イタリアのオーディオ機器ブランドのブリオンベガより、1964年に発売されたポータブルラジオのラジオクーボ「TS502」。この歴史的なデザインプロダクトは2022年にラジオクーボの名前で復刻され、翌年にはコードレス化を実現している。また、Bluetoothスピーカーなど、現代的な機能も取り込んでいる。この幾何学的なラジオの魅力とは何か? ブリオンベガの歴史とともに、魅力を探ってみよう。
イタリアモダニズムの重鎮たちが手掛けたアイコン
ブリオンベガは、ポータブルラジオの製造会社として1945年に設立された。後にポータブル蓄音機やテレビの製造も手掛けるようになり、エレクトロニクス企業へ躍進。1960年代に入るとカスティリオーニ兄弟やマリオ・ベリーニといった建築家や、プロダクトデザイナーとの協業に力を入れ、この時代に数多くの優れた製品を輩出した。ラジオクーボ「TS502」はその中の代表作のひとつというわけだ。
このデザインは、モダニズムを代表する工業デザイナーのマルコ・ザヌーゾとリヒャルト・ザッパー(リチャード・サッパー)のふたりがによるもの。エッジを丸くしたキューブを2つ合わせたような筐体が特徴で、開くとスピーカーと操作パネルが現れる。そこで初めてラジオとして使うことができるという、ユニークなアイデアが注目を集めた。筐体には当時の新素材だったABS樹脂を採用し、いかにもミッドセンチュリーらしいカラーリングと艶やかなテクスチャー感を表現。キューブを閉じたときのオブジェのような存在感は多くのファンを生み出した。
ブリオンベガは他にも、ドネイやアルゴ、ブラック「ST201」といったポータブルテレビなど、ザヌーゾとサッパーが手掛けた数多くの製品を出し続けた。このうちドネイは、イタリアの権威的なデザイン賞であるコンパッソ・ドーロ(金のコンパス賞)を受賞するなど、イタリアを代表するオーディオ機器ブランドとして、その名を歴史に刻んでいる。
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数度のリニューアルを経て、Bluetoothスピーカーを搭載
これまでもラジオクーボ「TS502」は復刻版が出ており、2002年に「TS522」、2011年に「TS525」として日本にも進出している。「TS522」はオリジナルデザインをほぼ忠実に踏襲したアナログモデルだったが、「TS525」はデジタル技術を投入して操作パネルのデザインをアレンジ。機能面も現代のライフスタイルに合わせてリニューアルされた。
そして、2022年に登場したラジオクーボはさらに進化。FMラジオの付いたBluetoothスピーカーを追加し、スマートフォンなどのデバイスから音楽データのプレイリストを手軽に再生が可能となった。他にもSpotifyなどの音楽ストリーミングサービスを高音質で直接聴くことができるなど、現代式のモデルを達成している。一方で、シンプルなラジオクロックとしても利用でき、お気に入りのラジオ番組で目覚めるといったアナログ的な使い方もおすすめだ。
2023年にはマイナーチェンジによって、充電式のリチウムバッテリーを搭載。6時間の連続再生が可能になり、リビングルームからベッドルームへ気軽に移動させるなど、スマートフォンが必須になった現代のライフスタイルによりフィットするようになった。それでも基本的なデザインは不変で、亜鉛合金製のボディフレームやABS樹脂製の外装、6つの製造工程などはオリジナルと同じだ。
60年前の登場時と変わらない魅力を、最新の技術を通じて楽しめる贅沢なデザインプロダクトに仕上げた一品。ぜひ、ビートルズからMrs. GREEN APPLEまで、あなたのお気に入りの1曲を、懐かしくも新しいラジオクーボで聴いてほしい。
ネイビーズ
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