ラグジュアリーホテルの開業が相次ぐ京都。2024年8月には、タイやインドネシアをはじめとする世界各国で、その土地に根付いたリトリートを展開するバンヤンツリーが初上陸した。場所は東山エリアの老舗「ホテルりょうぜん」の跡地。市内を一望できる自然豊かな高台に位置し、徒歩圏内には清水寺や高台寺、坂本龍馬などを祀る京都霊山護國神社といった歴史的な名所が集まる。
ホテルのテーマは“幽玄”。古くからあの世とこの世を隔てる結界のような場所とされてきた霊山(りょうぜん)の地にちなみ設定された。隈研吾をデザインアーキテクトに迎え、各分野のプロフェッショナルと協働し、その世界観を表現している。
隈が手掛けた外観は、シンボリックな大庇(おおびさし)やルーバーが整然と並ぶ深い軒など、伝統的な木造建築の意匠を随所に取り入れたシックな佇まいが特徴。この建築とともに幽玄の世界を体感できるのが、市内のホテルとしては唯一備える能舞台だ。裏手に広がる緑豊かな竹林と溶け合うように、視線を通すルーバー状の部材のみで構成。舞台そのものが水盤の上に浮かぶ姿は、まさに神秘的だ。
天然温泉を用いたスパ施設もあり、高低差がある敷地に臨む竹林や能舞台、京都の街並みなど多様な景色を楽しめるのも魅力。奥深い山に抱かれた静謐な場所で、特別な時間を過ごしたい。
バンヤンツリー・東山 京都
住所:京都府京都市東山区清閑寺霊山町7番地TEL:075-531-0500
全52室
料金:セレニティ・キング/ツイン ¥170,000~
www.banyantree.com/ja/japan/kyoto
【デザイン】隈 研吾
1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。東京大学特別教授・名誉教授。自然と技術と人間の新しい関係を切り開く建築を提案。世界中でプロジェクトが進む。本建築ではデザインアーキテクトを務めた。
※この記事はPen 2025年2月号より再編集した記事です。