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俳優の長澤まさみが「アリかも、BYD!」と、無邪気にCMで言っているのを耳にするたびに「アリでしょ。BYD」と応えていた。個人的なファーストインパクトは、スポーツセダンの名前が「シール(アザラシ)」だったこと。アザラシですよ。もう、めまいがするほどの圧倒的な愛らしさを感じられたんだ。
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走り出した瞬間、助手席でさえ電撃が走ったね。某転職エージェントのCMばりに「スゴいな! BYD」と驚いたんだ(笑)。想像していたよりはるかに上質で、実際に運転してみると、よりその違いがわかるものだった。街乗りから高速道路、峠のワインディングまでドライブモードを変えなくとも、適時ほどよく減衰力を変えてくる。
このダンパーは周波数感応式ダンパーと呼ばれていて、路面の凹凸やステアリングの動きから発生するサスペンションの周波数に反応して減衰力を変える。これまであった電磁油圧式の可変ダンパーほど大きな違いは出せないものの、穏やかに減衰力を変えてくるので可変を意識させず、とても自然なのね。街中や高速のゆったりとした柔らかい足まわりの印象のまま、ワインディングも難なくこなせる。---fadeinPager---
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ここで愛すべきアザラシらしさが本領を発揮するんだけど、恐ろしいほど車体剛性が高いのね。「シール」はCTB(セル・トゥ・ボディ)といって、フレームにバッテリーを組み込んでいてバッテリーそれ自体が車体剛性を高めるフレームになっている。言えばカッチカチに硬いアザラシであり(笑)、街中のカーブでも閃くようにフレームの強さを伝えてくる。さらに峠に行けば、剛性の高さに由来する天性のクイックネスをもって楽しいハンドリングを提供してくれる。
BYDがBYDたる所以であるバッテリーには、LFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーを使用しているんだけど、低コストで安全性に優れ、寿命が長い。さらに満充電でも劣化しないメリットが挙げられるものの、主流であるNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)バッテリーよりエネルギー密度が低いため、同じ性能を出そうとするとより体積が大きくなり必然的に重くなってしまう。
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このAWDモデルで重量は2.2トンですよ。ほぼ中型のSUVの重さで、重量は前もって警戒していたポイントにも関わらず、乗ってみると「あれ!?」と拍子抜けしたんだな。軽快とは言わないまでも、こっそり廊下を駆け抜ける砲丸投げ選手のような(笑)、EV特有の重厚感や仰々しさは皆無。“海象(セイウチ)”を想像していたら、意外となかなかの“海豹(アザラシ)”ぶりだったみたいな感覚ですよ(笑)。その理由はまず固めてこない臨機応変な足まわりにあるし、「シールAWD」の一番のセールスポイントである、類まれなる高馬力にある。
大事なところなのでもう一度言おう。このクルマのセールスポイントは、システム最高出力530馬力のデュアルモーターによる高馬力ですよ。なにがいいって、追い越し車線を走り去る欧州系高級セダンがまるで気にならないのね。いつでも我がアザラシのひと踏みで無限の彼方に置き去りにしよう、みたいな余裕があるんですよ(笑)。なるほど。そりゃ昨今の中国で中国車が売れているのもわかる気がした。欧州系高級セダンの向こうを張るという意味では、我が国における伝説の国産セダン、トヨタ・セルシオを思い出したよね。
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そして実際のところ速いんだけど、その出力特性は驚くほど控えめなんだ。どれだけ控えめかといったら、メルセデスやアウディといった欧州穏やか系EVのさらに上をいく穏やかさなのね。特に自動追従時にETCゲートを過ぎて、速度回復するときなんかの加速は尋常じゃない穏やかさですよ(笑)。減速の回生ブレーキも穏やかだし、あまり電力を回収している気がしない。ワンペダルドライブも無理なので、不満をあげるならそこだった。
今後の傾向としては、自動追従なんかのクルマそれ自体に判断がゆだねられている場合の走りは穏やか制御。速く走らせるようなリスクをかけるところは「ご自分でどうぞ」というような、自動運転化社会を示唆する傾向も観てとれた訳。システムの冗長性を保つために高出力型が先行するから、エンジンならますますハイブリッドが前提になっていくんだろうな、とも思った。
もはやEVのみならず普通のクルマでも、「500馬力は当たり前」という時代が来ているってことなのかも知れないね。
BYD シール AWD
全長×全幅×全高:4,800×1,875×1,460mm
モーター:かご形三相誘導モーターおよび永久磁石同期モーター
システム最高出力:529PS
最大トルク:670Nm
駆動方式:四輪駆動
バッテリー総電力量:82.56 kWh
航続距離:575㎞(WLTCモード)
車両価格:¥6,050,000
問い合わせ先/BYD 公式HP
https://byd.co.jp/