現代アーティスト・山内祥太がテクノロジーと身体を使い探求する、人間の存在とリアリティ

  • 写真:斎藤誠一
  • 編集&文:松本雅延
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VRやAR、ゲームの世界がもはや現実世界と地続きになった現代。山内祥太は、その更新されるリアリティ、また人間の存り方を探求するように作品制作を展開する。ひと目見ただけで脳裏に焼きつくような、インパクトのある作品を発表し続ける彼が目指す表現とは?

現代アートのシーンで、次世代の作家たちが面白い。新時代のアーティスト38名の紹介に加え、足を運ぶべき展覧会やアートフェア、さらに現代アートを楽しむための基礎知識まで話題を広げた、ガイドとなるような一冊。2025年は、現代アートに注目せよ!

『2025年に見るべき現代アート』
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『舞姫』

パフォーマーの動きに画面上のゴリラのような生き物がシンクロするインタラクティブなアート。それは人とテクノロジーとの「ある種の恋愛模様でもある」と山内。 2021年 映像、パフォーマンス サイズ可変 photo: Tatsuyuki Tayama  Courtesy of Terrada Art Award

代表作の『舞姫』では、現実世界のパフォーマーの身振りに同期するように、仮想空間上の肌色のゴリラのような生き物が動く。映像とパフォーマンスが融合したこの作品は、もはや“転生”などしなくても人は異世界で別の生物として生きられる可能性を示唆するが、それがグロテスクで人間以上に生々しいのも意義深い。『カオの惑星』は鑑賞者参加型の作品で、心理テストのような質問に答えていくと、それに応じてネット上にカオ(顔)が出来上がる。笑ったり泣いたり、それぞれ自我を持つカオ。それは別の参加者のカオと合体し、キメラのようになっていくが、最終的には消滅してしまうシニカルな作品でもある。

「身体性」も山内作品の重要なキーワードだ。「コロナ禍に思ったのは、最後に自分の拠り所になるのはやはり自分の身体であること。これまでも作品づくりにおいては、自分の身体を使ってバーチャルな世界にどう折り合いをつけられるのかを考えてきましたが、最近は特に身体が発する匂いや体内に潜む菌など身体の内側にも興味が広がっています」

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『結晶世界』
J・G・バラードの同名のSF小説をモチーフに、人間が金に包まれていく世界を映像と彫刻で表現した。純金工芸ブランドSGCとの協業作品でもある。 2024年 映像、彫刻 サイズ可変  photo: Hiroshi Tanimoto

昨秋に発表した『結晶世界』では、人間の毛穴から湧き出る菌のようなものが、金の結晶となって身体を包み込んでいく奇妙な世界を見せた。1月19日まで山口情報芸術センター(YCAM)で上演していた新作もまさに「体臭」がテーマ。他者の汗を採取し、そこに生息する常在菌をバイオ技術で増殖。そうしてできた“未来の体臭”を体感させるインスタレーションとパフォーマンスを行った。

「脱毛や脱臭など、近年、身体から余分なものを消し去ろうとする傾向がありますが、人間にとって匂いは重要なコミュニケーションツールでもあるわけです。それをなくそうとする社会はなにに向かうのか、そこに生きる人間をいかに表象できるのか。いまはそこに興味があります」

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『カオの惑星』

質問に答えていくとカオが生まれるゲーム性も備えた作品。写真は『MAMプロジェクト030×MAMデジタル:山内祥太』(2022-2023年、森美術館)での風景。 2022年 映像インスタレーション サイズ可変 photo: Keizo Kioku

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『汗と油のチーズのように酸っぱいジュース』

嗅覚アーティストのマキ・ウエダと共創した山内初の舞台作品。“匂い”をテーマに、観客から集めた汗から香水をつくり、公演中に舞台に振りまいていく。 2023年 パフォーマンス サイズ可変 photo: Tomoki Moriya  Courtesy of KYOTO EXPERIMENT

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山内祥太
アーティスト

1992年、岐阜県生まれ。2016年、東京藝術大学大学院を修了。国内外の美術展や芸術祭に参加。『TERRADA ART AWARD 2021』で金島隆弘賞・オーディエンス賞を受賞している。

www.instagram.com/shota__yamauchi/

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