スイス構成主義の精神を持つ、デザイナーと芸術家夫妻――『Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン』展が開催

  • 文:河内タカ(アートライター)
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チューリッヒにて。 1965 年頃 Copyright and courtesy of the Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation

スイスを代表するグラフィックデザイナーでタイポグラファーのヨゼフ・ミューラー=ブロックマンと、彼のパートナーであり芸術家の吉川静子のふたりの作品と軌跡を紹介する展示。ミューラー=ブロックマンといえば、スイス・スタイルとも言われる「インターナショナル・タイポグラフィック・スタイル」の代表格であるとともに、「グリッド・システム」を生み出した人物。これは文字通り、グリッドに従い安定した文字組みとレイアウトをするデザイン手法であるが、紙媒体だけでなく、いまではウェブデザインの基本中の基本ともなっている。また、音楽を抽象的な図形で表現したことでも知られ、なかでもチューリッヒのコンサートホールで開催されたコンサート用ポスターは、幾何学的パターンや色彩によって音楽を視覚化するように表現。旋律や動的なリズムが感じられる緊張感のあるデザインは、世界的にファンが多い。 

ミューラー=ブロックマンは実は日本との関わりが深く、1960~80年代にかけて複数回来日している。亀倉雄策とも親交を持ち、大阪芸術大学やデザイン学校で教鞭を執って日本のデザイン教育に貢献した。一方の吉川は、ドイツのウルム造形大学に留学しデザインを学んだ後、ミューラー=ブロックマンの事務所で働き、彼と結婚。その後チューリッヒを拠点にコンクリート・アート芸術家として晩年まで制作を続け、太陽をテーマとした絵画やシルクロードをテーマとした作品を手掛け、2019年に亡くなった。  

吉川の没後初の本展は、構成的なデザインが特徴のミューラー=ブロックマンの作品と、グラフィックデザインおよび幾何学的抽象芸術の両方の精神を持つ吉川の代表作が展示され、ふたりの生涯と作品を追体験できるものである。

『Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン』

開催期間:~2025/3/2
会場:大阪中之島美術館
TEL:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)10時~17時 ※入場は閉場の30分前まで
休館日:月曜日、12/31、1/1、14、2/25 ※1/13、2/24は開館
料金:一般¥1,700
https://nakka-art.jp

※この記事はPen 2025年2月号より再編集した記事です。