ここまで進化した!? 大改良の「三菱アウトランダーPHEV」を注目すべき理由

  • 文:小川フミオ
  • 写真:三菱自動車
Share:
Exterior_img_03.jpg2トーンの塗り分けではフローティングルーフのデザイン手法が強調されてみえる。

三菱自動車が、2024年10月30日にSUV「アウトランダーPHEV」のマイナーチェンジ版を発売。スムーズな走りで、プラグインハイブリッドというパワートレインの魅力を、しっかり伝えてくれるモデルだ。

とんがったデザインではないけれど、理知的で、室内も落ち着く。電動車の一ジャンルであるプラグインハイブリッドの提供価値をうまく表現していると思う。

個性的なフロントマスクは、「ランサーエボリューション」と「パジェロ」という、三菱自動車のシグネチャーモデルの要素を取り込んだものと説明されている。

onRoad_img_01.jpgアクセルとブレーキと操舵を制御する運転支援システム「マイパイロット」搭載。

ボディ面の造型にもじっくり時間をかけたといい、デザインの基本になるクレイモデルを使っての面開発は、デザイナーが納得ゆくまで続けたそう。優秀なモデラーで手で削った面は、時としてコンピューターによる整った面より美しい表情を見せるのが興味深い。

今回のマイナーチェンジでは、フロントマスクもパーツを一新。従来よりなめらかな面づくりが目指されている。初代以来、デザインアイデンティティの構築には苦心が感じられてきた三菱車のデザインだが、今回は競合との差別化に成功していると思う。

Exterior_img_01.jpg「ダイナミックシールド」なるフロントグリルのデザインは継続して採用される。

差別化という点では、プラグインハイブリッドへのこだわりも特筆に値するだろう。PHEVとは、もはやわざわざ説明の必要もなさそうだけれど、外部充電可能なハイブリッドシステム搭載車のこと。

特長はバッテリー走行の距離が長いこと。くわえてもうひとつ。駆動用バッテリーの充電量が減るとエンジンが始動するので、充電設備をあわてて探す必要がない。

interior_img_48.jpg左はバッテリーへのチャージボタン、右はバッテリー走行のボタン。

昨今、欧米でもPHEVの需要が伸びていて、BEV(バッテリー駆動のピュアEV)からの乗り替えも、少なからずいるようだ。モーターによるなめらかな加速感と静粛性の魅力を知ったひとが、先述のとおり、充電インフラの心配のないPHEVをえらぶという。

三菱自動車は、PHEVに熱心に取り組んできたメーカーで、アウトランダーPHEVは、2012年に初代が登場。アウトランダーが現在の第3世代になったのが2021年12月で、このとき、日本市場むけはエンジン車を廃止して、PHEVに一本化された。 

onRoad_img_09.jpgリアクォーターピラーの形状がスポーティな印象を作り出しているグッドデザイン。

今回のマイナーチェンジでは、下記の点が重要な変更ポイントだ。

・バッテリーでの走行距離が20km超延びて100km超に
・乗り心地と走りのためサスペンションとタイヤを最適化
・内外装デザインを一部変更
・インフォテイメントシステム用モニターの大型化
・コネクテッド機能の拡充
・シートベンチレーション採用
・ヤマハと共同開発のオーディオ搭載
・最上級ブレード「P Executive Package」新設

onRoad_img_14.jpg後輪を駆動するモーターは「S-AWC」なる電子制御4輪駆動システムで統合制御される。

冒頭で触れたフロントマスクの意匠については、アッパーグリルをスムーズ化するとともに質感向上や、スキッドプレートを立体的デザインにするとともにカラーをチタニウムグレイにしたことが変更点。

