清水玲子の人気コミック『秘密-トップ・シークレット-』を原作とするドラマ『秘密~THE TOP SECRET~』(カンテレ・フジテレビ系全国ネット)が、2025年1月20日(月)より放送される。科学警察研究所の法医第九研究室・通称“第九”を舞台に、室長・薪剛と新米捜査員・青木一行が死者の生前記憶を映像で再現できる特殊なMRI技術を用いて事件の真相に迫るヒューマンサスペンスだ。驚異的な記憶力と、鋭い洞察力を持つ冷静沈着な薪を演じるのは板垣李光人。2024年は『陰陽師0』や『八犬伝』など5本の映画に出演し、来年2月には『ババンババンバンパイア』の公開を控えている。圧倒的な透明感を宿しながら多彩な表情を更新し続ける板垣が、また新たな役と出合った。役者に加えて、今年は報道番組『news zero』の曜日パートナーを務めたり、デジタルイラストと油絵を組み合わせたキャンバスアート中心の初の個展を開催するなど、豊かな感性を活かしマルチに活躍する板垣の現在地とは。
――ドラマ『秘密~THE TOP SECRET~』の原作コミックを読んで、どんな印象を持ちましたか?
ドラマの脚本を読む前に原作を読んだのですが、綺麗な清水先生の絵とセンシティブな事件を通してとても濃くて深い人間ドラマが描かれていることに衝撃を受けました。ドラマの視聴者の方にも、自分が原作を最初に読んだ時の衝撃を届けたいと思いました。だからこそ、薪剛を演じるのは大きな覚悟がいると感じましたね。
――剛をどんな人物だと受け止めましたか?
他の役もそうなんですが、特に薪はそれまでになにをどういう風に積み上げてきたのかが重要だと思いました。幼少期から大変な人生を歩んできた中で、親友であり同僚の鈴木克洋という唯一寄りかかることができるような人間と出会い、MRI捜査が正義だと信じ、ひたすら心血を注いできました。でも、果たしてMRI捜査が一概に正義と言えるのかというところで葛藤する。さまざまなレイヤーがある人物だと思いました。薪は強い人間に見えるけど、実際は強くあろうとしていると思うんです。強くいないと自分自身を失ってしまう。本当はとても繊細で、弱くて孤独な人間で、脚本を読んで抱きしめてあげたくなるような感覚になりました。
――薪を演じる上でどんなことを意識しましたか?
MRI捜査がキーとなってくるので、脳専門の大学の先生にお話を伺ったんです。薪が幻覚を見るシーンをはじめ、脚本を読むだけではそれが脳科学的にどういう状況なのかわからなかったところがいくつもあったのですが、「きっと薪はこういう症状だと思います」という風に詳しく教えていただくことができました。その上で、「そういう状態なんだったらこういう身体的な動きや表情になるんだろうな」と想像して役づくりに盛り込んでいったので、通常の役づくりとはまた違った面白さがありました。あとはビジュアル面に関して言うと、原作の薪は線が細くて睡眠をあまり取らず、捜査に没頭しているので食事もろくに摂らないだろう、という人間である一方、捜査官なので細すぎるのも説得力に欠けます。原作を見ている方は細くても薪だと思ってくれると思うのですが、ドラマだけを見てくださる方のことも考えると、どういう体型がベストなのか導き出すのが難しかったです。結局、ジムに行って4~5キロ程度体重を増やし、原作のイメージを崩さずにリアルな説得力を持たせるよう意識しました。
――薪と板垣さんの共通点いうと、なんだと思いますか?
共通点は、誕生日と血液型ぐらいですね(笑)。性格は全然違うと思います。薪はずっとつらつらと喋っていて、ローなテンションをキープしている中でたまに弾けたようにテンションが高くなります。僕のテンションも基本ローですが、なにかあっても薪のようなテンションの上がり方はせずに、気持ちを鎮めるタイプです。でも、薪も僕もなにかしらの十字架のようなものを背負って生きていると思うので、重さは違えどそこは自分に重ねて痛みを感じながら演じていきたいと思っています。
――薪を演じていて楽しい部分と難しい部分はそれぞれどんなところでしょう?
