創業134年のワイナリーが醸す、飲み応えのある日本産オレンジワイン「2023ルバイヤート甲州醸し」【プロの自腹酒 vol.27】

  • 文:山内聖子
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
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丸藤葡萄酒工業/2023ルバイヤート甲州醸し

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自社管理の畑で育てた遅摘みのブドウを使用し、野生酵母で発酵。上槽後はコンクリートタンクとオーク樽、ステンレスタンクなど数種類のタンクで熟成させている。夕日を思わせるオレンジの色調が美しく、グラス映えもいい。心地よい渋みも感じられる豊かな味わいで、肉料理や揚げ物にも負けない飲み応えがある。スモークサーモンのような少しクセのある料理も難なく受け止めてくれるのが魅力だ。720mL ¥2,750/丸藤葡萄酒工業 TEL:0553-44-0043

かつては味噌問屋であった遠藤利三郎商店。味噌蔵だった倉庫をワインが楽しめる本格ビストロへと改装し、人気店へと育て上げるとともに、数々のワインスクールで講師も務めるほどワインを愛してやまないのが、遠藤利三郎さんだ。20歳でワインの魅力に目覚め、愛飲歴は40年以上。日本のワイン業界でなくてはならない存在だが、「未だに先生と呼ばれるのはしっくりこない。あくまでもただのワイン好きであり、いち飲み手であり続けたい」と言う。

日常的にワインを嗜む、そんな遠藤さんが毎年ケース買いするほどお気に入りなのが、オレンジワインの「ルバイヤート甲州醸し」。昭和の中頃以降に一旦途絶えた「半醸し」という昔ながらの製法を、約6年前に復活させた丸藤葡萄酒工業のテーブルワインである。

「約5年前です。とあるワインの試飲会で出合い、おいしいのはもちろんのこと、甲州でもオレンジワインをつくっていると自体が面白く、惹かれました。甲州ワインというとスッキリと爽やかなイメージが強いと思うのですが、このワインはしっかりと果実味があり、ボリューム感があるタイプ。それでいてきれいでクリーンな口当たりが魅力です」

味幅が広いため、合わせる料理を選ばず家庭料理や普段の晩酌向きだと教えてくれたが、特に遠藤さんがおともに薦めるのが王道の鶏の唐揚げ。味つけはシンプルに塩味で、仕上げにレモンをギュッと搾って食べるのが好みだとか。

「ワインはただのアルコールではなく、生産者の想いを飲むものです。グラスの向こう側につくり手の顔を思い浮かべながら飲むのが最高なんです。その至福の瞬間を味わいたい一心で、日々仕事を頑張っています」

日本の家庭料理に合う日本ワイン。幸せに一日を締めくくるために、常備したい一本だ。

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熱々の鶏の唐揚げには、ワインの五味が好相性

ワインのクリーンな酸味が鶏の唐揚げの脂をほどよく流し、豊かな果実味を余韻に残す。互いにおいしさを高め合う組み合わせ。「カレー粉を効かせてもおいしい」とのこと。

遠藤利三郎

もともと味噌問屋だった先代の倉庫をビストロ&ワインバーに改装し人気店に。J.S.A.認定ソムリエでもあり、日本輸入ワイン協会会長も務めるなど特に日本ワインの普及に尽力。

遠藤利三郎商店

住所:東京都墨田区押上1-33-3
TEL:03-6657-2127

※この記事はPen 2025年2月号より再編集した記事です。