蓮沼執太が細野作品の原体験だと話す、はっぴいえんどの「風をあつめて」

  • 写真:後藤武浩
  • 文:加藤一陽
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自身名義のほかにも、蓮沼執太フィルなどさまざまな形態で音楽活動を展開する蓮沼執太。彼に細野作品の原体験を聞くと、先輩の影響で知ったはっぴいえんどだと教えてくれた。

音楽の地平を切り拓いてきた細野晴臣は、2024年に活動55周年を迎えた。ミュージシャンやクリエイターとの共作、共演、プロデュースといったこれまでの細野晴臣のコラボレーションに着目。さらに細野自身の独占インタビュー、菅田将暉とのスペシャル対談も収録。本人、そして影響を与え合った人々によって紡がれる言葉から、音楽の巨人の足跡をたどり、常に時代を刺激するクリエイションの核心に迫ろう。

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蓮沼執太(はすぬま・しゅうた)●ミュージシャン 1983年、東京都生まれ。ソロ名義のほか、蓮沼執太フィルなど多様なプロジェクトを展開する。映像やインスタレーションにも取り組んでおり、2019年開催の個展『蓮沼執太: ~ ing』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した。2025年2月16日まで、「21_21 デザインサイト」で開催中の「ゴミうんち展」に参加。写真はその会場にて。

多様な活動の背景には、細野さんという前例がある

「学生の頃はとにかくいろいろなジャンルの音楽を聴いてました。その中で、毎朝の目覚めの音楽に設定していたのが、はっぴいえんどの『風をあつめて』でした」

蓮沼はアメリカのレーベルから電子音楽のアルバムでデビューを果たした。以降はキャリアを重ねるにつれ、生楽器のアンサンブルに着目した蓮沼執太フィルの活動に取り組むなど、表現の幅がしだいに広がっていく。

「打ち込みの音づくりでも影響を受けていて、スティールパンを編成するなど一般的とはいえない蓮沼フィルの形態自体も、細野さんのやられてきたことに呼応しているかもしれません」

映画音楽や演劇、インスタレーション作品制作を含めて幅広いプロジェクトを行き来するスタイルも、細野に共通するものが感じられる。

「歌も歌うし、打ち込みや生楽器での演奏もある。僕の活動は一見バラバラに捉えられることがありますが、細野さんという前例がある。細野さんが築いてきた多様な活動があるからこそ、僕らの世代は、ひとりの人間から多様な音楽が生まれることに違和感がないんです。その意味でも細野さんの影響は、大きいと思います」

Column:蓮沼執太が選ぶ、細野晴臣の3song

「肝炎(HEPATITIS)」(収録:『コチンの月』)
この曲に漂う異国感や野生的な雰囲気は、現代ではなかなか体験できない感覚だと思います

「ATTENTION TOKYO」(収録:『LOOPHOLE』)
“電子音楽”の中ではポップなスケッチショウ。なかでも、ハーモニーが特に心地よい1曲がこちらです

「空へ 真空(TO THE AIR 空)」(収録:『マーキュリック・ダンス~躍動の踊り』)
“観光音楽”がテーマ。音楽にコンセプトを乗せるのは当時としては画期的だったでしょう

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