薪を演じるには肉体的にも精神的にも大変なところがたくさんあります。ずっと大変だと思うんです(笑)。でも、僕はそういうハードルが高い役の方が腕が鳴るというか、役者としてやりがいを感じます。楽しいですね。
――『秘密~THE TOP SECRET~』はヒューマンサスペンス作品ですが、サスペンスはお好きですか?
好きですね。『古畑任三郎』はよく見ていました。犯人が誰かわかっているけれど、犯人を突き止める過程や犯人が罪を犯していく過程を見るのが面白いです。
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――2024年は報道番組のパートナーだったり、初の個展開催だったり、さまざまな挑戦をされた年だったと思います。どんな成長ができたと思いますか?
役者として多くの作品に携わらせていただいたことはもちろん大きかったですが、人間として成長できた年だったと思います。『news zero』の曜日パートナーとして、画家の方やアニメーションの監督といった自分とは異なる業種の方に何度か取材させていただき、役者だけをやっていたらなかなか得られない機会をいただきました。おかげで、自分にない視点を増やせた気がしています。
――板垣さんは「好き」という気持ちを原動力にさまざまなお仕事をされている印象がありますが、2024年に「好き」という気持ちが増したものはありますか?
個展をやらせていただいたことで、絵を描くことへの向き合い方が変わりました。いままでは自分が描きたい時にその時の感情の赴くままに描いていましたが、個展をやることになりテーマを1から決めて作品をつくるという初めての制作方法に取り組んでみて、期限がある中で自分が表現したいもの、つくりたいストーリーを紡いでいくのは新鮮で面白かったです。今後、個展があるなしにかかわらず、そういう制作の方法を取ろうかなと思っています。単に一枚の絵を描くというよりは、大きなテーマを決めて、複数の作品が繋がっていくような表現をやることに惹かれていますね。
――個展には多くの共演者などが訪れていましたが、なにか印象的な言葉をかけられたりしましたか?
これまでお仕事をご一緒した方々がたくさん来てくださって、その方たちには僕の役者としての面は見ていただいているけれど──アーティストって自分で言うのもこっ恥ずかしいですが(笑)、絵を描く者として見ていただいて、いろいろな声をかけていただいたのは嬉しかったです。作品を気に入ってくださった方もいらっしゃいました。一般の来場者の方も含めて、「絵が好き」というより、板垣李光人の個展だから見に来てくださった方もいらっしゃって、「初めて展覧会に行ってみてとても面白かったからまた別の展覧会にも行ってみたい」と言ってくださったことに感激しました。日本にはアートに対してハードルの高さを感じている方が多い気がしているのですが、意図せずとも僕の個展が少しでもそのハードルを下げられるきっかけになったのであれば嬉しいですね。
――板垣さんはご自身のことを年始に目標を立てるタイプではないとおっしゃっていますが、あえて、2025年はどんな年になったらいいなと思いますか?
『秘密~THE TOP SECRET~』の放送が年始から始まりますので、まず視聴者の皆さんの反応を気にしなければいけないと思っています。本当に難しい役ですし、難しい作品だと思うので、いまはとにかく全うすることで頭が一杯です。先日、僕が出演させていただくという情報が解禁されたんですが、前日の夜はずっとドキドキしててあまり寝れなかったんです。いざ解禁されて、多くの人が期待を寄せてくださっていてすごくありがたいなと思う一方で、原作ファンの方を中心に不安を感じている方もいらっしゃると思うので改めて気が引き締まりました。正直いまは他のことを考える余裕はないですね(笑)。
『秘密~THE TOP SECRET~』
出演/板垣李光人、中島裕翔、門脇麦、高橋努、國村準ほか
原作/清水玲子『秘密-トップ・シークレット-』(白泉社)
2025年1月20日(月)よりスタート(毎週月曜夜10時~10時54分、カンテレ・フジテレビ系全国ネット)
www.ktv.jp/top-secret