〈ダイレクトドライブターンテーブルシステム〉
Technics SL-1300G(テクニクス SL-1300G)
レコードブーム再来を牽引するテクニクスが、新型レコードプレーヤー「SL-1300G」を発表。試聴したところ、刮目の高音質を確認した。そもそも「ダイレクトドライブ(モーターで直接プラッターを回す)は音が悪い」という業界常識を覆し、「ダイレクトだから高音質」という逆の定評を確立したテクニクス。SL-1200シリーズは1972年に誕生して以後、モデルチェンジを繰り返しながら進化。計17機種が全世界で約350万台も売れており、世界のDJシーンでも広く活用されている。
SL-1300Gは、デジタル技術をふんだんに取り入れたアナログプレーヤー。心臓部のモーター制御に、テクニクスがこれまでデジタルアンプで培った波形制御技術を採用。微小振動の徹底的な排除を目指し、ダイレクトドライブ・モーターもより精度を上げて新調した。こうした技術を垣根を超えて導入できるのは、総合オーディオメーカーの優位性だ。
音が良い。デノンの定番MCカートリッジのDL-103を装着して再生したが、レコード盤の持っている音楽的エネルギーを最大限に引き出していた。LP「マゼール/ウィーン・フィルの1980年ニューイヤー・コンサート」から『「こうもり」序曲』を聴く。実に生々しい臨場感だ。演奏会場の音響的に爽やかな空気感と、ウィーン・フィルならでの品質感、溌剌感、洒落たフレージング、弦の高域の華やぎ……という音楽的側面が実にチャーミング。新年を寿ぐ愉しさが満載だ。
オーディオとしての音質だけにとどまらず、音源に収録されている音楽性をよりリアルに濃く再現してくれるSL-1300Gは、上質な音楽生活を約束するアナログの使徒だ。
麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。問い合わせ先/パナソニック ディーガ・オーディオご相談窓口
TEL:0120-878-982
※この記事はPen 2025年1月号より再編集した記事です。