10月27日早朝、オーストラリア・ブリスベンに全裸の大群衆が現れた。集団は街のシンボルであるストーリーブリッジを埋め尽くすと、道路上に整然と並んで、一斉に寝転んだりポーズを取ったりした。その異様な様子を収めた画像や動画はInstagramなどで公開され、米ニューヨークポストなどでも取り上げられて大きな注目を集めている。
全裸の人々の正体は?
この全裸集団は、アメリカの写真家スペンサー・チュニック氏のインスタレーション『Rising Tide』の参加者だ。その数なんと5500人。このインスタレーションはクィアコミュニティとその賛同者を祝うメルトフェスティバルのメインイベントとして行われ、参加者の多くは地元ブリスベンの住民だった。
見渡す限り全裸の人々が車道を埋め尽くしている様子はそれだけでも圧巻の一言だが、参加者たちはチュニック氏の指示の下で様々なポーズを取って作品を作り上げた。特に、全員が同じ向きと姿勢で道路に横たわっているシーンは、思わず息を呑むほどの迫力がある。ストーリーブリッジでの撮影が終わると、参加者は川沿いの散歩用デッキに移動、細く蛇行した橋をいっぱいにし、集まった見物客の歓声や応援にも応えた。
参加者は性別や人種を問わず、若者から高齢者まで、中には妊婦や車椅子の人もいたという。英ガーディアン誌に寄稿した参加者の一人によると、最初こそ人に見られる恥ずかしさや不安が強かったというが、周囲も皆全裸だったこともあり、不思議と寛いだ気分になれたという。次第に自分の体が見られることも、逆に他の人の体を見ることも気にならなくなり、開放感や非日常感を楽しんだそうだ。ただ、道路に横たわった時は、その硬さと冷たさに服のありがたさを感じたという。
今回の指揮を取ったチュニック氏は、1990年代から世界各国で同様のインスタレーションを行っていることで有名なアーティストである。オーストラリアでは2022年にも『Tide』と題したインスタレーションが行われており、この時はシドニーのボンダイビーチで2500人が参加した。チュニック氏の作品は「衣服を脱いだ個人が集団になると別の形に変貌する」という哲学をもとにしたものであるが、公共の場で集団が全裸になることには当然賛否両論があり、過去には抗議活動や逮捕されたこともあったという。
メルトフェスティバルは11月10日まで行われ、無事に閉幕した。
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