「東京にしか創れないニットを世界に発信する」という、ミッションを掲げるプロジェクト、「東京ニット」。最先端のクリエイションが集まる地のものづくりを紹介する。
日本におけるニット産業発祥の地は、東京だということをご存じだろうか? 現在も墨田区本所界隈には200あまりのニット関連事業者が存在し、日本のアパレル産業の礎を担っている。その始まりは江戸時代に遡る。泰平の世に刀を捨てた武士たちが、江戸の東部で手編みの靴下や下着といったメリヤス製品をつくりはじめ、その後、明治時代の殖産興業政策によって、この地はニット産地として大きく発展した。それから長い時を経て、受け継いできたニット技術や伝統を次世代へとつなぎつつ、さらなるイノベーションを促すために、新しいものづくりのプロジェクトとして立ち上がったのが、この東京ニットである。
江戸川区に自社工場を構えるカットソー製造工場の谷繊維。原料や糸、生地編立、染色、裁断、縫製、仕上げを一貫対応し、「メイド・イン・トウキョウ」の服づくりを続けている。用いる機械にもこだわり、ヴィンテージの特殊ミシンも多数取り揃える。
集積された技術と価値を、東京から世界へ発信する
東京ニットは、東京ニットファッション工業組合によって運営される。品質はもちろん、技術力、提案力、顧客対応力、人材育成などの厳しい基準を設けた企業認証制度を実施しており、現在35社が認証企業に名を連ねる。さらに、こうした企業認証とは別に、優れた品質と技術を保証する商品認証制度も整え、ブランドの価値を国内外にアピールしている。
「東京は、多種多様なニーズとそれに応えるための技術が、歴史的に集積してきた土地です」と語るのは、東京ニット認証企業のひとつ、「キップス」の田中康雄だ。それに頷く「ズーム」の加々村征も、「無理難題を乗り越え、前衛的なアイデアをかたちにしてきた経験の裏には必ずイノベーションがあり、そこに東京ニットの強みがあると思います」と語る。
たとえば東京ニット認証企業である谷繊維では、60年代のヴィンテージミシンを用いたクラフツマンシップあふれるものづくりで、海外からも高評価を受けるプレミアムなスウェットウエアを製作。
横編み製品の製造を行う川島メリヤス製造所では、ドイツ製や日本製の横編み機を備えた国内最高峰の設備の中で、日本のファッションシーンを牽引する数々のブランドのコレクションを手掛ける。
また、丸和繊維工業ではインディペンデントなデザイナーたちそれぞれの要望に小ロットで応えつつ、規模が拡大すれば地方の工場で量産するなど、数々のブランドの成長を見守ってきた。
こうしてさまざまな個性を持った35社の認証企業が手を取り合い、東京でしかできないニットづくりを続けている。世界から注目される東京のファッションを支えつつ、東京ニットが描く未来に、興味は深まるばかりだ。
川島メリヤス製造所には、縫製なしで一着丸ごと編み上げるホールガーメントの編み機など、最新設備が揃う。
丸和繊維工業は、OEM事業と自社ブランドを手掛けるカットソー専門の縫製企業。デザイナーズブランドのサンプルづくりなど、デザイン性の高い小ロットの仕事を請け負う。自社ブランドでは、人間の皮膚の研究から生まれた特許技術「動体裁断」を用いて、動きやすさを追求したアイテムを展開。
東京ニットファッション工業組合
TEL:03-3633-5601
https://tokyoknit.jp/contact