イメージの不確かさを多様な表現で露わにする、ビエンが生み出す実験的な作品群

  • 編集&文:佐野慎悟
Share:

ダークな世界の不気味な匂いが漂う、ビエンが手掛ける作品群。その根幹には、少年時代に見た映画やアニメなどのイラストがあるのだとか。彼が創造する作品世界を紐解く。

現代アートのシーンで、次世代の作家たちが面白い。新時代のアーティスト38名の紹介に加え、足を運ぶべき展覧会やアートフェア、さらに現代アートを楽しむための基礎知識まで話題を広げた、ガイドとなるような一冊。2025年は、現代アートに注目せよ!

『2025年に見るべき現代アート』
Pen 2025年3月号 ¥880(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら

 

TKS-B_物 (7).jpg
FB-ビエン展示.jpg
『PlanetesQue』

家型のボックスを逆さにするとサイコロの出目が決まり、その読み取りによって展示空間の配置が指定される、ボードゲームのような作品。 2023年 インストラクション ミクストメディア photo(上): Takuto Ohta photo(下): Naoki Takehisa

ペインティングをはじめ、インスタレーション、インストラクション、彫刻、映像など、メディアを問わず自由な創作活動を行うビエンは、観察者のパースペクティブに依存する、物事の形状や情報の脆弱性に着目して作品を制作している。そのイマジネーションの根底にあるのは、少年時代に見た映画やアニメ、ポスターやコミック・小説などのイラスト。特にホラーやファンタジー作品からの影響が大きいというだけに、ビエンの作品には、時にダークな世界の不気味な匂いが立ち込めている。

「子どもの頃に学校の図書館で見た江戸川乱歩の少年探偵シリーズや、ゲゲゲの鬼太郎の妖怪、和田誠による星新一作品の装丁などが好きでした。その頃から漠然とイラストや絵を描く人がかっこいいと思うようになり、自然と自分でも絵を描くようになりました」

FB-TKS-D_F82A3041z.jpg
FB-TKS-E_R0030782.jpg
『Green Green Grass of Home』

部屋の中心に置かれた謎の物体を来場者がデッサンし、その正体について思索を巡らせることで、普段の景色を見直すことを促す作品。 2022年 インストラクション ミクストメディア  photo: Shusaku Yoshikawa

ビエンの創作活動が本格化したのは、東京・千代田区にあったANAGRAというアートスペースに出入りするようになってからだという。

「そこには僕も含め、他に仕事をしながら活動をしている作家たちが多く出入りしていて、自由でインディペンデントな雰囲気で、自分らしく活動をするのには最適な場所でした」

その頃から絵画だけに固執せず、多様なメディアを駆使するようになったビエンだが、基本となるコンセプトは常に一貫しているという。

「社会と広く共有し、主観的に認識したつもりになっているイメージが、少し角度を変えただけでも、全然違うものに見えてくる。そういう脆弱で不確かなものを、その都度、最適と思われるフォーマットで表現しています」

TKS-A_スクリーンショット 2024-12-17 23.39.21.jpg

ビエン
アーティスト

1993年、東京都生まれ。2018年に初個展「WOOZY WIZARD」(BLOCK HOUSE、東京)を開催。多様なカルチャーの文脈を取り入れた、ダークなアプローチが特徴。

www.instagram.com/bien_jap/

Pen0128売_表紙_RGB.jpg

『2025年に見るべき現代アート』
Pen 2025年3月号 ¥880(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら