スズキの世界的なベストセラー「ジムニー」の5ドア版「ジムニー ノマド」が売れに売れている。1月30日に発表されたった5日間で受注が5万台を突破し、受注停止となったほどだ。「ジムニー ノマド」とは、一体どんなクルマなんだろう。
初代「ジムニー」が発売されて以来、メーカーには5ドアを求める声が多く寄せられていたという。「社内では都度検討があって、今回(5代目)で決定にいたりました」と、スズキ商品企画本部の佐々木貴光チーフエンジニアは言う。
デザイン的に見ると、クロスカントリー型4WDである「ジムニー」には、よくできた歴代モデルがいくつもある。ジープを意識した初代(1970年)、ドイツのターゲットデザインが関わったといわれる2代目(81年)。ともに機能主義をうまく取り込んだデザインで、いまも人気が高い。
2018年登場の4代目も、同じ方向性のデザインを特徴とする。頑強に見えるルックスと、内部から設計したようなパッケージとが、ラダーフレームに前後リジッドというサスペンションを組み合わせた本格的な成り立ちのシャシーと組み合わされている。
機能主義に裏打ちされたデザインは、トヨタの「ランドクルーザー」「レクサスGX」、メルセデスの「ベンツGクラス」、ジープの「ラングラー」といったモデルの人気ぶりからわかるように、マーケットでも大きな存在感を発揮するものだ。
3代目は(少なくともデザイン的には)SUV方向へ振りすぎた感があったが、4代目からのシンプルなカタチは、そこからいい方向へと離れた印象だ。長く続く価値を求めるような市場のトレンドに合致していると感じられる。
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5ドアになっても、まったく違和感がない!
「ジムニー ノマド」は、3ドアの車体に1.5リッターエンジンを搭載する「ジムニー シエラ」をベースにしている。共用するのは、フロントスカットル(エンジンルームとキャビンの間の隔壁)より前。キャビンから後ろは、幅を切り詰めた前席用ドアを含めて、専用設計となっている。
長い前後長を持つルーフと、シエラ同様にほぼ垂直に立ったリアゲート、背負ったスペアタイヤ、目立つオーバーフェンダーといった要素は同じ。太いリアクォーターパネルと、そこに設けられたウインドウが目をひく。
総じての印象は、シエラに対してまったく違和感がなく、シエラの開発時から5ドア化は織り込みずみだったのではないか、と思われるほどだ。
ノマドでは、シエラの2,250mmのホイールベースを340mm延長し、2,590mのロングホイールベースを実現。全長は3,550mmから3,890mmになった。
後席シートも設計し直し、クッションを厚めに。同時に内装にも手を入れ、シエラでは鉄板むき出しだったのに対して、このクルマでは内張りをつけるなど、質感を高めているのも特徴だ。
「ジムニーの性能への憧れを持ちつつ日常生活で使うというユーザーをターゲットに、快適性や居住性の高さを追求して開発しましたが、本格的な悪路走破性というジムニーのコアコンセプトは守って開発しました」と広報担当者は語る。
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開発者のこだわりを感じさせる一台
5段マニュアルと4段オートマチックの変速機を組み合わせた、パートタイム式の4WDのドライブトレイン搭載。走破性能では、36度のアプローチアングルと47度のデパーチャーアングルを持ち、ランプブレークオーバーアングルは25度。
ランプブレークオーバーアングルのみ、シエラの28度に劣るものの、アプローチアングルとデパーチャーアングルは同一だ。しかも、フレームをはじめ、プロペラシャフト、ブレーキ、足回り、いくつかの部品には、ホイールベースを延ばすとともに、補強をしっかり入れ、シエラと同等の性能を確保しているのも、開発者のこだわりだ。
発売は25年4月3日が予定されている。価格は5段マニュアル変速機のモデルで¥2,651,000、4段オートマチック変速機仕様は¥2,750,000だ。
スズキ ジムニー ノマド
全長×全幅×全高:3,890×1,645×1,725mm
ホイールベース:2,590mm
1,460cc 4気筒 パートタイム4WD 4段AT
最高出力:75kW@6,000rpm
最大トルク:130Nm@4,000rpm
乗車定員:4名
燃費:13.6km@L(WLTC)
価格:¥2,750,000
www.suzuki.co.jp