モビリティの電動化がクルマとヒトにもたらす、無限の可能性

  • 編集&文:カストロトシキ
  • 写真:筒井義昭
  • イラスト:Ave Atsushi
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LEXUS  LF-ZC / 次世代バッテリーEVコンセプト。BEVでありながら、エモーショナルなデザインとスタイル、居住性を具現化した。航続距離は従来型比2倍となる1,000km、急速充電も20分以内を目標に2026年の市場導入を目指している。

CO₂削減を実現するために、トヨタが考えるマルチパスウェイ。その戦略を理解するために、ガソリン車から電気自動車まで多様な車種がもつ特徴を振り返り、レクサスのビジョンを紐解いてみよう。

カーボンニュートラル解決に向け、トヨタやレクサスが掲げる“マルチパスウェイ戦略”とは?

地球温暖化抑止に向け、各国政府や多くの自動車メーカーが電気自動車シフトを進めるようになって久しい。そんななか、トヨタは電気自動車(BEV)のみでそれを達成しようとするのではなく、従来のガソリン車を含めたICE(内燃機関車)やハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、そしてFCEV(燃料電池車)など、あらゆるタイプのパワートレインを用意して、カーボンニュートラル(CO₂排出実質ゼロ)の実現を掲げている。さまざまな選択肢を展開し、地球温暖化抑止へのアプローチ方法はあくまで各々のユーザーに委ねるというトヨタの全方位戦略こそ、「マルチパスウェイ」だ。

ここからは、マルチパスウェイ戦略でアプローチとして活用される、5タイプの車について紹介しよう。

内燃機関車 / ICE(Internal Combustion Engine)

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イラストは、水素エンジン搭載の「ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」。モータースポーツの場で鍛えてきた水素エンジン技術の実用化に向けて、走行実証を開始している。燃焼させて走る内燃機関のダイレクトなフィーリングやエンジンサウンドなどを、楽しめる。

ガソリンまたは軽油などを燃料とする内燃機関(エンジン)で動く自動車の基本形。さまざまな地形や気候条件にも適応しやすく、信頼性も高い。高効率化とクリーン化技術によってまだまだ独自の進化を遂げるパワートレインの代表格。燃焼を繰り返すため振動と排気音を伴うが、走りに特化したクルマでは操作に対してダイレクトに呼応するバイブスが特徴。トヨタが現在開発している水素エンジン(H2 ICE)は、ガソリンの代わりに液体水素を燃料として内燃機関で燃焼させて走行するもの。エンジンを搭載し、走行中のCO₂はほぼ排出されない。

ハイブリッド車 / HEV(Hybrid Electric Vehicle)

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長距離移動よりも、日常の買い物などで活用するユーザーが多い。渋滞が多く加減速の多い街乗りの用途に比較的適しており、普段の移動でも燃費を抑えカジュアルに低燃性能を手に入れられる。トヨタ/レクサスは、ほぼすべてのラインアップにHEVを取り揃えている。

ハイブリッド車(HEV)は、ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせて走行する自動車。環境にやさしいエコカーのなかで、多くのユーザーにもっとも馴染み深い。最大の特徴はガソリン車に比べて燃費性能が良好なこと。例えば低速走行時は電動モーターのみで走行し、高速や加速時にはガソリンエンジンが加わるため、モーターとエンジンの「いいとこどり」をした効率的な運転が可能。燃料はガソリンなので、充電設備のない環境でも安心して乗れる。外部からの充電はできないため、PHEVよりも車両価格は安く、車種の選択肢はかなり幅広い。

プラグインハイブリッド車 / PHEV (Plug-in Hybrid Electric Vehicle)

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通常のHEV以上の「運動性能」や「環境性能」を求める人に最適。例えば子どもの送迎や通勤時にクルマを利用するといった、日常の短距離移動に適している。自宅に充電インフラを設置して利用するケースが多く、ほぼ電気だけで走行できているユーザーも珍しくない。

基本的な仕組みはHEVと同様だが、充電可能でより大きいバッテリーが積まれているため、モーターのみで走行できる距離が長い。近距離の移動であれば、CO₂を排出せずに電気のみで走れる。充電が切れた際もガソリン車として走れて、燃料補給はガソリンスタンドで行う。HEVと違い外部給電もでき、だからといってBEVのように充電切れを気にする必要もないのがメリットだ。また、モーターによる静粛性を持ちながら、航続距離の懸念がない。充電インフラを設置すれば自宅で充電もできるが、そうした設備がなくても所有は可能だ。

燃料電池自動車 / FCEV (Fuel Cell Electric Vehicle)

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環境問題に関心が高く、最先端技術を日常から取り入れている人からの支持が厚い。動力源である水素は、専用ステーションで充填する。日本政府は2030年までに水素ステーションを1000基整備する目標を掲げている。イラストは、トヨタの燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」。

