グラフィックデザイナーでアートディレクター、菊地敦己の個展が開催中だ。青森県立美術館やPLAY! MUSEUMなどのビジュアルアイデンティティや、ミナ ペルホネンなどのファッションブランドのアートディレクション、そして装丁において印象的な表現で注目されてきた菊地。それと同時に、実験的なグラフィックデザインを発表する展覧会でも高い評価を得てきた。本展では改めて菊地のデザイン思想の一端に触れられる。
会場は1階および区画をふたつに分けた地階、計3つの空間に異なるインスタレーションが展開されている。1階では、白地に黒の線と色を示す文字のみで構成された新作グラフィックが整然と配置されている。そうかと思いきや、作品の裏側へ回り込むと、文字の代わりに明快な色が配された面が現れる。同等の情報を持ちつつも異なる表面を持ったグラフィックの二面性に、単純ながらも新鮮な驚きをおぼえるだろう。
「グラフィックデザインは、役割として瞬間的に情報を伝えるためにつくっているので、本来ならばじっくりと鑑賞するような空間的な展示には向かないと思っています。そこであえて、平面の中に奥行きのレイヤーを生む仕組み――、つまりグラフィックデザインに内在されている“構造”を立体的な視覚体験として見せることで、壁から空間へとグラフィックデザインが広がるような状況をつくろうと試みました。地階では、グラフィックが持つ質量や時間性、そして方向性・物質性を示す構造が見えるような展示で構成しています。『平面上の空間』と『空間上の平面』との関係性を感じてもらえれば」と菊地は話す。
展示空間に身を置くことで、これまで無意識だったグラフィックの構造に気づかされる体験ができるに違いない。
『菊地敦己 グラフィックデザインのある空間』
開催期間:~2025/2/1会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
TEL:03-3571-5206
開館時間:11時~19時
定休日:日曜日、祝日、12/27~1/6
www.dnpfcp.jp/gallery/ggg
※この記事はPen 2025年2月号より再編集した記事です。