「生きたマネキン」がショーウインドウに登場して賛否…歩く姿で服のリアルな質感伝えるも「非人道的」「現代の奴隷制」の声

  • 文:青葉やまと
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New Africa-Shutterstock ※画像はイメージです

革新的手法か、はたまた搾取なのか――。中国やドバイの商業施設で、実際の人物がマネキンとして衣服を展示する「生きたマネキン」が注目を集めている。

中国で展示の「動くマネキン」

ウォーキングマシンの上を延々と歩き続けるモデルの動画が、ソーシャルメディアで800万回以上再生され注目の的に。動かないマネキンよりも展示効果が高いとされながらも、モデルにとって適切な労働環境かをめぐり懸念の声が寄せられている。実はこのような展示手法は、1930年代のアメリカでも一般的だったという。

ニューヨーク・ポスト紙は11月、中国の小売店で導入された「生きたマネキン」が話題を呼んでいると報じた。

同紙が報じた動画では、中国のショッピングモールにあるデザイナーズブランド「ITIB」の店頭ショーウインドウにて、ウォーキングマシン上で実際の人物がモデルとして歩き続けている。

「革新的」か「安全に懸念」か

本物の人間を起用する効果について同紙は、「衣服の着用感や動きを、実際の人物で確認できる」とのねらいがあると伝えている。

動きのあるモデルで確認したほうが、より実際の着用シーンに近い形でシルエットを把握し、納得して購入できるということだろう。2人のモデルがウォーキングマシンの上で歩き続ける様子に、買い物客たちは足を止めて見入っている。

インドメディアのタイムズ・ナウは、「革新的」なマーケティング戦略として取り上げつつ、動画の視聴者からは賛否両論が上がっていると報じている。

肯定論としては、「副収入を探しているなら悪くない仕事だ。体も鍛えられる。最新のスタイルを見せながら歩いて給料をもらえる」などの意見が寄せられている。

別の視聴者は、「動きのある展示は、マーケティングや人の注目を集めるという観点から見ると賢明だ」と評価しているようだ。

一方で、安全面や労働条件への懸念も示されている。ある視聴者は「これは少し疑問だ。十分な報酬が支払われることを願う」と述べている。

別の視聴者からは、「転倒したらどうなるのか。手すりもなく、高所から転落する可能性がある。年を取るとこういう安全面が気になってしまう」との慎重論が聞かれた。

ドバイでも7月、注目の的に

動画は昨年12月に撮影されたもので、約1年後の現在になってメディアに取り上げられ、再び注目を集めた形となる。このような手法は、中国が初めてというわけではないようだ。

エコノミック・タイムズ紙は今年7月、ドバイ・フェスティバル・シティモールにある衣料品店「マント・ブライド」が、店頭で生身のモデルをマネキンとして展示していると報じている。

モデルのアンジェリーナ氏が、この展示の様子をInstagramとTikTokに投稿したところ、動画は瞬く間に拡散。数十万回の視聴回数を集めた。

ドバイでの展示についても、ソーシャルメディア上で賛否両論が巻き起こっている。批判派は「非人道的」「現代の奴隷制」と強く非難。一方で支持派からは、革新的なマーケティング手法だと評価する声が上がった。

エコノミック・タイムズ紙は、この展示が「伝統的な小売マーケティングの境界を押し広げ」ているとしながらも、実際の人間をショーウィンドウのディスプレイとして使用することの是非について、活発な議論が続いていると伝えている。

50年代のアメリカでも「生きたマネキン」は一般的だった

斬新に思える「生きたマネキン」だが、ニューヨーク・ポスト紙は、実は大昔のアメリカの小売業界では一般的な手法だったと伝えている。

同紙は、「1930年代、1940年代、1950年代には、(百貨店チェーンの)ブルーミング・デールズなどのデパートにおいて、従業員が販売用の服を着て歩き回っていた。顧客は様々なスタイルを見ることができ、服が実際に人が着用した状態でどのように見えるかを知ることができた」と伝えている。

実在の人物による衣服の展示は、革新的な試みというよりも、むしろ伝統的な販売手法の再興だったようだ。

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