時代の寵児となった60年代のボブ・ディランが愛用した、リーバイス®の名作ジーンズ

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
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リーバイス®のベーシックモデルのひとつで、ワークウェアに出自を持つ「505™」とは異なり、モダンなテイストに仕上げられた「505™」。レギュラーストレートシルエットで、股上はほどよい深さで裾に向かってすっきりとシルエットを持つ。素材はコットン99%、ポリウレタン1%。¥14,300/リーバイス®

「大人の名品図鑑」ボブ・ディラン編 #1

ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、エルヴィス・プレスリーらと並び称される比類なきアーティスト、ボブ・ディラン。2016年に歌手として初のノーベル文学賞を受賞し、今年2月には彼を主人公にした映画が公開される。そんな音楽界の“生ける伝説“にまつわる名品を掘り下げる。
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日本で2025年2月に公開されるのが、ボブ・ディランを題材にした映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』だ。1961年、ミネソタからニューヨークにやってきた無名のミュージシャン、ボブ・ディランはフォークシンガーとしてキャリアを積み、瞬く間に時代の寵児となる。しかし5年後の65年。ニューポート・フォーク・フェスティバルのステージに立ったディランは観衆の期待を裏切るかのようにフォーク・ギターをエレクトリック・ギターに持ち替え、ロックなサウンドに乗せた新曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」を披露する。ちなみに映画の英文タイトルはこの名曲のフレーズからの引用だ。本作は、そんなロック界のレジェンドにしてカリスマ、ボブ・ディランの原点である彼の青春期を描いた作品だ。

主人公のボブ・ディランを演じたのはティモシー・シャラメ。『君の名前で僕を呼んで』(17年)で大きく注目され、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(19年)や『DUNE/デューン 砂の惑星』(21年)などのヒット作に次々と出演して、トップスターに登り詰めた。実は劇中の歌声はすべてシャラメによるもの。ボイストレーニングを重ね、ギターやハーモニカまで習得して魂のこもった演技でディランを演じる。

そして、ディランの人生に深く関わるミュージシャン、ピート・シンガー役には『真実の行方』(96年)、『ファイト・クラブ』(99年)などで知られるエドワード・ノートン。ディランの恋人シルヴィ・ルッソ役には『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』でもシャラメと共演したエル・ファニング。シルヴィのモデルになったのはスージー・ロトロと言う女性で、映画の公式資料によれば、「脚本を読んだボブの唯一の要求は、彼女の名前を変えることだった」とある。

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ディランを象徴する、反抗のスタイル

スージー・ロトロは数々のディランの名曲を生み出すきっかけをつくった女性とも言われ、いわば彼の運命の人。そんなスージー・ロトロが登場した名盤がある。「風に吹かれて」など名曲を多数収録する、63年発表の2作目のアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』だ。アルバムのジャケット写真にディランと腕を組み、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジを歩くスージー・ロトロが映っている。この写真でディランはジーンズをはいているが、このジーンズの内側をUの形をしたデニムを継ぎ足して、ブーツを上から履けるようにカスタマイズしたのもスージー・ロトロだと言われている。2年後の64年に発表された4枚目のアルバム『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』のジャケット写真でも、ディランは同じジーンズを履いている。

諸説あるが、ディランが履いたこのジーンズはリーバイス®の「551Z」と言われている。61年に発表されたモデルで、リーバイス®初の防縮加工を施したプレ・シュランクデニムが採用されたジーンズ。1853年、サンフランシスコで誕生したリーバイス®が1950年代後半に東海岸に進出するあたり、洗っても極力縮まないデニムを使い、細身のラインと扱いやすいジップフロントを採用したモデルを開発、これが東部で絶大な人気を呼び、67年には「501®︎」と並ぶアイコンの「505™」を産んだ。いま、ディランを感じたいのならばこのモデルがお勧めだ。ちなみに「505™」もカウンターカルチャーのシンボルとしてラモーンズやザ・ローリング・ストーンズといったミュージシャンに愛用された名作でファンに多い。

映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で衣裳を担当したのは、アリアンヌ・フィリップス。彼女は「初期のディランは、彼の憧れであるウディ・ガスリーの影響を受けている。彼は働く男のような格好をした——格子柄のシャツ、ペンドルトンのジャケット、大工風のジーンズなど。それは当時の大人たちとはかけ離れていた。それ自体が反抗のスタイルとなっていた」と書く。映画の舞台になった60年代、ジーンズは「反抗」の象徴だった。ディランがそれを身に着ければ、なおさらのことだろう。

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リーバイス®の象徴とも言える「ツーホースマーク」が描かれた革製のパッチ。パッチの左下に「505™」とモデルのロットナンバーが刻印されている。

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名品「501®」との大きな違いはフロントにジッパーが採用されていることだろう。「ボタンフライ」に馴染みの薄いアメリカの東海岸地域の人たちに向けにこのジッパーが採用され、「505™」は爆発的な人気となった。

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「505™」はリーバイス®の定番的なモデルで、さまざまな派生モデルが揃っている。右はダークインディゴで赤耳のセルビッジ素材が使われている。左のジーンズのカラーはブラック。ミュージシャン風のスタイルが満喫できる。左:¥12,100、右:¥18,700/ともにリーバイス®

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映画の公開に合わせて、ボブ・ディランの衣装を忠実に再現したスウェードのジャケットやジーンズなどの特別なコレクションが復刻ラインであるリーバイス® ビンテージ クロージングから発売された。映画の衣装を担当したアリアンヌ・フィリップスと協力してディランが愛用したアイテムが製作されたが、ディランの元恋人、スージー・ロトロがカスタマイズしたジーンズのディテールまで再現されている。発売は1月25日から始めっている。ジーンズ¥82,500/リーバイス® ビンテージ クロージング

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映画とコラボした特別モデルのベースになったのがこのジーンズ。モデル名は「1955モデル 501®」。1950年代のバイカースタイルを代表するモデルで、腰回りはあえてフィットさせず、レッグ部分を大きめにカットしたシルエット。未加工のアンウォッシュデニムを使用。¥38,500/リーバイス®︎ ビンテージ クロージング

リーバイ・ストラウス・ジャパン

TEL: 0120-099-501
www.levi.jp

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