ネオンをモチーフに、背後にある配電線、フレームまで克明に描く「ネオン」シリーズなどで知られる横山奈美。昨年は、グッチとのコラボレーションでヴィンテージバッグに作品を描いたことでも注目を集めた。そんな彼女はなにを思い、考え、描くのか。
現代アートのシーンで、次世代の作家たちが面白い。新時代のアーティスト38名の紹介に加え、足を運ぶべき展覧会やアートフェア、さらに現代アートを楽しむための基礎知識まで話題を広げた、ガイドとなるような一冊。2025年は、現代アートに注目せよ!
『2025年に見るべき現代アート』
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暗がりに浮かぶ光が、誰もが知っているシンプルな言葉を放つ。写真と見紛う鮮烈なイメージは油彩による絵画だ。1986年生まれの横山奈美は、自身でデザインしたネオン管をモチーフに、眩いガラス管とともに、背後でそれを支える無骨な配電線やフレームをも精緻に描く、トロンプルイユのような作品で注目を集める。
「西洋美術史を土台に絵画を描くことに疑問を感じ、日本の絵画史や身の回りの物事に着目するようになりました。初期作では自分の文字や線を自画像のように描いていました。言葉の意味や解釈を掘り下げるほど意識外の表現に関心が生まれて、この数年は多様な境遇の人々に書いてもらった文字を作品化しています」
身近な人たちからインドや中国など旅先で出会った人まで、彼らの肉筆の文字が筆跡の癖まで忠実に再現され、文字のかたちで背後に隠れた仕組みも血管や骨格のように変化する絵画は、他者の言葉と身体のポートレートでもある。
「以前は心のモヤモヤしたゆらぎを見つめる写経のような行為として絵画を追求していました。ワンフレーズの言葉の強靭さに出合い、他者が介入する偶然性の面白さを知ってから、絵を描くことだけに飽き足らず、見たことのない場所や人とのコミュニケーション込みの絵画を超えた領域に惹かれています。絵画に動かされて、想像を超えた地点にいることが不思議です」
光そのものが物質感を与えられること、そして、捉えどころのない抽象的な言葉が身体性を取り戻し立体物として現れることが見る人を動揺させるからだろうか。横山の描くネオンの肖像画はひと目で惹きつけられ、気を逸らさない作品世界を持っている。
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