2024年10月、パテック フィリップから3本の新作が披露された。ドイツ・ミュンヘンで開催されたイベントを振り返るとともに、四半世紀ぶりの新コレクション「Cubitus(キュビタス)」を紹介しよう。
ミュンヘンでお披露目となった、新コレクション「Cubitus」
ドイツ南部を代表する都市であり、オクトーバーフェストの開催地としても知られるミュンヘン。フライ・オットー設計のオリンピックスタジアムや4シリンダービルの愛称を持つBMWの本社といったモダニズム建築と、ゴシック様式の大聖堂をはじめ中世から残る美しい街並みが共存する稀有な都市だ。
そんな新旧の芸術と文化が溶け合う街を舞台に、パテック フィリップから25年ぶりとなる新コレクションが発表された。家族経営によるマニュファクチュールの伝統と、卓越したデザイン性や技術革新を融合してきたグランドメゾンの新作披露の場にふさわしい地と言えるだろう。
欧州を中心に世界中から招待されたVVIPやメディア関係者など600人ものゲストを迎えたのは、かつて火力発電所であった建物を改装した特設会場。
パテック フィリップらしい驚きに満ちた仕掛けで、入り口を抜けると、25mにもなる天井高の吹き抜け空間にまず圧倒される。壁には正方形が連なる幾何学模様が投影され、新コレクションを想起させるモチーフにいやが上にも期待が高まる。
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メゾンのDNAを継承する、「カジュアル・シック」な3本
1997年の「アクアノート」、99年の「Twenty~4」以来となる、四半世紀ぶりの新しいコレクションとして発表されたのが「Cubitus(キュビタス)」だ。Cubeに由来する名の通り、スクエアのフォルムが特徴で、デザインの独創性が光る。
イベント前に催された本誌とのインタビューで、ティエリー・スターン社長はその狙いを次のように語った。
「このコレクションの構想は私が長年温めていたもので、スクエアの時計をずっとつくりたいと考えていました。世界の腕時計の85%がラウンド型という中で、新しいなにかを模索していたのです。ようやく機が熟し、開発には4年の歳月を要しました。厳密には、ムーブメントはその2年前から開発を進めていたので、足掛け6年ですね。薄型であることにこだわりましたし、新しいコレクションには新しいムーブメントが必要ですからね。我々には既に『ノーチラス』という素晴らしいネーミングのコレクションがあります。この『Cubitus』も、万人に通じやすい名前を意識しました」
直線とエッジを強調しつつ、角に丸みを帯びた八角形のアウトラインは、都会的で洗練された印象を醸し、コレクションとしての新機軸を物語る。同時に「パテック フィリップのDNAを備えた時計」とスターン社長が言うように、リューズガードの意匠や、フラットなベゼル、ダイヤルの水平エンボスパターンなど、基本的なデザインは「ノーチラス」から受け継いでいる点も多くうかがえる。
「継承」と「革新」、時計史に燦然と輝く名作を生み出してきた、偉大なメゾンの新章に期待したい。
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オリーブグリーンカラーが美しい「5821/1A」
ベーシックなステンレス・スチール製モデルは、2021年発表の「ノーチラス 5711/1A」と同じオリーブグリーンのカラーと水平エンボスパターンをダイヤルに纏った。そのほか、左右に張り出したリューズガードやブレスレットの形状など、「ノーチラス」から継承した意匠も多く見られる。同色のカフリンクスもそれぞれ展開される。
ゴールドが映えるコンビモデル「5821/1AR」
ステンレス・スチールと18Kローズゴールドを組み合わせたコンビモデルは、ツートーンの配色とともに、サテン仕上げとポリッシュ仕上げを交互に施すことで、美しいコントラストを描く。秒単位での時刻合わせが可能なストップ・セコンド機能を備えた薄型キャリバー「26-330 S C」を搭載。ケースの厚みも8.3㎜に仕上げ、快適な装着感を実現する。
ビッグデイト&ムーンフェイズを薄型に仕上げた「5822-P」
カレンダー機構や安全機構をはじめ6件の特許を出願した新キャリバー「240 PS CI J LU」を搭載。ビッグデイトとともに、ムーンフェイズと曜日表示も同時にジャンプさせる瞬時送り機構を備えたコンプリケーションながら、わずか9.6㎜の薄型ケースに仕上げた。6時位置の側面にプラチナモデルにはお馴染みのダイヤモンドを配置。