「二度と聞きたくない」世界で最も恐ろしい音と言われる、アステカの死の笛がついに科学的に分析される

  • 文:吉井いつき
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Tom Reeve-Shutterstock

アステカの「死の笛」をご存知だろうか。「世界で最も恐ろしい音」を出すと言われるこの楽器の秘密の一端が、最新の科学で明かされた。

死の笛は頭蓋骨を模したデザインのシンプルな笛であるが、その甲高い音色は大勢の人間の悲鳴にも吹き荒れる風の音にも似ていて、聞く者をゾッとさせる恐ろしさに満ちている。YouTubeにアップされた死の笛の動画には「二度と聞きたくない」「聞くたびに不快になる」「あまりに怖くてむしろ笑った」といったコメントが並んでいて、「世界で最も恐ろしい音」と呼ばれるのにふさわしい様相を呈している。

死の笛が引き起こす「不気味の谷」

今年11月、この「世界で最も恐ろしい音」が科学的に分析された。なぜ我々がこの笛の音に恐怖感や嫌悪感を覚えるのか、その一端が判明したのである。

分析を行ったチューリッヒ大学の研究者らによると、死の笛の音色は非常に複雑で、自然の音と人工の音の混合物としかいえない代物だったという。

今回の研究では、死の笛の音を聞いた人間がどのように反応するかが調べられている。被験者ら(その多くが笛の音を「叫び声」にたとえた)の脳内では多くの領域が反応していたといい、脳は笛の音を人工のものと自然由来のもののハイブリットとして認識していた。

研究によると、死の笛の音は音声版の「不気味の谷」を引き起こしているという。不気味の谷は、人間に似せたロボットが、人間に親しみではなく不気味さを与えてしまうという現象だ。死の笛の音は悲鳴にも風の音にも聞こえ、人間の脳内で混乱を引き起こす。死の笛の音を聞いた人間の脳内では、誰かの悲鳴を聞いた時のような恐怖や警戒感が湧き上がる一方、風や楽器の音のようにも聞こえるためにカテゴリー分けができず、その曖昧さが不安を与えていたという。

様々な音と比較すると、死の笛の音はクラクションやサイレンのような警報音に近いと同時に、恐怖・痛み・怒り・悲しみの声に近いこともわかった。

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死の笛は何に使われたのか?

死の笛は13〜15世紀の生贄らしき遺骨の側で発見されているが、その役割については不明な点が多い。その恐ろしい音色から、戦場で敵を怯えさせる目的で使われたという説もあるが、戦場の跡地や戦士の墓からは見つかっていない。そのため、死の笛は生贄の儀式など宗教的な行事で使われていた可能性が高いとされている。

よく知られているように、アステカでは生贄の儀式が頻繁に行われていた。チューリッヒ大学の研究者らは、死の笛のデザインはアステカ神話の風の神エエカトルを象徴したものであり、その音色は死者の国ミクトランを吹き抜ける風の音だったかもしれないと考えている。生贄が最期に耳にするのに、これ以上ふさわしい音色はないかもしれない。

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「二度と聞きたくない」世界で最も恐ろしい音と言われる、アステカの死の笛の音。

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