北海道を拠点とする現代美術家、SHINSAKU DWが個展「TRAIL BRAKING(トレイルブレーキング)」を2025年1月9日(木)よりOFSギャラリーにて開催する。
板状のアルミニウムの上に銀色のペイントを使って描いたふたつの抽象絵画を裁断し、それを互い違いに入れ替えて並べ直して、新たなふたつの作品を生み出すという制作スタイルを長く続けてきたSHINSAKU DW。今回はキャリア初期に彼が多く手掛けていた、シェイプトキャンバスの考え方に立ち返って制作した菱形の作品などを展示する。
本展のタイトルとなっている“トレイルブレーキング”とは、「コーナーに差し掛かりながら徐々にブレーキを緩めていく、コーナリングのテクニック」のこと。ただ、タイトルに採用した「ブレーキング」の綴りは“BRAKING”ではなく“BREAKING”。「自分が通ってきた痕跡(トレイル)を壊して(ブレーキング)、再び違うところを進まなければいけないのだ」とSHINSAKU DWが思い当たったことにあり、彼がトヨタのワンメイクレースに参加するドライバーでもあるからだ。
アーティスト、レーサーのほか、SHINSAKU DWには、小麦農家としての一面も。農業は、家業を継がざるを得なくなって継いだものだが、育てている麦は収穫量が多いうえ、耐病性にも優れている品種のため、実際に畑に出て作業する日は1年で30日ほどだという。「コントロールできるところはやるけれど、あとは天に任せるだけです」。
まったく違う活動のように見えて、作品制作、カーレース、農作業の3つには共通するところもあるようだ。SHINSAKU DWは語る。
「僕にはどうも同じものをふたつ用意しないと気が済まないというところがあります。作品も組でつくっていますが、レース用の車も同じ車種を2台用意したい。畑仕事も同じで畝(うね)を延々つくっていきます。繰り返しという意味では、レースも同じ場所をぐるぐる回っている。でも、作品では再現性のない部分もつくりたいと常に考えているんです。秩序を生み出すこと、秩序を繰り返すこと、そして秩序からはみ出すこと。そこにこそ新たな創造があると感じているのかもしれません」
秩序とは高度な技術のことでもあり、そこからはみ出すこととは人為性を意図的に加えることでもある。「技術のないものや、偶然の要素が強いものを評価する気にならない」という彼のものの見方は、翻って自身のすべての活動にも反映されているのだ。
本展では、そんな3つの活動を象徴するシーンを、写真家・安永ケンタウロスとのコラボレーションで写真作品にしたものも展示する。北の大地に生い茂る麦、アルミニウムの素材、レースコースのカーブ。そんな作品の背景も一緒に楽しみたい。
「TRAIL BRAKING」SHINSAKU DW作品展
開催期間:2025年1月9日(木)〜2月10日(月)
開催場所:OFS GALLERY
東京都世田谷区池尻3-7-3 OFS.TOKYO
www.ofs.tokyo