いまから翌春に掛けて、着こなしの鍵になるアイテムが「裾広パンツ」だ。いつの間にか年配者のイメージがついてしまった、足首丈で裾幅が狭いスリムパンツを穿き替えるいい時期である。すでにワイドパンツを愛用している人も、裾幅を意識してトップスとの組み合わせを見直せば、より新鮮な装いを愉しめるかもしれない。ボリュームのある下半身には、脚を長く顔を小さく見せる視覚効果がある。短足や大顔に悩みがちなわたしたちアジア人に似合うパンツを穿かない手はないのだ。
上半身の服を短丈(たんたけ)と呼ばれるウエスト丈にして、シルエットにメリハリをつけるのがコーデのセオリー。流行が続く全身ダボダボから一歩先へ歩みを進めた、懐かしくも新しいバランス。ハイブランドでも2025年春夏のプラダが打ち出したタイト+ワイドが、メンズモード界隈で話題になっている。いまこそ毎日の装いをアップデートさせるチャンスの到来だ。
今回は常日頃最新ファッションに囲まれているPR男性たち3名とともに、このモダンなスタイルの可能性を探った。彼らが考えた「自分ならこう着る」のコーデ例と、短丈トップス&裾広パンツのお薦め品を掲載。年代も感性も異なる三者三様のスタイルから、自身にフィットするヒントを探そう!
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由緒あるビンテージワークで大人シックに
トゥモローランド PRマネージャー杉山耕平
クリーンな大人の着こなしを見せてくれたのは、トゥモローランドに勤めてインテリアや食のセンスにも定評がある杉山耕平。スタイリッシュな短丈ジャケットと裾広パンツは、意外にも上下ともに古着がベースの服だ。
「ジャケットはユーロビンテージに刺繍を施した刺繍作家オードリー・ドゥマールのもの。オーバーサイズで穿いたベイカーパンツはアメリカの古着です。流行のタイト+ワイドを大人が着るなら、歴史のある由緒正しい服を選ぶと浮つかない印象になると思うんですよ。その感覚を古着で表現してみました」
それでもシューズはデザイナーズのドリス ヴァン ノッテン。ノンジャンルのミックスで出す個性がプロの技だ。
タイト+ワイドは、トレンドと無関係に杉山さんが長年追求している定番シルエット。
「ワイドパンツを穿き始めたきっかけは、脚を長く見せたかったからです。体型に恵まれない自分でも似合うパンツを探すうちに、Aラインの全身シルエットに行き着きました。皆さんがこうした服を買うときは、あまり『タイト』『ワイド』という言葉に縛られないほうがいいように思います。それよりサイズを意識するほうが大切で、例えばトップスならMサイズだった人がSにしてみる、パンツならワンサイズ大きめにしてみるといった考え方をするだけでOK」
着慣れない服の買い方に迷う人は、彼のアドバイスをぜひご参考に!
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これも着たい!お薦めチョイス
麻布台ヒルズに入店する店、メゾン エ ヴォヤージュ(MAISON et VOYAGE)が展開するオリジナルから杉山さんが選んだお薦め2品。ニットはベーシックながら、やや着丈が短く今年らしいバランス。スウェットシャツ感覚で着やすい服だ。パンツはミリタリーチノのディテールを配した、ずどんと太いワイドシルエット。歴史的な古着のような落ち着きとモダンさが融合した逸品である。
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Y2Kのユーススタイルを狙ったトレンドコーデ
スタジオファブワーク/エンケル 西澤祐哉
ハードな加工が施された日本ブランドのユハのデニム(25年春夏商品)を穿いて登場したのは、エッジーな若手モードをバックアップするPRオフィスに勤める西澤祐哉。若い感覚のタイト+ワイドなトレンドコーデに挑戦。色がフェードした古着感もイマっぽい。彼が次のようにこのコーデを語った。
「トップスはパタゴニアの古着フリースです。色が好きで昔買ったもので、実はキッズサイズなんです。学生の頃から全身ダボダボの服ばかりだった自分は着る機会が少なかったのですが、今回Y2Kを狙って着てみて新鮮な気分になれました。上半身をタイトにするのもイイですね」
デニムそのものも人気が完全復活してきた大注目パンツ。ただし現代のデニムは、昔のアメカジとはだいぶ印象が異なるようだ。単に大きな古着をウエストを絞って穿いても洒落にくいのは、昔の服を活用したい大人の悩みどころ。西澤さんは足下を2013年のランニングシューズを元にしたアシックスの最新シューズにして、トレンド感と品のよさを加えている。手持ちの古いデニムでもコーデの工夫しだいで現代的に着られるからどうぞお試しを。
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これも着たい!お薦めチョイス
西澤さんのお薦めチョイスはどれも、ユースカルチャーのエッセンスを注入した都会的な服。大人もいますぐ着たくなる服ばかりだ。なおフーディとカーゴパンツは、翌春に発売される予定。西澤さんいわく、
「とくに自分が着たいのはフーディとカーゴでしょうか。この2点を上下で組み合わせて、春にきれいな色で過ごすのもよさそうです」
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ベーシックの文脈を引き継ぎつつコンテンポラリーに
レボリューションPR 田中 望
誰でもすっと取り入れやすい着こなし。トラッドやワークが好きな人にも親しみやすい服装だろう。ジョン スメドレーなどのクラシックな英国服も取り扱うPRオフィスに勤める田中望の提案だ。リラックスしつつ仕事着にもなる大人カジュアルが等身大。とくに彼のお気に入りは、最近買ったコットンの太めワークパンツ。
「仕事でお付き合いのあるスタイリストさんに教えていただいたパンツです。LA発信のLA GATEのもので、1990年代に人気だったバギーパンツ。価格はリーズナブルで取扱店でネット購入しました。カジュアルでもきれいに穿けるパンツです。もう一本買おうかと考えているほど気に入っています」
ヘンリーネックのニットはリブ編みのジョン スメドレーで、流行に左右されないベーシック。丸いトゥが下半身のボリューム感を強調するシューズは、日本発信のべネクシーのもの。コーデの仕上げにフランス、ブルターニュ地方の漁師御用達のフィッシャーマンキャップを被り、無国籍なスタイルに仕上げた。
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これも着たい!お勧めチョイス
裾リブのスウェットシャツは、ウエストに裾を乗せて着丈を短くする「ブラウジング」のテクニックが使えるアイテム。ワークベストは重ねることで上半身をコンパクトに見せられる便利グッズ。ストラップを短くして両脇のバッグを持ち上げたり、太いパンツとのボリューム感の調整に活躍させよう。
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ファッションのプロ3名にお願いした今回の短丈トップス+裾広パンツのプレゼン大会はいかがだっただろうか。トップスはともかく、ワイドパンツにはまだ苦手意識がある人もいるかもしれない。しかし記事冒頭で述べたように脚の体型カバーに抜群に効果的で、頭も小さく見える役立ちアイテムなのだ。太めのお腹やヒップ周りもしっかりカバーしてくれる。トレンドと合致するいまこそ輝く、大人の買い足しワードローブの筆頭株なのは間違いない。
ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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