「光」と「祈り」をテーマにした瀧本幹也の新作展が開催。コロナ禍を経てたどり着いた、写真家の新たな境地

  • 文:久保寺潤子
Share:

 

53a209b4d8740d4fc059a9f04d26a673f526d275.jpg
野に咲く名もない草花の生命力をとらえた「LUMIÈRE」シリーズより。

広告写真やCM映像をはじめ、国内外での作品発表や出版など幅広く活動を続ける写真家の瀧本幹也。2020年初頭、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大すると、多くの人と同様、瀧本も活動が軒並みストップした。以前のように世界各地に出かけ、大掛かりな撮影ができなくなったのだ。そんな時、写真家の目にとまったのが野に咲く菜の花だった。季節が巡るたびに繰り返し芽吹く小さな植物の命や記憶、その内部に息づく小宇宙を探究すべく、小型カメラひとつでシャッターを切り続けた。3年の歳月をかけて撮影したこのシリーズは「LUMIÈRE」(「光」を意味するフランス語)と名付けられた。

3_LUMIÈRE_PRIÈRE_展示会広報用.jpg
人間の営みとは関係なく、季節がめぐるたび可憐な花が風になびく。「LUMIÈRE」より。

---fadeinPager---

京都で出合った言葉にインスパイアされた「PRIÈRE」

一方、20年秋に京都の国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」に参加した瀧本はひとつの仏語に心奪われた。「全ての事物が完全に溶け合い、互いに妨げない」という意味を持つ「円融」という言葉だ。この言葉と出合った寺社で、過去から現在、そして未来へと続いてゆく時の流れに自らもまた連なっていることを感じる。人気のない寺院を巡りながら撮影した写真はやがて「PRIÈRE」という作品群として結実した。

8_LUMIÈRE_PRIÈRE_展示会広報用.jpg
コロナ禍で訪れた京都の寺院で撮影。「PRIÈRE」より。

惑星や宇宙、生命に魅了され表現してきた写真家が、撮ることの歓びを再認識したふたつの新シリーズ。会場では大型作品を含む60点の写真のほか、インスタレーション作品と映像作品が展示される。新たな展開を迎えた瀧本の作品世界から、宇宙の秘密をのぞいてみたい。

瀧本幹也写真展『LUMIERE/PRIERE』ルミエール/プリエール

開催期間:2024年12月5日(木)〜2024年12月15日(日)
開催場所:代官山ヒルサイドフォーラム
東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟1F
会期中無休
入場料:一般¥500 ※高校生以下無料