近年、日本酒が世界から注目を集めているのはご存じの通り。蔵元の世代交代や技術革新などにより、これまでになかったタイプの銘柄が続々登場。ラベルのデザインもスタイリッシュなものが増え、ジャケ買いならぬ、ラベル買いしたくなるようなボトルも増えている。
そんな中、2024年秋に海外からのいわば逆輸入の形で日本に上陸したラグジュアリーな日本酒ブランドがある。名前はHEAVENSAKE。2016年にフランスで誕生し、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを中心に世界14カ国で展開してきた銘柄で、満を持してついに本国ともいえる日本での販売を開始した。
HEAVENSAKEの特徴は、シャンパーニュ造りからインスピレーションを得て取り入れたアッサンブラージュにある。アッサンブラージュとは、フランス語でブレンドを意味する言葉で、ワイン造りの際に原酒を混ぜ合わせる伝統的な技法のこと。これを日本酒造りに取り入れた。
製造を手がけたのはフランスの著名なシャンパーニュ醸造家であり、アッサンブラージュの神と崇められるレジス・カミュ氏。果たして、どんな味わいの日本酒を目指したのだろうか? 来日したレジス氏に話を聞いた。
HEAVENSAKEを造るにあたり、レジス氏はまず100種類近い日本酒をテイスティング。結果として、ワインのような味わいの日本酒を目指すことに。
「8℃から10℃くらいを適温とし、ワイングラスに注ぎ、色、香り、味わいのすべてを堪能できるような新しい楽しみ方のできる日本酒を造りたいと思いました」
アロマはフローラルやフルーティー、味わいはフルーティーでフレッシュ、さらにはミネラル感があって長い余韻が残るもの。そして、シルキーなテクスチャーをイメージして、レジス氏はHEAVENSAKE造りに着手した。
そして、レジス氏の指揮のもと、複数の蔵元がHEAVENSAKEの銘柄造りに挑んでいく。
「各蔵元の方にはアッサンブラージュのために複数の異なる日本酒をテイスティングさせてほしいとお願いしました。そこから理想の香りや味わい、テクスチャーをそれぞれもたらしてくれる日本酒を選び出し、パズルを組み立てるように配合していったのです」
HEAVENSAKEに使われている日本酒は3銘柄から最大でも6銘柄。それらの配合の割合を決めるために多い時で30回以上のテストを行い、ついにこれまでにないタイプの日本酒が完成した。
素晴らしいのは、1+1が2ではなく、遥かに大きな数字になることだと話すレジス氏。最終的にいずれの銘柄も求めていた味わいにキチンと仕上がり、蔵元の人も“アッサンブラージュすることで既存の日本酒がこんな風に変わるのか!”と驚いた。
今回、日本で展開されるHEAVENSAKEは2種類で、新澤醸造店の「レーベルノワール 純米大吟醸」と佐浦の「レーベルオレンジ 純米大吟醸」。いずれも老舗の蔵元によるものだ。
レジス氏から見たそれぞれの特徴とは?
「ノワールは芳醇であると同時にフレッシュさも感じる日本酒です。オレンジは例えるなら英国紳士のよう。すごくキチっとしていて、真っ直ぐな味わいに仕上がっています。おそらくそれぞれの蔵元の個性が味わいに反映されているためではないかと思います」
食事との相性はどうだろうか?
「HEAVENSAKEは、鮨や刺身などの日本食に合わせるだけでなく、個人的には甲殻類や白身の肉、チーズとのマリアージュにもトライしてもらいたいと思います。特にチーズはロックフォールやフルム・ダンベールなど青かび系のタイプと相性がいいです。あとはお好みでいろいろなお料理に合わせて、自分だけのマリアージュを発見していただけたら」
ワインのような味わいを目指して造られた日本酒だけに、さまざまな料理と積極的に合わせてみると、HEAVENSAKEのポテンシャルをより引き出せるだろう。
「シャンパーニュでもそうですが、飲むシーンが喜びに満ちていることが私の理想。HEAVENSAKEも自由にいろいろな楽しみ方をしていただけたら嬉しいです」
そう話すレジス氏。既存の日本酒のイメージにとどまらず、新たなシーンを演出してくれるのが、フランス生まれの日本酒、HEAVENSAKEなのだ。
HEAVENSAKE