リアではリアコンビネーションランプ内のターンシグナルランプと後退灯をLEDにするとともに、カバーレンズをスモークタイプとし、Tシェイプのアウトラインを目立たせるようにしたと説明されている。

interior_img_03のコピー.jpg
水平基調のダッシュボードが広さ感を強調(写真はP Eecutive Package)。

乗った印象は、たいへん好ましい。モーターによるスムーズは走りは、ボディのサイズを意識させないもので、冷却効率を高めて性能アップに寄与している新型バッテリーのおかげで、加速途中でのパワー落ちもない。

従来型より、スポーティさをやや抑えめにして「カドを丸めた」(開発担当者)という操縦性だが、それでも、車体のロールは抑えめだし、操舵力は重めだし、ハンドルを切り込んだときの応答性は高く、運転が好きなひとも満足させる出来映えになっていると感じられた。

interior_img_01のコピー.jpgP Executive Packageセミアニリンレザーシートが標準装備。

インテリアはとても居心地がよい。先述のとおり、フラットな乗り心地と静粛性の高さにくわえて、オーディオにも凝っている。これも居住性におおきく寄与していると思う。

「アウトランダーPHEV」は、かなりレアなヤマハブランドのオーディオを搭載している。標準は「ダイナミックサウンド・ヤマハ・プレミアム」なる8スピーカーのもので、最上級グレード「P Executive Package」には「ダイナミックサウンド・ヤマハ・アルティメット」が採用されている。

IMG_2769.jpegダイナミックサウンド・ヤマハ・アルティメット(P Exectuive Package以外はオプション)のツイーター。(写真:筆者)

ダイナミックサウンド・ヤマハ・アルティメットは、サブウーファー付きの12スピーカーを使い、アンプは高中音用と低音用、それぞれ最適な電圧に昇圧したデュアルアンプ構成。振動や外部の騒音の抑制をはじめ、機器はケーブルからフューズにいたるまで抵抗値を徹底的に詰めたそうだ。

「車内でいい音を作るのはオーディオメーカーだけではむり。自動車メーカーのエンジニアとの共同作業が必要です」。三菱自動車のインフォテイメント開発部の担当者が胸を張っていた。

IMG_2780.jpeg
ダイナミックサウンド・ヤマハ・アルティメットは4つのサウンドタイプと2つのサラウンドを選択できる。(写真:筆者)

実際、ダイナミックサウンド・ヤマハ・アルティメットはいい音を聴かせてくれる。音のニュアンスの再生能力にかけては、ジャンルを選ばない。ロバート・グラスパーも、ピーターキャット・レコーディングカンパニーも、ブラックピンクのロゼもと、幅広い音源に対応していた。そこらへんのヘッドフォン顔負けのきれいな再生音だ。

ヤマハが自社ブランドでカーオーディオを手掛けるのは、本当に珍しいことで(日本では初めてかもしれない)、私のようなヤマハブランド信奉者にはそれも魅力だ。

interior_img_08 2のコピー.jpg後席空間は余裕がありセンターアームレストには長尺もの搭載のためのトランクスルー機構も備わる。

「アウトランダーPHEV」の価格は、ベースグレード「M」(526万3500円)にはじまり、「G」(587万9500円〜)、「P」(631万4000円〜)、そして「P Executive Package」(659万4500円〜)で、「M」は5人乗りのみ、そのほかのグレードは7人乗りの設定もある。

新しい定番になるだろう。

interior_img_05 2のコピー.jpg
7人乗り仕様に備わる3列目シートはクッション材など従来モデルよりおごられているが、大人には少し窮屈。

三菱アウトランダーPHEV P Executive Package

全長×全幅×全高:4,720×1,860×1,750mm
ホイールベース:2,705mm
2359cc4気筒ガソリン+電気モーター プラグインハイブリッド 4WD
最高出力:98kW(エンジン)+85kW(モーター)
最大トルク:195Nm(エンジン)+255Nm(モーター)
車重:2,180kg
燃費:17.2km@L(WLTC)
価格:¥6,594,500円(5人乗り)/¥6,685,800(7人乗り)
問い合わせ先/三菱自動車
www.mitsubishi-motors.co.jp