エンジンの代わりに「Fuel Cell(燃料電池)」という仕組みを搭載。充填した水素と空気中から取り込んだ酸素の化学反応で発生した電気で、モーターを動かす車両。振動・騒音のない、上質な走りも魅力だが、燃焼を伴わないため、車両からの排出物は水のみ。CO₂や有害物質を一切排出しないため、環境にも優しい。水素充填はガソリン車と同様に数分で完了するため、長時間の充電を必要としない点も大きなメリット。BEVに比べて一度の充填で長距離走行が可能で、長距離移動や都市間の移動にも適している。次世代のエコカーとして注目されている。

電気自動車 / BEV(Battery Electric Vehicle)

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イラストは、レクサスのBEV専用モデル「RZ」。電気ならではのシームレスな加速や、優れた静粛性で移動を楽しみたいユーザーの他、環境意識の高いオーナーも多い。レクサスの電動化を象徴するモデルに乗れば、運転以外の部分でも新しいライフスタイルが見えてくるはずだ。

電気自動車(BEV)は、大容量バッテリーを搭載し、充電した電力でモーターを駆動する。走行時にはCO₂や有害物質を排出しない上、モーター特有のパワフルかつシームレスな加速も魅力だ。再生可能エネルギー由来の電力を利用して充電することで、環境への負担をさらに軽減できる。エンジンによる音や振動がないため、走行中でもストレスなく会話や音楽が楽しめるほか、「移動できる電源車」としてアウトドアに、また災害時の非常用電源としても活用可能。これからのライフスタイルを実感できる多様な選択肢のひとつ。

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電動化を進めながら目指す先は、もっと楽しいクルマと新たな体験づくり

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渡辺 剛 ●レクサス プレジデント 1993年、トヨタに入社。幼い頃からクルマの仕事を志し、エンジニアを目指す。チーフエンジニアとしてレクサス初のBEV市販モデル「UX300e」、初のBEV専用モデル「RZ」の開発を担当。2023年、レクサスのプレジデントに就任。

サステイナブルなモビリティ社会の実現に向けた、カーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)実現のための手段は、なにもBEVだけではない。その考えを具現した全方位戦略「マルチパスウェイ」を早くから掲げていたのがトヨタだ。

電気自動車(BEV)に加えてエンジン車、ハイブリッド車(HEV)、燃料電池車(FCEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)など、あらゆる選択肢を提供し続けていくことこそ、総体的にCO2排出を減らしカーボンニュートラル化に向かう早道……というのが、トヨタの考えるマルチパスウェイだ。

クルマの使い方は、国や地域、文化によって異なるもの。「すべての人に移動の自由を」掲げるトヨタは、その選択肢をエンドユーザーに委ねる。

「これからのモビリティ社会へのあらゆる変化や環境適応を進めつつも、レクサスのクルマづくりの根幹には、乗って楽しい!という確固たる理念があるんです。それは、クルマ屋として絶対に譲れないところです」

そう語るのは、レクサスのプレジデント、渡辺剛。

「“モビリティの電動化”を我々レクサスブランドの基軸にしながら、新しいクルマづくりと新しいコト(体験)づくりにもチャレンジしていく。それこそ、LF-ZCというコンセプトカーのような既成概念を超えたスペシャルカーもできる。クルマのカタチそのものを変えることも。これが、BEVがモビリティとして進化をしていく上での大きなメリットのひとつでもあるんです」

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BEVオーナーに向けた、独自の体験サービスも展開

一方で、レクサスはクルマにまつわるさまざまな体験価値にも、力を入れている。

たとえば、BEVオーナー専用のサービス「LEXUS Electrified Program」では、BEVコンシェルジュによるサポート体制を強化。カーボンニュートラルの実現を目指したバッテリー循環プログラムの構築から、レクサスならではの体験を通じたBEVライフスタイルの提供までと、そのラインアップは幅広い。

すでにレクサス充電ステーションでは、事前予約で、待つことなく急速充電ができるサービスも展開、好評を得ているという。

「いまはあくまで“充電をする”という行為が目的になってしまっているので、充電中は待たなければいけない。それを逆転の発想で、価値を生みだす。そんな変換の仕方って、レクサスのBEVだからこそできるもの」

BEVはソフトウエアによって、ユーザーが好みに合わせてカスタマイズできる。

「どんな技術とどんなモノを組み合わせて、どんな新しいお客様に向けて価値を生み出すか? 電動化によって広がるモビリティと人との関係はアイデア次第。そのワクワクも無限大に広がるものだと思っています」

本連載では次回以降、レクサスのBEVの魅力はもちろん、BEVの所有で実現する新たなライフスタイルなど、さまざまな角度から紐解いていく。

 

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伝統的な素材である「竹」の新しい可能性に挑戦し、環境への配慮と、上質でラグジュアリーなデザインの二律双生を表現したLF-ZCの内装。
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電動化・知能化技術で実現を目指す、社会とつながる未来のドライビング。
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デザインテーマを「Provocative Simplicity」とし、挑発的な存在感と研ぎ澄まされたシンプルなデザインを目指した。

 

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