきたい。

Welcome to Pen 2025
CREATORS FES.

www.pen-online.jp/special/event2025