レクサスの電動化技術で無限に広がる、 クルマに乗る楽しみ

  • 写真:筒井義昭
  • 文&編集:Castro Toshiki (c3ec-creations)
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左から、RZ ステア・バイ・ワイヤ仕様、RZ450e “F SPORT Performance”、RZ、マニュアル BEV、AE86 BEV Concept。

BEVと過ごす時を豊かにしてくれる、新体験やサービス。そして、電動化における技術研鑽により、新たな価値提言をおこなうレクサス。多様化する“新様式”にBEVで応える、レクサスらしいクルマづくりとは?

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クルマ屋”らしく、五感に訴える楽しさとワクワクを忘れない、レクサスらしいクルマづくり

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【井藤進矢/LE開発部部長】音や振動、エンジンサウンドづくりを中心とした車両性能開発に約10年従事。当時の代表作は「レクサスLC」。現在はAE86 Conceptの車両改造を筆頭に、クルマを操る楽しさに注力し、最新技術のBEVへの応用を手がけている。

「クルマは電動化が進むことでコモディティ化する」——そんな風潮が漂う自動車業界において、独自性を発展させ、新しい可能性に挑戦するのがレクサスだ。BEV(電気自動車)における豊かなライフスタイルを提案する一方で、ハード面においては、電動化が進むからこそ実現する技術を独自に研究開発し、新たな体験価値の創出を図っている。多様化するニーズに応えるレクサスのBEVらしさとはなにか、掘り下げてみたい。

「クルマ屋らしいワクワクを忘れないクルマづくり。BEVでも、五感で感じられることを我々レクサスは大事にしています」

そう語るのは、LE開発部の井藤進矢部長。BEVにおいても、レクサスらしいクルマをつくっていきたいと続ける。

「BEVの大きな特徴であるリニアな応答性を、専用プラットフォームとともに造り込んだのが第1弾『レクサスRZ』。快適性や静粛性、質感、操作や操舵など、研究と開発に多くの時間を費やし、徹底的にレクサスらしさにこだわりました。ドライバーの思いどおりにクルマが素直に反応してくれる。いわゆる“対話ができるクルマ”で、これはBEV以前から、レクサスが大事にしているクルマづくりの根幹なんです」

井藤は、“クルマ屋”にこだわるレクサスだからこそ、電動化はむしろ大きな武器になるという。

今回は、こうしたレクサスの技術開発を象徴するモデルに試乗する機会を得た。BEV市販モデルと、プロトタイプや試作車の計5台が群馬県・榛名山に集結。現行のRZ450eに加え、航空機の空力技術を採用したRZ450e“F SPORT Performance”。そして、今後、市販化を目指す「ステア・バイ・ワイヤ」を搭載したRZ。さらには、操る楽しさを追求した「マニュアルBEV」も。とりわけ目を引くのは、「AE86 BEV Concept」だろう。

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榛名湖を駆けるAE86と、AE86に積まれたレクサスのバッテリー。スピーカーから4A-Gエンジンサウンドが流れるが、聞こえるのはドライバーのみで外部ではいたって静か。「エンスト」のような感触まで忠実に再現。「見た目は86のまま、中身を完全電動化。こうした技術により、旧車を未来に残せていけると考えています」と井藤部長。
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車名ロゴの「EV」が強調されるなど、各部の意匠に遊び心がくすぐられる。モーターの出力はAE86のエンジンと同等で、NX450h+のバッテリーを搭載。AE86の持ち味を活かすためBEV化の際はオリジナルの状態を残す努力がされた。

 

レクサスBEVについてはこちら

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クルマ好きとともに歩む、カーボンニュートラルへの道

「走り屋、そして愛車の代名詞であるAE86をBEVにコンバートしました(笑)。車体はそのまま活かし、エンジンを電気モーターに載せ替え、バッテリーはレクサスNX450h+(PHEV)から流用してみたんです」。開発の根底には「クルマ好きを誰ひとり置いていきたくない」という豊田章男会長の言葉があったという。

「近い将来、古い愛車もバッテリーEVにコンバートできる。旧車の電動化により、文化と価値を後世に残せるようになる。そういった取り組みに繋げるつもりです」

新車だけをBEVにしても、その先のカーボンニュートラルの実現には結びつかない。いままでのクルマ好きオーナーを取り残さず、一緒にカーボンニュートラルを目指そうという姿勢だ。

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9-cut5_005.jpg運転状況や路面の状態に応じて前後の駆動力をコントロールする四輪駆動力システム「DIRECT4」を搭載したRZ450e。低速時にはクイックに、高速時にはスローに。従来よりも操舵の切れ角は少なく、最大切れ角で操舵可能。「ハンドル操作の概念を刷新した、新しいBEVレクサスの「ステア・バイ・ワイヤ」、市販車への導入も間もなく実現します」(井藤部長)
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従来(右)は、ステアリングホイールへの入力はシャフト(軸)を介して物理的に伝えられるが、ステア・バイ・ワイヤ(左)では電気信号がワイヤを介しモーターを駆動することにより操舵を行う。

〝クルマ屋〞レクサスの最新BEVを一気乗り!

