アイツのGがエレクトリック !? デジタルサウンドで結末は「はっぴいえんど」【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】第214回

  • 写真&文:青木雄介
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ブルーをアクセントにしたインテリア。中央にオフロード系の専用操作スペースがある。

ほぼカタチを変えずに45年。メルセデスのGクラスは相変わらずの人気ぶりですよ。「そんなGクラスもいつかは電動化か……」とぼんやり考えていたXデーは意外に早く来た。そのEV、「G580」は現行モデルのフレームを流用して、外観はほぼそのまま。運転した感触も間違いなくGクラス。アクセルを踏んだ感じはV8の「G63」に似ていたけど、バッテリー搭載位置による低重心化が効いていてオンロードの身のこなしはとてもよくなっていた。

個人的にGクラスのEV化とは、デジタルサウンドが有機的なバンドサウンドを再現しつつ、クリエイションの無限さを武器にさらに進化したって印象。たとえるなら、日本のバンドサウンドの極北に立った「はっぴいえんど」からテクノユニットYMOを結成した細野晴臣氏が、デジタル機材で「はっぴいえんど」を進化させたらこうなるんじゃないか、みたいな(笑)

もとより峠に行く気は起きないクルマだったけど、このGクラスはワインディングを走るのがめちゃくちゃ愉しかった。ドライブモードを「スポーツ」にしてアクセルを踏み込むといい感じで、スススっと抜け感が出てくるのね(笑)。デジタル信号でそれぞれ4つのモーターを駆動させるので微細な精度でトルクをコントロールできるし、峠だってステアリングをフラットに保ってくれる。この「G 580」の目玉機能である、オフロードで車体をその場で最大2回転できるG‐TURNは、まさにモーター独立制御のトルクベクタリングの成せる技。

1.jpg四輪独立モーターを備え、渡河水深が850㎜と大幅に高くなった。

各輪のモーターの駆動トルクを個別に制御することで、後ろタイヤを中心に旋回1回転することができるG-STEERINGも含めて、EVでしかありえないコントローラブルな走りがオフロード性能を高めている。ギミックとして、SNS映えするマーケティング的な狙いが大きいとは思うものの、メルセデスが「EV化の最大のメリットはオフロード性能の向上」と言っている点は深く頷かされた。そしてこのクルマは、長年愛され続けてきたGクラスらしさにも磨きをかけた。---fadeinPager---

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エンジンルームにはG-ROARと呼ばれるV8サウンドを奏でるスピーカーが内蔵。 

背筋を伸ばすようにして座り、一段高い視座からボンネットをとらえ、三人称視点の重機かモビルスーツを運転する気分でアクセルを踏む。ハンドルは重く、ゆれ方も威厳たっぷりで自信に満ちている。サウンドはゴロゴロとV8エンジンを模した音とバイブレーションがあって、足まわりはタイヤが圧着するようにぬらぬらと路面をなぞる。

とても上質な乗り心地だし、全然ゆるくないのよ。トルクニュートラルのコースティングを意識しつつ、このクルマでハンドリングにアクセルを調和させるワンペダルドライブをする面白さはスポーツカー的。思わず「めっちゃハードコア……」と唸ったわけ。 

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伝統のラダーフレームに大容量バッテリーを組み込むことで車両の低重心化を実現。

だからこそ「Gクラスでなければいけない」というG党にこそ、この「G 580」を薦めたい。歴代Gクラスがつないできた乗り味が、エレクトリックによって深まり進化しているのを感じるはず。Gの代名詞、ウォーレン・Gにこじつければ新しい「Gファンク・エラ(時代)」の始まり始まりって感じかな(笑)

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背面はスペアタイヤに代わりデザインボックスになり充電ケーブルが格納されている。

メルセデス・ベンツ G 580 with EQテクノロジー エディション1

全長×全幅×全高:4,730×1,985×1,990㎜
モーター:交流同期式×4基
最高出力:587PS
最大トルク:1,164Nm
駆動方式:4WD
航続距離:530㎞(WLTCモード)
車両価格:¥26,350,000~
問い合わせ先/メルセデスコール
TEL:0120-190-610
www.mercedes-benz.co.jp

※この記事はPen 2025年2月号より再編集した記事です。