国立工芸館(石川県金沢市)を皮切りに、アメリカや日本各地を巡回中の『ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―』。いよいよ11月1日から、東京会場として麻布台ヒルズ ギャラリーにて開催されている。初公開となる新作も加わって、よりパワーアップした展覧会の見どころとは?
現代日本の工芸を代表する20名のアーティストがポケモンとコラボ!
まずは『ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―』の概要について紹介したい。同展は人間国宝から若い世代まで、現代日本の工芸を代表する20名のアーティストがポケモンをテーマに、さまざまな技法や素材による工芸の作品を公開したもの。陶芸、漆芸、木工、金工、染織などにて、ポケモンのすがたやしぐさ、気配を呼び起こした作品や、進化や交換、わざといったゲームの記憶をたどる作品、また器や着物などにポケモンを取り入れた作品を展示している。今まで見たことのないポケモンや、かつて目にしたことのない工芸作品が並んだ、ポケモンと工芸が異色のコラボを果たした展覧会といえる。
巧みなわざで、ポケモンのすがたかたちをリアルに表現
思わず「ポケモンが目の前に現れた!」と驚いてしまうのが、ポケモンのフォルムはもちろん、皮膚や毛並み、気配や出現の瞬間までを見事に捉えた作品だ。金属彫刻を手がけ、主に銅を扱う吉田泰一郎は、イーブイと進化形の3匹を造形化。純銅のイーブイと青銅のシャワーズ、金銀メッキを施したサンダースなどをはじめ、東京会場での新作として全長約2メートルにも及ぶ迫力あるミュウツーを展示している。一方で陶芸家の今井完眞は、フシギバナやコイキングなどをリアルに表現。とりわけフシギバナの肉感的な口元や、凹凸のある皮膚の細密な作り込みに目を奪われる。いずれも重厚な工芸作品でありながら、生気がみなぎり、今にも動き出しそうなほど迫力満点だ。---fadeinPager---
須藤玲子のインスタレーションで出会う、かわいいピカチュウたち
ポケモンの物語にアーティストが向き合い、工芸のわざを駆使して、イマジネーションに満ちた作品が生み出されているのも魅力のひとつ。テキスタイルデザイナーの須藤玲子は、「ポケモンずかん」で目に留まったポケモンを観察すると、「すごく可愛い」としてピカチュウをモチーフとして選び出し、無数のピカチュウをテキスタイルにて表現した《ピカチュウの森》を制作。実際に森の中へと入って、シャワーのように連なったピカチュウを楽しむことができる。このほか、ポケモンの技「かげうち」から着想を得た田中信行の黒い漆の立体作品や、「つららおとし」をガラスで表現した新實広記のインスタレーションも、アーティスト独自の感性にて新たなポケモンの世界を作り上げている。
カップの底からピカチュウが泉のように湧き上がる?!
器や着物、装身具といった、身近な暮らしに近い工芸へポケモンを取り入れた作品も見逃せない。陶芸から現代アートの領域でも活躍する桑田卓郎は、カラフルな色化粧、ぼってりとした釉薬、金彩とプラチナ彩を施した大小さまざまなカップやボウルへピカチュウを転写。美濃という窯業地での知識や経験に基づきながら、金色に輝くピカチュウのタイルともに、明るくポップで愛らしい光景を築いている。今回、カップとボウルは倍増し、タイルも新たに576枚も加えてスケールの大きい作品として生まれ変わったが、カップの底から泉のように湧き上がるピカチュウに癒されること間違いない。---fadeinPager---
新作4作品を含めた約80点が公開。コラボカフェやショップも充実
「ポケモンは初めて」というアーティストもいた本展。そうした人は家族や教え子の助けを借りながらゲームをプレイし、「ポケモンずかん」と睨めっこしながら、ポケモンに対する理解や愛着を深めていったという。東京会場の展示作品は、新作4作品を含めた約80点。さらに麻布台ヒルズの各所に設置したポケモンスタンプを集めてまわるスタンプラリーや、作品にインスパイアされたメニューを展開するコラボカフェ『喫茶 ポケモン×工芸展』がオープンするなど、展覧会をさらに楽しめるイベントも実施される。あなたのお気に入りのポケモン、そして工芸の作品を見つけに、麻布台ヒルズ ギャラリーへと出かけよう。
『ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―』
開催場所:麻布台ヒルズ ギャラリー(港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MBF)
開催期間:開催中〜2025年2月2日(日)
https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/kogei-pokemon-ex/
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