のどかだったケニアの村に、巨大な金属製の物体が宇宙から飛来。住民たちは突然の爆発音に恐怖を感じ、一部の人々はいまだに眠れぬ夜を過ごしているという。
物体は現地時間12月30日の午後、轟音と共に落下した。リング状で歯車のような形をしており、直径は人間の背丈よりも大きい。色はムラのある暗褐色だ。落下地点はマクク村付近の樹木が生い茂る一帯で、けが人などは現時点で確認されていない。
ロイター通信は、当局が実施した初期段階の調査の結果、物体の重量は1000ポンド(約453キログラム)超、直径約8フィート(約240センチメートル)に及ぶことが判明したと報じている。
専門家らは、ロケットの打ち上げによって生じた宇宙ゴミである可能性が高いとみている。破片の回収と分析にあたったケニア宇宙機関(KSA)のアロイス氏は、「金属製のリング状の形をした宇宙物体の一部で、おそらくロケットの分離段階のものである」との見解を示している。
大気との摩擦で生じた熱により、落下直後は高温になっていたとみられる。ユーロ・ニュースによると地元住民らは、物体は「赤く、熱かった」と証言している。
「爆発かと思った」住民が語る落下の衝撃
この地域の住民であるジョセフ・ムトゥア氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、「牛の世話をしていたら大きな爆発音が聞こえた。車の事故かと思い道路沿いを確認したが、事故は見当たらなかった」と当時の状況を語る。
ムトゥア氏はまた、ケニアのNTVニュースチャンネルの取材に、「爆弾かと思ったが、何もかもわからず、ただここに落ちてきた」と当時の混乱を振り返る。「もし物体が民家に落ちていたならば、大惨事になっていただろう」とも語っている。
別の住民のポール・ムシリ氏は、地元テレビの報道陣に対し、「この物体が落下して以来、私たちは眠れていない。誰もが何が起きているのか不安に思っている」と恐怖を語る。ムシリ氏は加えて、物体の所有者は土地所有者に対して補償を行うべきとの私見を示した。
現時点で落下物による死傷者は確認されておらず、重大な物的損害も生じていないという。だが、今回のような落下事故のリスクを懸念する声が専門家の間で広がっている。
欧州宇宙機関の上級宇宙ゴミ低減アナリスト、スティン・レメンス氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、「現在、(宇宙ゴミに関する)対策の導入は遅れており、問題が拡大している」と警告する。
昨年も相次いだ宇宙ゴミ問題
2024年3月には、国際宇宙ステーションから約730グラムの破片が落下。フロリダの住宅の屋根を貫通した。同年4月にはさらに、スペースX社のカプセルに由来する大型の金属片が、カナダの農場で発見されている。
スウィンバーン工科大学の宇宙物理学者サラ・ウェブ氏らの分析によると、地球の低軌道上の物質量のうち、約3分の1が宇宙ゴミであるという。ニューヨーク・タイムズ紙は、少なくとも4インチ(約10センチ)以上の物体が4万500個以上軌道上に存在し、さらに小さな破片は数百万個に上るとの分析を取り上げている。
こうした破片が人工衛星と衝突すれば、壊滅的な被害を引き起こす可能性がある。衝突によって新たなデブリが生まれ、連鎖的反応(ケスラー・シンドローム)に至る恐れがある。
KSAは今後の対応方針を策定するため、すでに本格的な調査に着手している。ロイターによると同機関は、「この宇宙物体の所有者を特定し、宇宙条約に基づき国際法の下で責任を追及する」との方針を示している。
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