森のような屋根が覆う、地域の居場所をつくる「箕面船場阪大前駅」【今月の建築ARCHITECTURE FILE #27】

  • 文:佐藤季代
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重ね合わせた7枚の屋根が地下空間を覆う。屋根はメンテナンス性や耐久性を考慮した上で、スタジアムなどで使われる膜素材を採用。 photo: Jiku Art

かつて繊維卸の物流団地として栄えた大阪・箕面市船場地区。北大阪急行電鉄南北線の延伸に伴い、新駅「箕面船場阪大前駅」が2024年3月に開通した。これに先行し、「箕面市立文化芸能劇場」と「大阪大学箕面キャンパス」が竣工するなど、市が事業主となり駅前再開発が進む。

この新駅開通とともにオープンしたのが、改札のある地下3階から地上2階までを結ぶエントランス空間。大阪を拠点とするジオ-グラフィック・デザイン・ラボが意匠設計を担当した(東畑建築事務所との共同設計)。

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膜屋根を通して、地下まで自然光が導かれる。改札がある地下3階にはカフェやギャラリーも併設。地域住民が思い思いに活用できる。 photo: Jiku Art

 

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駅前広場と一体的に設計されており、歩行者デッキを経由して、箕面市立文化芸能劇場や大阪大学箕面キャンパスへとアクセスできる。 photo: Jiku Art

高低差16mにもおよぶ巨大な吹き抜けには、5層をダイレクトにつなぐエレベーターに加え、立体的な大階段が取り囲む。こうした通行機能のみならず、吹き抜けに面してカフェやギャラリー、椅子などを置いた踊り場などが点在し、駅全体が自由に集えるコモンスペースとして設計されている。

吹き抜け全体を覆うのが、枝葉を広げたような7枚の白い膜屋根。雨が吹き込まないように角度を変えて重ね合わせ、階下に柔らかな光と風を導いた。一般的に暗く閉塞的になりがちな地下空間だが、自然を感じられる開放的な半屋外空間になっている。

今後、隣接地に大型集合住宅の完成が控えている。駅を核としたエリア一体がより活気を帯びた場所になりそうだ。

 

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不整形の敷地形状に沿いながら、踊り場のある大階段が連続する。広々とした踊り場を活用し、展示やイベントなども行われている。 photo: Jiku Art

箕面船場阪大前駅エントランス

住所:大阪府箕面市船場東3-2-11
TEL:なし
【設計者】ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ
意匠統括担当の前田茂樹は、1974年大阪生まれ。2010年にジオ-グラフィック・デザイン・ラボを設立。本建築は、設計共同体である東畑建築事務所が意匠および構造・設備設計・全体マネジメントを行った。

※この記事はPen 2025年1月号より再編集した記事です。