VRやAR、ゲームの世界がもはや現実世界と地続きになった現代。山内祥太は、その更新されるリアリティ、また人間の存り方を探求するように作品制作を展開する。ひと目見ただけで脳裏に焼きつくような、インパクトのある作品を発表し続ける彼が目指す表現とは?
現代アートのシーンで、次世代の作家たちが面白い。新時代のアーティスト38名の紹介に加え、足を運ぶべき展覧会やアートフェア、さらに現代アートを楽しむための基礎知識まで話題を広げた、ガイドとなるような一冊。2025年は、現代アートに注目せよ!
『2025年に見るべき現代アート』
Pen 2025年3月号 ¥880(税込)
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代表作の『舞姫』では、現実世界のパフォーマーの身振りに同期するように、仮想空間上の肌色のゴリラのような生き物が動く。映像とパフォーマンスが融合したこの作品は、もはや“転生”などしなくても人は異世界で別の生物として生きられる可能性を示唆するが、それがグロテスクで人間以上に生々しいのも意義深い。『カオの惑星』は鑑賞者参加型の作品で、心理テストのような質問に答えていくと、それに応じてネット上にカオ(顔)が出来上がる。笑ったり泣いたり、それぞれ自我を持つカオ。それは別の参加者のカオと合体し、キメラのようになっていくが、最終的には消滅してしまうシニカルな作品でもある。
「身体性」も山内作品の重要なキーワードだ。「コロナ禍に思ったのは、最後に自分の拠り所になるのはやはり自分の身体であること。これまでも作品づくりにおいては、自分の身体を使ってバーチャルな世界にどう折り合いをつけられるのかを考えてきましたが、最近は特に身体が発する匂いや体内に潜む菌など身体の内側にも興味が広がっています」
昨秋に発表した『結晶世界』では、人間の毛穴から湧き出る菌のようなものが、金の結晶となって身体を包み込んでいく奇妙な世界を見せた。1月19日まで山口情報芸術センター(YCAM)で上演していた新作もまさに「体臭」がテーマ。他者の汗を採取し、そこに生息する常在菌をバイオ技術で増殖。そうしてできた“未来の体臭”を体感させるインスタレーションとパフォーマンスを行った。
「脱毛や脱臭など、近年、身体から余分なものを消し去ろうとする傾向がありますが、人間にとって匂いは重要なコミュニケーションツールでもあるわけです。それをなくそうとする社会はなにに向かうのか、そこに生きる人間をいかに表象できるのか。いまはそこに興味があります」
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