スモールビジネスの成功の秘訣とは? 福岡発祥、東京でも大人気の「アイムドーナツ?」の仕掛け人も登壇!

  • 文:西田嘉孝
  • 写真提供:アメリカン・エキスプレス
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新たな名産品や魅力的な店舗が地域に人を呼び、新たなビジネスの創出が地域に雇用や活力を生む。そんな力を秘めたそんな力を秘めたスモールビジネスの支援を通じ、多様な社会の実現を目指すアメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)。10月28日に、アメックスは福岡市で特別セミナー「未来店舗会議 今、わたしが街にお店をつくるなら」を開催。スモールビジネスのオーナーを支援すべく、福岡で活躍するふたりの起業家が登壇し、お店づくりのリアルを語った。

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登壇したのは、連日東京で行列をなす「アイムドーナツ?」や「アマムダコタン」の仕掛け人、平子良太さんと、福岡市にある古民家の空間を改装し、地元の食材を使った郷土料理やおばんざいが楽しめる「台所ようは」をプロデュースした大塚瞳さん。50名の定員に対し、多くの人が詰めかけた。

まずセミナーの第一部では、アメックスの加盟店事業部門マーケティング アジア太平洋地域副社長の津釜宜祥(つがまのりよし)さんが街の小さなお店をバッキング(支援)する取り組みとして、同社が10年以上前から続ける「SHOP SMALL(ショップスモール)」を紹介。

「地域社会への貢献や多様性の尊重、顧客のバッキングといった理念のもと、リーマンショック直後のアメリカで2010年にスタートした取り組みがSHOP SMALL。日本では2017年からスタートし、多くのスモールビジネスオーナーの皆様が抱える、経営ノウハウや集客・情報発信、資金不足といった課題の解決につながるさまざまな取り組みを行っています」

今年も、多様性に配慮した製品やサービス、店づくりを行うスモールビジネスオーナーに総額2000万円の支援金を提供する「RISE with SHOP SMALL」や、地域の消費者と加盟店のショップオーナーをつなげる「SHOP SMALLマルシェ」を全国4都市で開催。この日の特別セミナーは、それらに加えて3つ目となるSHOP SMALLの新しい取り組みだ。

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津釜宜祥さんは2008年に同社に入社。広報部門でのキャリアを経て、2022年より現職の加盟店事業部門マーケティング アジア太平洋地域の副社長に就任。

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そんな特別セミナーに津釜さんとともに登壇したのが、福岡発祥の大人気ベーカーリー「アマムダコタン」や、話題の生ドーナツ専門店「アイムドーナツ?」を手掛ける平子良太さんと、旅する食空間演出家としても知られ、「台所ようは」や「食堂ミナトマル」など、数々の人気店を生み出す大塚瞳さん。どちらも福岡を起点に活躍するヒットメーカーだ。

いまや業界でも大注目の“食の仕掛け人”であるおふたりだが、それぞれのお店づくりはまさにスモールスタートだったとか。

「資金が本当になかったので、友人に手伝ってもらって500円のハンマーで大きな柱や壁を壊したり、あらゆることを自分たちで行うようなスタートでした」。そう笑う平子さんに、「私もボロボロだった店舗の壁を、ホームセンターで買ってきた白いペンキでペンキだらけになりながら塗りましたね」と、大塚さんも共感する。

MCから店舗経営における失敗談を聞かれた際には、ともに「失敗を失敗と思っていない」と答える場面も。「失敗していないというわけじゃないけれど、仲間と一緒にすべて解決してきたからいまがあるのだと思います。食材をつい買いすぎてしまったり、小さな失敗はいまもたくさんありますが」と、お茶目に語ったのは大塚さん。

平子さんも、「なにかが起きてしまった時に受け身でいるとうまくいかないかもしれないけれど、自分の場合はもともとやりたいことがあって、それを積み重ねた結果としていまがある。振り返ると失敗もあったのかもしれませんが、失敗も次のなにかに活かせれば失敗じゃなくなりますからね」と、成功に必要なポジティブな姿勢を語った。

