わたしたちのリアルな生活環境やカルチャーが投影されたクリエイティブな服に出会うと、「こんな服を着たかった!」と心が踊る。こうした日本の風土に根ざすデザイナーズの2025年春夏コレクションを眺めて印象的だったのが、青の色出しに力が入れられていたこと。ベテランから若手まで、深い青の表現に強さを感じた。
街の主流派である黒い服からの反動、人気が復活したブルーデニムに合う服への関心の高さ、暑い夏に快適な色選びなどが背景にあるのかもしれない。全身ルーズなカジュアルからすっきりした服装に一歩踏み出したいトレンド気分にも、クリーンな青がフィットする。
ここにピックアップした掲載アイテムは、自身の名を冠したパーソナルな服づくりのスズキタカユキ、シンヤコヅカ、ダイリクのもの。キラキラした輝きを持つドレッシーな装飾性にも共通点がある。背筋を伸ばして着たい大人のワードローブだ。
suzuki takayukiの、大自然の青
天然由来の素材と染色のバランスを長年探り続けるスズキ タカユキ。19世紀のビンテージから先端モードまでが融合する、味わい深さとスタイリッシュさとが両立するブランドだ。今季に打ち出されたメインの色は、様々なバリエーションで展開される青。なかでも特別に美しい傑作が掲載のブルゾンである。
光沢のある生地の上に、青系の植物が舞い踊っている。花のモチーフは樹木に密集して咲く小花のハシドイ。現実には白い花の色を変化させている。スカジャンと呼べる服ながら、ハードな不良っぽさは感じさせない。着物のように上品な和の空気をまとう。
ジェンダーレスデザインで、男性でも女性でも図案が優しく着る人に馴染む。着心地もふわりと軽い。シルエットは時代に左右されないベーシックだ。大自然から着想されたアートと、生活服とのバランスが絶妙な一着である。
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SHINYAKOZUKAの、芸術家イヴ・クラインの青
東京でのショー発表ごとに小塚信哉デザイナー個人の想いがメディアで語られるシンヤコヅカ。その作家性が言及される一方で、生活服としての実用性や着回し力が優れていることはあまり流布されていないようだ。旬の時代感に満ちつつ服好きの大人も夢中にさせるワードローブなのである。
今季コレクションで数多く展開されたのが、芸術家イヴ・クラインが好んだ「イヴ・クライン・ブルー」の色使い。赤みがあり、紫がかったディープな青。ロイヤルブルーとも呼べるシンヤコヅカのアイコニックな色が、今シーズンはいつも以上に充実している。
ここに掲載するバギーパンツがその青。厚手のニット素材で太く柔らかく、足を蹴り出して歩きたくなる軽快な服。ウエストをしっかりと安定させ、ポケット裏地も頑丈な素材でフロントにはファスナーつき。イージーなルックスでも仕立てに抜かりはない。
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DAIRIKUの、映画から着想した青
岡本大陸デザイナーが手掛けるダイリクには、古着+トレンドの独自のバランスがある。その作風が若い層の心をがっちりと掴み、レトロな映画を題材にしたコンセプトが大人層に響く。東京ファッション・ウィークでのユニークな発表方法も話題が尽きない次世代ブランドだ。
映画『2001年宇宙の旅(ア・スペース・オデッセイ)』らのSF映画から着想した今季に青の服が多いのは、宇宙とのリンク発想なのだろう。掲載のセーターのメタリック刺繍の着想元は宇宙船内部の計器類、あるいは映画後半に船長がトリップしたときの映像かもしれない。
古い映画の世界を現代的な服に落とし込むのがダイリクのセンスだ。ニットは身体に沿う短いウエスト丈で、バギーパンツと相性バツグン。光輝くキラキラ感も男性の装いを新しくする。いま着たい服のエッセンスがこの1着のなかに凝縮されている。
suzuki takayuki
www.instagram.com/suzukitakayuki_atelier/
https://esseism.com/
SHINYAKOZUKA
www.instagram.com/shinyakozuka/
DAIRIKU
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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