俳優・野村康太「浮世絵の着物の絵柄や色の使い方は、いまでもすごく参考になる」、『動き出す浮世絵展 TOKYO』の見どころは?

  • 文:はろるど
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名古屋やミラノなどの国内外にて好評を博し、現在、東京・東品川の寺田倉庫 G1ビルにて開催中の『動き出す浮世絵展 TOKYO』。展覧会にあたり、俳優としてブレイクし、モデルとしても活躍中の野村康太がアンバサダーを務めている。その野村に展覧会や浮世絵の魅力をはじめ、今後、俳優として演じたい役柄などを聞いた。

9つのデジタルアート空間にて浮世絵の世界に没入!

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「動き出す浮世絵展 TOKYO」展示風景、寺田倉庫 G1ビル、2024〜2025年

『動き出す浮世絵展』とは、葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川国貞といった、江戸時代を代表する浮世絵師の300点以上の作品をもとに、3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングなどを駆使して、浮世絵の世界に没入できる体験型デジタルミュージアムだ。

「藍(あい)」や「麗(うるわし)」、「遊(あそび)」に「豪(ごう)」、それに「雅(みやび)」などの9つのデジタルアート空間では、美人画、役者絵、風景画、花鳥画といったさまざまな浮世絵が、現代のアーティスト・クリエイターの手によってダイナミックに展開。ポップアートさながらの生き生きとした映像にてよみがえり、あたかも江戸時代へとタイムスリップして、浮世絵の世界に入り込めるような空間が続いている。

また擬人画やだまし絵をデジタルアートで楽しめるだけでなく、レトロな見世物小屋を思わせる「浮世絵金魚ボール」や「浮世絵輪投げ」など、アナログな体験型の展示も見どころといえる。

武者絵に登場する豪傑が躍動! お気に入りの「雅」と「豪」の魅力

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「動き出す浮世絵展 TOKYO」展示風景、寺田倉庫 G1ビル、2024〜2025年

北斎の『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』の「Great Wave」の波が大画面で展開する「藍」では、国芳の『宮本武蔵の鯨退治』に登場するクジラを3DCGとして表現。また美人画を花々で彩る「麗」では、歌麿や国貞の描いた美人画の背景を拡張し、花見を楽しむ優美な女性たちのすがたがモーショングラフィックにて描かれている。

国芳の出世作として名高い「水滸伝」シリーズや、妖術師を描いた国貞の「豊国揮毫奇術競」など武者絵をテーマとした「豪」では、雷鳴轟く嵐や灼熱の炎の中を豪傑らが躍動していて迫力満点。ラストの「雅」においては、北斎の『冨嶽三十六景 凱風快晴』、通称、「赤富士」として親しまれる富士山を背景に、それぞれの浮世絵師のハイライトともいえるシーンが華やかに映し出されていく。

一つ一つのデジタルアート空間で大きくムードが変わるのも『動き出す浮世絵展 TOKYO』の特徴だが、野村はどの場面を最も気に入っているのだろうか。

「『雅』と『豪』で迷いますね。僕はウェイトトレーニングが好きなので、『豪』に映し出されていた武者達を見ると、筋肉隆々ですごいな、もっとたくましくなりたいなと…ただInstagramなどのSNSにアップするとしたら、やはり富士山が目立っていて、桜の映し出されるシーンが綺麗な『雅』だと思います」---fadeinPager---

展覧会の意外な楽しみ方と現代に通じる浮世絵の面白さとは…?

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「動き出す浮世絵展 TOKYO」展示風景、寺田倉庫 G1ビル、2024〜2025年

取材会では粋な和装のスタイルで登場した野村。『動き出す浮世絵展 TOKYO』の意外な楽しみ方や、時代を超えて浮世絵が今を生きる人々にも愛されている理由を聞いた。

「和装に浮世絵の映像が映り込むのもかっこいいですね。浮世絵の中に自分が溶け込んでいくような感覚が楽しめます。映像を見るだけでも楽しめますが、服に映り込む映像と一緒に写真を撮るのもおすすめです」

「僕はモデルの仕事もしていますが、そういった面で言うとファッションにおいて浮世絵で描かれている着物の絵柄や色の使い方は、いまでもすごく参考になるなと思いました。人物の描き方ひとつみてもファッションだけでなく、アニメや漫画にも通じるものがありますよね」

国芳に大注目!「甲冑に身を固めた武将を演じたい」

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「動き出す浮世絵展 TOKYO」展示風景、寺田倉庫 G1ビル、2024〜2025年

40台以上にも及ぶプロジェクターによって複雑に映された立体映像だけでなく、実物の浮世絵や復刻版の展示も少なくない『動き出す浮世絵展 TOKYO』。作品や浮世絵師についての解説も豊富で、学びの観点からしても浮世絵に親しめるように工夫されている。

実はこれまであまり浮世絵に親しんでこなかったという野村だが、本展で思いっきり浮世絵に没入。映像だけでなく、実際の作品も鑑賞した上で、気になる浮世絵師をあげてもらった。

「有名な浮世絵師ばかりですし、みんな個性が違ってすごいと思います。例えば北斎の『神奈川沖浪裏』の波ですけど、動画や写真も撮れない時代に、波が立つ時の瞬間の動きをこんなに見事に表現している。どうやって描いていたのだろうとびっくり…」

「武者を多く描いた国芳がとても面白く感じました。僕はこれまでにドラマの『新・信長公記〜クラスメイトは戦国武将〜』でクローンの前田利家や、映画『身代わり忠臣蔵』にて岡野金右衛門を演じさせてもらいましたが、役者としての所作や立ち姿を考える時に、浮世絵の人物、特に武者を見るととても勉強になります。今回の展示を見て、甲冑に身をしっかり固めた武将を演じたいなと思いましたね。馬に乗って力いっぱい戦いたい」---fadeinPager---

一人やカップル、それにファミリーでも楽しめる『動き出す浮世絵展』

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「動き出す浮世絵展 TOKYO」展示風景、寺田倉庫 G1ビル、2024〜2025年

アンバサダーとして展覧会の魅力を広く伝えるには、「自分の気持ちに嘘をつかないで、ありのままに思ったことを伝えること、何よりも素直になることが大切」と語る野村。また最近、TikTokなどで美しい字を書いてアップしているアーティストの動画を見る機会が多いなど、書に対しても関心があるという。最後に展覧会を訪れる人に対してのメッセージを語ってもらった。

「浮世絵を好きな方が楽しめるのはもちろん、いままであまり触れてこなかった僕でも素敵な時間を過ごせる展覧会です。家族で来たり、大切な人とのデート、 1人で浮世絵の世界に没入するのもいいと思います」

野村康太

2003年、11月30日生まれ。東京都出身。O型。 2024年はドラマ「好きなオトコと別れたい」、「あの子の子ども」、「夫の家庭を壊すまで」に出演。「その着せ替え人形は恋をする」では地上波初主演を務めた。 2025年1月期TBSドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」に赤沢守役で出演。モデルとしても活躍。
https://www.ken-on.co.jp/artists/nomura/

 

『動き出す浮世絵展 TOKYO』

開催場所:寺田倉庫 G1ビル
●東京都品川区東品川2丁目6−4
開催期間:開催中〜2025年3月31日(月)
https://www.ukiyoeimmersiveart.com