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長崎のホテルや東京のイタリア料理店や和食店で修業した後、2012年に「パスタ食堂ヒラコンシェ」をオープン。生ドーナツ専門店「アイムドーナツ?」はNYに出店予定と、日本だけにとどまらない。

「日本や世界のカード会員の皆様にも、なにを食べるかだけでなく、そこでどんな体験ができるかなど、記憶に残るユニークなお店が選ばれている印象があります。そうした点では、地域のスモールビジネスにとって、お店づくりの際のコンセプトはとても重要なもの」

津釜さんがそう話すお店のコンセプトに、地域の文化や消費者のニーズをどのように反映しているかというテーマでは、それぞれからお店をオープンした当時のエピソードも明かされた。たとえば「アマムダコタン」などのベーカリーは、平子さん自身の体験から生まれたもの。

「パン屋さんに行くことが大好きで、休みの日に調べていろいろなパン屋さんを巡っていると、思ったより種類が少なかったりしてがっかりすることもあったんです。そこで、自分ならもっとパン好きな人たちが喜ぶベーカリーをつくれるんじゃないかと。僕は職人さんがパンを焼いている姿を見るのも好きで、パン自体をとても愛らしいものだと思っていました。とにかくお客さん目線で、そんな世界観を表現したくて、架空のRPGの街に迷い込んだような雰囲気のパン屋さんをつくろうと考えたのです」(平子さん)

一方の大塚さんは、1店目の「台所ようは」をオープンするまで、店舗を持たない料理人だった。

「それまではさまざまなロケーションを食空間に変えるイベントなどでしか料理をつくってこなかったので、決まったお店を持つことには不安がありました。『台所ようは』は、コロナ禍で海外などにも行けず身動きがとれなくなっていたタイミングで、物件を持つ方から声を掛けてもらってオープンしたもの。最初に店舗や設備ありきで、その中でなにができるかというところからスタートしました。特に福岡はおいしいお店も多くて、住んでいる皆さんもある程度はお気に入りのお店を持っていらっしゃいます。そこで自分がお店を出すにあたり、どんなお店なら来てもらえるだろうということを、一生懸命に考えましたね」(大塚さん)

そうして福岡市の大名エリアにオープンした「台所ようは」は、地元の人々が集う昔ながらのおばんざい屋さんのような風情の店。平子さんの「アマムダコタン」は、福岡から東京や京都にも広がり、「台所ようは」もあっという間に人気店の仲間入りを果たした。

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料理家・食空間プロデューサーとして活動する大塚瞳さん。幼い頃から料理や客礼に興味を持ち、大学在学中の2004年に、居心地のよい空間で過ごす食のひと時をテーマに会社を立ち上げた。

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他にも、ここ数年で急増するインバウンドやキャッシュレス化への対応や、挑戦し続けるために大切なことなど、3名がさまざまなテーマで、スモールショップやスモールビジネスに対する考えや思いを語った特別セミナー。

最後に用意された「未来の店舗づくり」というテーマでは、地域に賑わいを生み出す「横丁」や「フードコート」というキーワードも飛び出した。

「北海道の小樽などで横丁に行くと、どの店がよいというのではなくて、どの店もよくて楽しい。いまは自分のお店にいかにお客さんに来てもらうかを考えていますが、それだけではなくてたくさんのお店が緩やかにつながりながら、全体としてお客さんに楽しんでもらえるような。そんな横丁のようなものも、いつかは手掛けられたら楽しいだろうなと漠然と考えています」

そう大塚さんが話せば平子さんも、「まさにいま社内で考えていたのが横丁のお昼版ともいえるフードコート。まだまだ計画といえるほどの段階ではありませんが、少しずつゆっくりとかたちにしていきたいと考えています」と、未来の構想を明かした。

地域におけるスモールショップ経営経営のさまざまなヒントが詰まったトークの後には、登壇した3名を交えた交流会も。既に中小店舗を経営するショップオーナーや、これから開業を目指す参加者たちにとっては、平子さんや大塚さんの成功のエッセンスに存分に触れることができる、貴重にして特別な機会となった。

アメリカン・エキスプレス 「SHOP SMALL」

www.americanexpress.com/jp/campaigns/shop-small/index.htm