ベストセラーから待望の新型! フォルクスワーゲン「ティグアン」試乗記

  • 文:小川フミオ
  • 写真:フォルクスワーゲン・ジャパン
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フォルクスワーゲンのベストセラー「ティグアン」。スポーティなスタイルを特徴とするこのSUVがフルモデルチェンジして、2024年11月に日本発売された。期待以上にスポーティな走りが印象的なモデルだ。

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「eTSI」と「TDI 4MOTION」のトップグレード「R-Line」は大型エアダムを備える。

フォルクスワーゲンは、デザイン的を見ると、興味深いブランドである。グループ内には、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレーなど、日本でもよく知られたプレミアムブランドが並ぶ。

全く異なる市場を相手にしているが、興味深いのは、どのブランドも、それぞれのデザインアイデンティティを大事に継承していること。ランボルギーニですら「(74年の)クンタッチに始まるデザインテーマを外れないようにしている」(デザインディレクターのミティア・ボルカート氏)というぐらいだ。

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24年11月末に来日した際にインタビューに応えるランボルギーニのボルカート氏。

フォルクスワーゲンについても同じことが言えるのではないだろうか。日本でも「ID.4」が販売されているバッテリー駆動のピュアEVの「ID.(アイディー)」シリーズではグリルレスのフロントマスクなどを持つが、それでもフォルクスワーゲン車であることがすぐわかる。---fadeinPager---

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「ゴルフ」からフロントマスクのデザインアイデンティティを引き継いでいる「ID.3 GTX」。

最近では、このデザインコンセプトをさらに推し進めて、ミニバンの「ID.BUZZ(アイディーバズ)」や、現在開発中のコンパクト「ID.2 all(オール)」は、これまでのフォルクスワーゲンのデザインとのつながりをより強く感じさせる傾向がある。

「ティグアン」についても同様だ。このクルマが魅力的に見えるのは、「ゴルフ」や「ポロ」といったハッチバックとの共通性をうまく取り込んだデザインゆえだろう。

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「ゴルフGTI」の現行モデルが発表されたときVWデザインが発表したフロントマスクのデザインのコンセプト。

フォルクスワーゲン自身が、自社のプロダクトのデザインをごくシンプルに図案化している。グリルは一本の平行線で、その中央にエンブレムを表す小さな円が備わる。両端には吊り目の矩形ヘッドランプ。全体の輪郭は台形で、タイヤが強く踏ん張るスタンスも特徴的だ。

先のランボルギーニのボルカート氏は「よいデザインをつくるためには、デザイナーがそのブランドの大ファンにならなくてはならない」と語っている。新型ティグアンは、その言葉を思い出させるクルマだ。

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「ティグアン」はSUVカテゴリーだけれど乗った印象はスポーティなハッチバック。

イタリアの自動車メーカーのデザイナーは、「ドイツは改良はうまいけれど、独創性では弱い」などと評するが、デザイン上の大きなジャンプは、これまで「セアト」や「クプラ」といったスペインで展開(欧州で販売)するブランドで試している。フォルクスワーゲンはブランドについての確固たる考えを持っているのだ。---fadeinPager---

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クプラの「レオンエステート」はいまのところ日本での発売予定はない。(写真:Cupra)

「ゴルフ」や「ポロ」といった伝統的なスタイルのハッチバックはいまも人気だけれど、SUVに眼がいきがちなドライバーのために、すこし高めの全高と長めの前後長をもったルーフの「ティグアン」は、若々しいイメージを新たにつくることに成功している。

日本に導入されるのは、大きくいって2つのモデル。マイルドハイブリッドエンジン搭載の「eTSI」と、ディーゼルの「TDI 4MOTION」だ。ハイブリッドは前輪駆動で、ディーゼルは4輪駆動。どちらも「Active」「Elegance」それに「R-Line(アールライン)」と3グレード設定だ。

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「R-Line」は20インチの大径ホイールと組み合わされたタイヤを装着。

私が乗ったのは「eTSI R-Line」。1.5L4気筒ガソリンエンジンに、発進や加速のときにトルクを積み増すスターター/ジェネレーターの小型モーターが組み合わされている。

