200個のモンスターの足跡が発掘される…英国最長の「恐竜ハイウェイ」とは?

  • 文:宮田華子
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@WashTimes – Xアカウントのキャプチャ画像

イギリス・オックスフォードシャーのデュワーズ・ファーム採石場で、驚くべき発見がなされた。

採石場の作業員ゲイリー・ジョンソンさんが、採石作業中に「異常な隆起」に気付き、専門家の調査を実施されたことがきっかけである。この調査により、1億6600万年前の恐竜の足跡が約200個発掘され、イギリス史上最大かつ最長とされる「恐竜ハイウェイ」が明らかとなった。

発見の経緯

ジョンソンさんが採石場の床を露出させるため粘土を剥ぎ取る作業中、地面に連続的なこぶを発見した。

BBCの取材に対し、ジョンソンさんは「私が(この足跡の)第一発見者だと思いました。本当に超現実的なもの(に見え)、ちょっとゾクゾクするような瞬間でした」と語っている。

 

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BBCの取材を受けるゲイリー・ジョンソンさん。@BBCNews – Youtubeのキャプチャ画像

専門家を招き、調査が開始された。発掘はオックスフォード大学とバーミンガム大学が主導し、2024年6月に100人以上の科学者やボランティアが参加した1週間の大規模発掘作業が実施され、最終的に200を超える足跡が確認された。その全貌は3Dモデルを使って詳細に記録された。

発掘された恐竜の足跡

発見された足跡は、草食恐竜と肉食恐竜のものが含まれていた。中でも注目されるのは、中期ジュラ紀から後期ジュラ紀に生息していた体長18メートルに及ぶ竜脚類恐竜ケティオサウルスと推定される巨大な草食恐竜の足跡である。竜脚類の足跡は丸みを帯びており、象の足跡を彷彿とさせるが、サイズは圧倒的に大きい。一方で、特徴的な3本指を持つ肉食恐竜メガロサウルスの足跡も見つかっている。この恐竜は全長9メートルに達し、敏捷なハンターであったと考えられている。

 


メガロサウルスの足跡。

最も長い足跡の線は150メートル以上にわたり、一部の足跡は1997年に近隣の採石場で発見されたものと繋がっていることが判明した。この発見により、当時の恐竜たちの移動ルートや生態がさらに明らかになる可能性がある。

足跡が語る物語

1億6600万年前、現場の環境は暖かく(熱帯)浅いラグーンで覆われていたと考えられる。恐竜は泥の上を歩きながら足跡を残した。

 

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@news_ub - Xアカウントのキャプチャ画像(Picture from Dr Mark Witton)

足跡の配置や形状から、恐竜たちがどのように歩き、相互作用していたのかを知る手がかりが得られている。例えば、竜脚類の足跡と肉食恐竜の足跡が交差している場所があり、そこでは捕食行動や恐竜同士の遭遇が推測されている。

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@news_ub - Xアカウントのキャプチャ画像

特に、ケティオサウルスが立ち止まり、後ろを振り返ったように見える足跡も確認されており、メガロサウルスに追跡されていた可能性が示唆されている。

 

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@BBCNews – Youtubeのキャプチャ画像(Picture from Dr Mark Witton)

足跡の保存状態は非常に良好であり、恐竜の足が泥に押し付けられた際に生じた泥の変形まで観察できるという。これにより、当時のラグーン(潟)の環境や恐竜の動きに関する詳細な情報が得られている。

発掘の意義とは?

今回の発掘は、イギリスの地質学的遺産の重要性を再確認させるものである。特に足跡は残る現場としてはイギリス最大であり、世界でもトップクラスの科学的重要性を持つ。研究チームは、撮影した2万枚以上の写真と3Dモデルを活用し、今後さらに恐竜の行動や生態を解明していく予定である。

 


バーミンガム大学のリチャード・バトラー教授(左から2番目)と研究チームのメンバーたち。

また、今回の発見は一般向けの展示としても注目されている。オックスフォード大学自然史博物館では、今回の発見を題材にした展示が開催される予定だ。この展示では、発掘現場の写真や動画、ケティオサウルスやメガロサウルスの足跡の3Dモデルが紹介されるほか、恐竜の研究に使用された最新技術についても学ぶことができる。

 


オックスフォード大学自然史博物館の館内。自然史好きにはおススメの場所だ。

1億6600万年前の地球に生息していた恐竜たちの生活が、今回の「恐竜ハイウェイ」の発見によって鮮明に蘇った。今後は研究に加え、発見の「保存」についても検討されていくそうだ。

 

【次ページ:動画あり】「恐竜ハイウェイ」を映像で確認!

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動画で見ると、発見の規模の大きさに改めて驚愕する。