1.BREGUET(ブレゲ)
タイプ 20 2057―ミリタリーバージョン
1955~59年にフランス空軍に納入された1100本のモデルからのインスパイア。従来の「タイプXX」と異なり、名称にはオリジナルと同じアラビア数字の「タイプ 20」を採用した。ミントグリーンの蓄光針や、3時位置の30分積算計が9時位置のスモールセコンドより大きいアシンメトリーなデザインが特徴的。毎秒10振動の高精度ハイビートムーブメントはフライバック機能も装備。
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2.BLANCPAIN(ブランパン)
エアコマンド
ブランパンが1950年代に製造したパイロット向けモデルにインスピレーションを得たデザイン。特徴的な「ボックス型ガラス」をサファイアクリスタルで再現した。ヴィンテージ感を強調するカムフラージュグリーンは、メゾンのマニュファクチュールがあるジュウ渓谷のモミの木を連想させる。毎秒10振動のフライバッククロノグラフを搭載。
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3.LONGINES(ロンジン)
ロンジン スピリット フライバック
クロノグラフとパイロットウォッチの両分野でパイオニアであるロンジンから、フライバック機能搭載のツーレジスタークロノグラフの新色が登場。アビエイターウォッチの伝統的な特徴を取り入れながら、時計製造の最先端テクノロジーと融合させた、ヒストリカルデザインの最新鋭機。ムーブメントには耐磁性のあるシリコン製ヒゲゼンマイを備え、COSCのクロノメーター認定を取得。
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最近のパイロットウォッチでは、水平にふたつの積算計を配置した「ツーレジスター」機のデザインをよく目にする。往年の名機のリバイバルやインスパイアでは、この一択といっても過言ではないだろう。12時間積算計を廃したヒストリカルな佇まいはいまむしろ新鮮で、ヴィンテージデザインとラグジュアリーなスポーツウォッチの魅力が積層されている。
パイロットクロノグラフの最進化形が3つ目であることは間違いない。各ブランドで採用された稀代のベストセラー・縦3つ目キャリバーであるバルジュー(ETA)「7750」への差別化として、多くのマニュファクチュールは自社製クロノグラフムーブメントを下3つ目のレイアウトで設計することを好んだ。その先の成果として、6時位置の12時間積算計を外すだけで横2つ目が成立する。進化の果てにクラシカルなツーレジスターに回帰する、といった逆説的な流れはなんとも興味深い。
ノスタルジー重視ではなく、フライバック機能を搭載した高級モデルの多さも注目に値するだろう。ワンアクションでリセットとリスタートを行う機能は、操縦桿を握る手で素早い計測を要求されるパイロットのためのものだ。
そもそも飛行機の黎明期、クロノグラフには30分積算計があれば十分であった。1909年、世紀の大冒険と謳われた初のドーバー海峡横断飛行は、飛行時間36分55秒で達成されている。30分計に切り詰めた機能は、飛ぶことに無上のロマンがあった時代の、間違いない痕跡なのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。近著に『ロレックスが買えない。』。※この記事はPen 2025年2月号より再編集した記事です。