小嶋商店の創業は江戸時代中期の寛政元年(1789)ごろ。蝋燭の普及とともに提灯が世の中に広まる中、提灯の上下の黒い輪っぱを作り始めたのが始まりだ。その後、提灯の卸業を経て、現在は、自社で竹割から絵付けまでの全工程を一貫した手作業で行っている。江戸時代から変わらない材料と製法で作る提灯の、新たな可能性を世界に向けて発信しているのが、10代目となる小嶋諒だ。
提灯の製法には、竹ひごを螺旋状に巻く巻骨式と、竹を割った平骨を一本ずつ木型に等間隔にかけ、糸でまつる地張り式の2種類がある。小嶋商店は先代の頃から地張り式一本。より時間も手間もかかるが、竹と和紙の接着面が広いため、分厚い和紙を貼る事ができ丈夫で長持ちするという。京都四條南座の大提灯をはじめ、寺社仏閣や料亭などから注文が絶えない所以だ。それに加え、ブランドディレクター、海外営業、カメラマン兼広報がチームに参画し、SNS発信やブランディングに力を入れるようになったことで、ロサンゼルスのコミューン、デンマークのノーム・アーキテクツなど、世界に名だたるクリエイティブチームとのコラボレーションも多く手がけるようになった。
「提灯は基本的に灯り。お祭りで提灯がいっぱい吊っていると高揚感やワクワクするような灯りにもなりますし、和室で提灯を1個見るとすごい落ち着く空間になるなとか。対極しているけど、それがまたよいなと思っています。僕たちが今手応えを感じているのは、室内照明やイベントで使ってもらえること。今新しく工房を建て替えているんですけど、皆さんにもっと提灯を身近に感じてもらえるように考えています。提灯を知らない人はいなくて、ただ持っている人がいない。持っている人を増やしていきたいし、新しい文化を作っていけたら面白いんじゃないかと思っています」
提灯作りに携わっているのは、小嶋とその妻、先代、そして小嶋の兄も京丹後で竹割を担っている。まさに家族経営の工房だ。先代は「息子たちが継いでくれて、新しいことにも挑戦できて、今は仕事がとても楽しい」と目を細め、小嶋は「祖父や父が外注に任せず、自分たちでやってきてくれたから技術が残っている」と誇らしげに語る。伝統の技術と家族の絆から生み出されるやわらかな提灯の灯りは未来をも優しく照らすようだ。