ロサンゼルスで現地時間12月13日、年次ゲーム表彰イベントの「The Game Awards 2024」が開催された。大型タイトルの表彰と並んで、会場では2006年に日本のカプコンから発売されたPlayStations 2向けタイトル『大神』の18年越しの続編製作が、サプライズ発表されている。
この瞬間、ライブストリーミングを中継配信していた世界のゲーム配信者たちは、「まさか…大神? でも、ありえない…。でも…」と複雑に表情を変化させ、驚きから顔をくしゃくしゃにした涙へと豊かな反応を見せている。心を打たれた彼ら・彼女らの反応が話題だ。
「あれっ、司会の人、泣いてる…?」
この日、ロサンゼルス・ビーコックシアターの会場に詰めかけたゲーム業界関係者や報道陣を前に、カナダ人ゲームジャーナリストでTV司会者のジェフ・キーリー氏は、MCとしてつつがなくイベントを進行。
しかし、肝心のゲーム・オブ・ザ・イヤー発表を前に「さて、(本イベントで)最後となる、特別なアナウンスがあります」と切り出したキーリー氏は、笑顔を保ちながらもどこか緊張した面持ちを見せる。それまでの楽しげなムードから一転、涙をこらえ声をうわずらせた。
「(イベント10周年の)記念となる今回、ほとんど無理だと思われていた魔法のような出来事が起きました」と切り出すキーリー氏。「これまでならば、きっと可能性すらないと思われていたようなことです」と続ける。
彼が「私はゲームを心の底から愛していますし、もしも皆さんもそうなのだとしたら……。この瞬間を、私たち皆で迎えましょう」と声を詰まらせながら言葉を紡ぐと、別拠点からイベントへのリアクション動画を配信していた元IGN所属のゲーム配信集団「イージー・アライズ」のイスラ・ヒンク氏は、「言葉に詰まってない!?」と名司会の珍しい反応を指摘する。
徐々に明らかになる新作の正体
キーリー氏の興奮の理由は、すぐに明らかになった。会場の照明が落とされると、ステージに設置された大太鼓が和風のリズムを奏で始め、ステージ中央の特大スクリーンではティザー動画の上映がスタート。オーケストラが加わり、徐々にムードを盛り上げる。
動画冒頭のシーンでは、夜明け前のおどろおどろしい森を、1匹の“獣”が駆け抜けてゆく。画面はあえて暗く保たれ、その姿はよく見えない。ゲーム配信者のエヴレイ氏は、「『バイオレンスキラー』続編? 違うと思うけど」など予想を口にしながら戸惑う。
さて、“獣”が森を抜けて草原に出ると、一転して雄大な光景に。山の合間から朝日が昇り、周囲を黄金色に染めてゆく。「大神に似てるね……。うん、大神に似ている」とエヴレイ氏はつぶやくが、外れを承知でとりあえずコメントした、といった表情だ。
「震えが止まらない!」胸高ぶらせる配信者たち
はたして彼女の予想は当たっていた。純白のオオカミのような姿が大写しになり、その背中に「神器」と呼ばれる炎の輪が燃えさかると、PS2向けタイトル『大神』の続編ティザーであることが明らかに。
オオカミの姿をした主人公で太陽神のアマテラスが地平線へと駆けてゆき、BGMはいつしか、18年前にゲーム曲として別格のクオリティと称えられた『太陽は昇る』に移り変わる。
ティザー動画を硬い表情で見守っていたが、エヴレイ氏は、背中の神器を目にしたその瞬間にすべてを悟ったようだ。息を吸いながら口をあんぐりと開け、驚愕から笑顔へと複雑に顔を変化させながら「ハハーッ」と言葉にならない声を上げる。愛おしげな笑みをたたえて画面を見つめながら口元を両手で押さえ、むせかえりそうになりながら目を潤ませた。
「震えが止まらない、小さい頃にずっとやってたの!」と叫ぶように続けたエヴレイ氏は、本題のゲーム・オブ・ザ・イヤーの発表に進行が移ったあとも、しばし『大神』愛を語る。
同時刻、ポルトガル・リスボンから生配信していた配信者のフィッシュ氏は、当初は『ゴースト・オブ・ヨウテイ』の最新予告動画と思ったようだ。だが、アマテラスの姿を目にした途端、画面を凝視し胸に両手を当てたまま「大神、大神、大神!!」と連呼する。
勇壮なBGMが響くなか、「えっ、えっ!?」と混乱し、天井を仰ぎ、鼻をすすり涙を拭いながら「こんなに何年も経って!?」と笑顔が止まらない。
諦めていた続編がついに…
数あるリアクション動画のなかでもひときわ話題となったのは、配信者でコスプレイヤーのスキッジ氏だ。食い入るように動画を観ていた彼女は、アマテラスが映し出された瞬間、目を見開き口を大きく開けて驚愕する。
「もしや……」といった表情で大神にいち早く気づいた彼女だが、『太陽は昇る』に合わせて神器がアマテラスの背に結ばれると、確信に変わったようだ。のけぞり、両手で口を覆いながら、両目だけは画面に釘付けだ。
声もなく、目元も口元も泣きそうなほど歪ませながら、ただただ感極まった表情を浮かべ身体を震わせる。ゲームプレイを象徴する丸印が筆で描かれると、幼い日のプレイの思い出が一度に蘇ったのだろう。身を乗り出し、泣きそうな目をしながら、あごが外れるのではないかというほど口を全開にする。
しばしば配信者画面に流れるコメントを追い、ファンと驚きを共有した彼女は、そのまま額に手を当て、こみ上げる喜びを噛みしめた。動画終盤、既存作のディレクションを担った神谷英樹氏の続投が明らかになると、スキッジ氏は両手をぶんぶんと回して喜びを表現する。
ファンの反応は本人に届いた
『大神』完全新作のゲームディレクターを担う神谷氏は、ソーシャルメディアのXで、この反応動画に心打たれたと明かしている。ファンの喜ぶ姿が直接、ゲームディレクターへ伝わる結果となった。氏の名前が動画で大写しになると、ゲーム・アライズの面々ものけぞり、「おー!??」と大きく反応している。
大昔の名作の復活は、古くからのファンにも完全に不意打ちだった。続編の報せをついに聞くことのなかったファンもいる。ある視聴者はYouTubeコメント欄で、「4週間前、妹が亡くなった。大神は妹のお気に入りのゲームだった。動画を観て、少し泣いた。妹よ、君のためにプレイするよ」と綴る。
ゲーム体験は、プレイヤー自身の幼少期の体験の一部となり、何年経っても消えない思い出となって強く心に残る。18年以上ぶりに叶ったアマテラスとの再会に、心を震わせた海外ゲームファンは多かったようだ。
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