歌手・俳優として、第一線を走り続ける原田知世。撮影現場に現れるや否や、優しいハミングを響かせ準備を整える姿に、一瞬で周囲の空気が澄んだように感じた……。
2022年のデビュー40周年を経て、また一段と伸びやかで表情豊かになった歌声に焦点を当てたミニ・アルバム『カリン』が11月27日にリリースされた。冬の季節をテーマに、伊藤ゴローをはじめ、川谷絵音や高野寛、高橋久美子、藤原さくらなど豪華作家陣とタッグを組みつくり上げた今作。発売の翌日には57歳になり「歳を重ねるごとに歌うことが楽しくなっている」と話す原田に、アルバム制作にまつわる話から、歌と同じほど大きな存在だというゴルフについてまで話を訊いた。
オーダーメイドでつくった服のように、いまの私にぴったりの作品です
――まず、今回のミニ・アルバム制作のきっかけを教えてください。
「冬をテーマにオリジナルのミニ・アルバムをつくってみませんか?」とレコード会社から提案いただいたのがきっかけです。前のツアーを実施していたタイミングで、歌うことがさらに楽しくなってきていた時期でした。そこで、プロデューサーの伊藤ゴローさんとも相談をして、自分の声をより活かせるミディアムテンポの曲で構成する作品を制作することになりました
――歌うことが楽しくなった、というと?
一昨年、洋楽のカバーアルバム『恋愛小説4~音楽飛行』をつくリ始めるときに素晴らしいボイストレーナーの先生に出会えたんです。喉の正しい使い方といった基礎的なことを教えていただいてから、少しずつ自分の声の変化を感じられるようになって。40周年という節目が終わり落ち着いたタイミングで、まだまだ自分には伸びしろがあるんだな、と思えるようになりました。仕事とはいえ趣味のような気分で、面白がって自分の体と向き合っています。---fadeinPager---
――今作では藤原さくらさんや、壷阪健登さんと石川紅奈さんによるジャズの新世代ユニット、sorayaなど、初めてコラボレーションされた方もいらっしゃいますが、いかがでしたか?
みなさん20代後半から30代前半で、これほど年齢が離れた方と一緒にお仕事をするのはすごく刺激的です。さくらさんとは以前ラジオで共演して、歌もお人柄も魅力的だなと思っていたので待望でした。sorayaさんはアルバム制作が決まった後に紹介していただいたことがきっかけですが、彼らの音楽はとっても美しい。つくってくださった「セレンディピティ」は一見シンプルなようで複雑な美しいメロディ展開の曲です。自分の中へ落とし込むことに苦労しましたが、歌うたびにだんだん心地よく感じてきて、お気に入りの曲になりました。
――曲づくりにあたって、作家陣とはどのようなやり取りがあったのでしょうか?
今回はあえて「冬」というテーマだけをお伝えして、自由につくっていただきました。初コラボの二組をはじめ、みなさんがどんな曲を仕上げてくれるのだろうとひたすら楽しみに待っていましたね。
――先述した二組のほか、川谷絵音さんに高野寛さん、高橋久美子さん、伊藤ゴローさんとご一緒されていますが、実際にそれぞれの曲を歌ってみていかがでしたか?
川谷さんの「カトレア」は、サビで高音を響かせる曲。こういった曲に挑戦するのは久しぶりだったのですが、いまの私の声にしっくりきました。ゴローさんは20年以上のお付き合い。私の声を一番理解している方なので、オーダーメイドでつくった服のように、ぴったりの曲たちを今回も制作していただけたと思っています。空気が透き通る寒い冬に、心がふっと温かくなるナンバーばかりです。
――ジャケットのイラストも素敵です。これまでは原田さんのポートレートを使用したものが多かった印象でした。
はい、今回は自分の写真ではないものにしたかったんです。塩川いづみさんは、アートディレクションを務めた須山悠里さんからの紹介。真ん中に描かれているのは私の似顔絵なんですよ。楽曲制作からジャケットまで素晴らしい方々とご一緒できたので、私は歌に集中できました。参加する皆さんが存分に力を発揮してくださったおかげで出来上がった作品です。
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お風呂でボイトレ、YouTubeでゴルフ視聴。いま感じる“自然体でいること”の 大切さ
――先ほど、ボイストレーニングを始めたと伺いましたが、他にも新たに始めたことや自身の中で変化していることはありますか?
レコーディングやライブが近づくとお風呂で歌うようになりました(笑)。子どもの頃、お湯に浸かりながら歌っていたときのような純粋な感覚で歌いたい、という気持ちがあって。浴室だと声も響くし、リラックスしながら自分の声の出し方や歌声の確認ができるんです。
――50歳になってからはゴルフを続けていると伺っています。ゴルフが歌によい影響を与えることもあるのでしょうか?
大いにあります! ゴルフは継続してよかったなと思えることのひとつです。球を飛ばすときは力任せではなく、体幹を使ってフワッと軽く飛ばすことが大切なのですが、それは歌にも言えることだと思います。体の軸はしっかりさせるけど、声はリラックスして出すことで、響く歌声になってくる。 ---fadeinPager---
――自分の体と向き合う方法として、ゴルフとボイストレーニングを取り入れているのですね。
そうですね。大人になってからも成長する可能性があることに気づけたきっかけはゴルフです。いまは忙しくてなかなかラウンドをまわることはできないのですが、いつもYouTubeで練習動画を見て、目で吸収しながら研究を続けていますよ(笑)。
――もしや原田さんの頭の中は、ゴルフと音楽が同じくらい大切な存在になっているのでしょうか……?
完全になっていますね。やればやるほど共通点を感じて、技術やメンタルが鍛えられている気がします。ライブで第一声が綺麗に出るとその後は気持ちよく歌えるのと同じく、ドライバーがスカッと飛ぶとその後のプレーもよくなる。心と体はつながっているなと、感じさせられます。
――ゴルフを続けていることもあるかと思いますが、変わらず美しさを保つ秘訣は?
友人や家族から教えてもらったことや、いわゆる「この体操がお腹に効く!」みたいなテレビの情報も積極的に取り入れていますよ(笑)。最近は耳をくるくると引っ張る体操を始めました。まずは純粋に興味を持ったことを生活に取り入れてみて、自分に合うか合わないかを判断しています。
でもひとつ大切にしているのは、「絶対にこれをやる!」と決めすぎないこと。ストレスを溜めないように、自分に優しくする。あえてルーティンにせず自然体でいると、意外と「今日もあの体操をやってみようかな」って気持ちになるんです。それが心も体も健康でいられる秘訣ですね。
『カリン』
原田知世 ユニバーサル ミュージック
初回限定盤(SHM-CD+ミニ・フォトブック) UCCJ-9251 ¥3,520
通常盤(SHM-CD) UCCJ-2241 ¥2,860
www.universal-music.co.jp/harada-tomoyo