創業者が生み出した「旅の真髄（こころ）」の精神をいまも忠実に継承するルイ・ヴィトン。旅にインスパイアされた歴史にオマージュを捧げ、それを象徴するトランク製造のデザインコードを取り入れたユニセックスなコレクション「エスカル」から、新作の限定モデル「エスカル オトマティック プラチナ ブルーエナメル」が登場した。

熟練の職人による伝統的な技法と最新技術を組み合わせて造られた「エスカル オトマティック プラチナ ブルーエナメル」。直径39mmのケースは、細部を見れば見るほどため息の出る美しさで、まさにアートピースそのものだ。

中でもその芸術性がわかりやすいのは、ハンドメイドのダイヤルだろう。ここにはギョーシェ装飾と、シャンルべとフランケの2種類の技法を使ってエナメルを仕上げるグラン・フー・エナメルが施されている。

技能の異なる4人のアルチザンの技術を結集した製造過程は、繊細な作業の連続だ。まずは純金製のディスクをエッジに沿って彫り込みながら、わずかに盛り上がった縁をつくっていく。そして、縁で囲んだセンター部分に、ローズエンジンと呼ばれる装飾を描くための手動の旋盤を使って、放射状のギョーシェ彫りを行っていく。これは18世紀から基本的に変わらない装飾技法だ。

盛り上がったエッジとギョーシェの境目部分を美しく彫りあげるのは特に難しく、経験豊富なギョーシェ職人が熟練のテクニックを駆使して仕上げていく。

そして、このギョーシェ彫りの窪みの部分に、色ガラスを細かく粉砕したエナメル顔料と水や油を巧みに混ぜ合わせた塗料を塗っていき、エナメル加工を施す。これはシャンルべと呼ばれる技法で、実は表側だけではなく、焼成中の文字盤の変形を防ぐために裏側にもカウンターエナメルと呼ばれる淡い色合いのエナメルが塗られているのだ。

その作業が終わると、800℃以上のオーブンで焼成し、溶かしたエナメルを純金製のダイヤルの土台と融合する。この塗装と焼成の工程は、望ましいダイヤルの色合いと仕上がりになるまで繰り返し行われる。その結果、半透明のエナメルから美しいギョーシェ彫りが透けて見えるダイヤルが完成。この手法はフランケエナメルと呼ばれ、20世紀初頭のヨーロッパで流行したもの。そして、完璧な鏡面に仕上げるために、ダイヤモンドのペーストを優しく重ねると、エナメルダイヤルはほぼ完成する。

最後に3、6、9、12時のアワーインデックスを、エナメルダイヤルに一つひとつリベットで留めるのだが、これが難題。繊細なエナメルにリベットを留める穴を開けるのはほぼ不可能なのだ。そこで登場したのが精密なレーザー。これを使ってダイヤルを焼くことで、ひとつのインデックスにつき3個、合計12個の穴を開けることに成功。焼成エナメル上にリベットで留められたアワーマーカーを備えた、特別で個性的なダイヤルが完成した。

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ちなみに各インデックスは、ニードルの形をした時分針と同様に18Kホワイトゴールド製。ただし、秒針は速い動きを踏まえて軽量のチタン製となっている。ケースは本体に加えて、ルイ・ヴィトンを象徴するトランクの角から着想を得た特徴的なリベットホーンに至るまですべてがプラチナ製だ。

ケースバックからは、オリジナルの自動巻きキャリバー「LFT023」を眺めることができる。そして、ケースバックに取り付けられたローズゴールドのプレートには、シリアルナンバーの刻印が施され、この番号が自分だけの証となる。

まさに微に入り細に入り、手の込んだ技法が詰まった一本。「エスカル オトマティック プラチナ ブルーエナメル」は、ダイヤル、キャリバーともにルーペでディテールを鑑賞したくなる、小さいけれど見応えたっぷりのアートピースなのである。

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