これまでにドイツでディーゼルエンジンの「ティグアン」に乗ったことがあったが、ガソリンのマイルドハイブリッドは、箱根近辺が初めて。ひとことで印象をいうと、期待以上に痛快、というものだった。---fadeinPager---

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高速もカーブも大得意な「ティグアンeTSI R-Line」。

まずエンジンがよく回る。よどみなく上まで回転が上がっていくに連れて、ぐんぐんとトルクが出てきて、その相乗効果でドライブしていると気分爽快だ。

サスペンションシステムの設定は、すこし硬めだけれど、そのぶんハンドリングがよくて、カーブを曲がるときはさっと車体の向きを変えるし、車体が大きく傾く感じもない。軽快なフットワークだ。

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クロームをアクセントに使って外観をひきたてている。

20インチ径のロードホイールと組み合わされた255/40プロファイルのタイヤのおかげもあるだろう。ハンドリングはしっかり感があり、カーブを曲がるのが大得意という印象だ。

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新型「ティグアン」は物理的コントロール類が減って大型モニターで多くの操作をおこなう。

「eTSI R-Line」は「プログレッシブステアリング」といってハンドルを回すときの速度によって舵角が変わる機構をそなえる。ゴルフGTIで初導入されたシステム。

加えて「DCCプロ」という電子制御ダンパーも標準装備。ダンパーの二つの働きである”伸び”と”縮み”において個別にバルブを設けて、ダンピングの働きの自由度を上げ、スポーティに走るときも快適に走るときも、ともに適切な足の動きの実現をめざしている。---fadeinPager---

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空間的余裕がたっぷりある後席。

もうひとつの魅力はパッケージング。全長4,540mm、全高1,655mmと、日本でも扱いやすいサイズでありつつ、車内は前後席ともに空間的余裕がある。後席に175cmの男性がふたり並んで座っても余裕だ。荷室容量は652Lといい、荷物がたくさん積めるのは、これこそライフスタイル・ビークルと呼ぶのにふさわしいと思った。

ドイツが得意としてきた機能主義は、いまもきちんと機能している。かつ、エンジンをあきらめていないのにも感心した。日本のメーカーも、こんなに力強くて活発な1.5Lエンジンがつくれないものか。

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自動車デザイン界では「イースターエッグ」と言われる遊びで「ティグアン」では車名の由来でもあるタイガーのプリントが。

シリンダーマネージメントシステムといって、低負荷時は気筒休止システムが働く。そのため燃費もリッターあたり15.6kmと、優れている。

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写真の「R-Line」はオプションのレザーシート装着車。

シートもクッション性がよく、同時にからだを支えてくれるので、カーブを曲がるときなども、ドライバーは安定した姿勢でいられる。

ボディサイズと室内の関係や、荷室の大きさや、燃費。これらもクルマにとって重要な”デザイン”といってもいいのではないだろうか。

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大きな荷室による機能性も確保されているのがフォルクスワーゲンの魅力。

クルマのデザイナーが、自分たちの仕事を“スタイリスト”と呼ばれるのを嫌うのは、単に見栄えのいい工業製品を手掛けているだけじゃないという自負ゆえだろう。それを改めて思い出した。

価格は、今回乗った「eTSI R-Line」が¥5,889,000。ベースモデルの「同アクティブ」が¥4,871,000円、「同エレガンス」が¥5,470,000となる。一方、ディーゼルの「TDI 4MOTION」は「アクティブ」が¥5,619,000、「エレガンス」が¥6,218,000、「R-Line」が¥6,532,000となる。

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「ティグアン」の車名を構成するもうひとつの動物イグアナのアイコンもみつかる。

フォルクスワーゲン ティグアン eTSI Rライン

全長×全幅×全高:4,540×1,840×1,655mm
1,497cc4気筒ガソリン+電気モーター マイルドハイブリッド 4WD
最高出力:110kW(エンジン)+13.5kW(モーター)
最大トルク:250Nm(エンジン)+56Nm(モーター)
車重:1800kg
燃費:15.6km@L(WLTC)
価格:¥5,889,000
問い合わせ先/フォルクスワーゲン・ジャパン
www.volkswagen.co.jp