まずは、AE86BEVコンセプトを試乗。このクルマには至るところにレクサスならではの技術が宿るというが、そのひとつに、五感に響くサウンドづくりへのこだわりがある。タイトなバケットシートで楽しむ高回転の4A−GEU擬似サウンドは、まさにその象徴。しかもクラッチ操作が多少イージーでもエンストはしないうえ、エンストしそうなあのブルブルとしたギリギリの挙動まで、見事に再現されている。

また、クルマの未来を彷彿とさせるのが、開発中のRZステア・バイ・ワイヤ仕様だ。ドライバーの操作が電気信号となり、ワイヤを介し、前輪を操舵するモーターへと送られる。角度のキツいスラロームも手首の動きだけで簡単に曲がることができ、すぐに操作にも慣れる。運転に心地よいリズムが生まれ、実に小気味良い走りを体感できる。狭い駐車枠でも、取り回しがとにかくいい。こうした優れた制御も電動化技術の大きな特徴。この技術は、近い将来の実用化を目指し、いままさに最終調整が行われているという。

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ソフトウェア制御のみでマニュアルトランスミッションの挙動をBEVで再現。特にユニークなのは、実際の「LFA」のエンジンから収録したV10サウンドに切り替える機能。エンストの挙動も忠実に再現されている。「マニュアル操作で操る体験を、制御で切り替えながら楽しむことができる技術を開発しました」と井藤部長。
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UXのコクピットに3ペダル&MTシフトを追加。収録されたLFAのV10サウンドを設定して、高揚感ある刺激的な走りを楽しめる。

マニュアルBEVも見逃せない。これはマニュアル操作で運転できる先行試作のBEVで、トヨタ セリカGT-FOURの直列4気筒エンジンやレクサスLFAのV10エンジンの咆哮を擬似音で再現するが、空ぶかしだけで再現度の高さに感心させられた。一方、擬似音を切った静かな状態での運転では、音の情報のない状態でMT操作する難しさを実感。人間は無意識に五感で車両状態を把握し、あらゆる操作を自然に行っているのだと気づかされる。

「カーボンニュートラルに向けた電動化技術を駆使しながら、将来は走りや乗り味、エンジン音まで、オンデマンドでセッティングを変え、試せるようになる。電動化の楽しみ方は、発想次第で自由自在です。リアルとバーチャルが融合したような体験も、BEVを媒介としてクルマを操る楽しさの幅を広げていけるんです」と井藤部長はその可能性に期待をかける。

クルマの使われ方が変わっても、ワクワクするクルマづくりに挑む“クルマ屋”としての姿勢は揺らがない。BEVにおける新しい挑戦に向けて、レクサスは着実に歩みを続けている。

レクサスBEVについてはこちら

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左から、
◾️RZ ステア・バイ・ワイヤ仕様:レクサス独自の革新的ステアリングシステム「ステア・バイ・ワイヤ」を搭載。従来のように円形のステアリングホイールをぐるぐる回さず、中立付近から左右に最大200度まで切るだけで、車両の取り回しが可能に。

◾️RZ450e “F SPORT Performance”:国内限定100台(すでに完売)の特別仕様車。パワーユニットはそのままに、エアレース・パイロットの室屋義秀とレーシングドライバーの佐々木雅弘とともに、空力性能と走行性能を強化。BEVの走る楽しさを広げる。

◾️RZ:BEVを進めるブランド、レクサス初のBEV専用クロスオーバーモデル。電動化技術を活用した、ドライバーの意図に素直に応える、レクサスならではの乗り味を実現している。

◾️マニュアル BEV:MTの楽しさをBEVでも追求した試作車。UX300eのパワースペックはそのまま、6速MTのシフトと足元にアクセル・ブレーキ・クラッチの3ペダルを追加。収録されたエンジン音で走りの高揚感も盛り上げている。

◾️AE86 BEV Concept:クルマ好きが愛してやまないAE86レビンをベースにした1台。実際にクラッチを通してモーターの駆動力を制御する。ボディや車重の軽さ、前後重量配分を維持しながら、レクサスの技術でBEVに仕立てている。

レクサス/インフォメーションデスク

TEL: 0800-500-5577(9時〜18時※年中無休)

 

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